資格の概要 | 行政書士は、報酬を得て法人設立の手続きや外国人の永住許可申請など、官公署に提出する書類(電磁的記録を含む)の作成が主な業務です。また、憲法で保障されている権利行使や義務履行に関する書類の作成や相談などの仕事も行います。国民と行政の間に立ち橋渡しをする手続きの専門家です。
・行政書士の法定業務としては第1条の2に規定する独占業務(書類作成業務)と、第1条の3の非独占業務(代理人として作成、提出代理、書類の作成相談)があります。
・行政書士は、依頼を受けて、主に官公署へ提出する書類を作成する仕事をします。行政書士法(第1条の2、3)に規定されている行政書士の業務は、「官公署に提出する各種許認可・届出書類の作成・代理」、「権利義務または事実証明に関する書類の作成・代理」、「行政書士が作成することのできる書類の相談」となっていますが、その具体的な内容は、
1.許認可申請や会社設立など書類の作成・代理
2.内容証明や契約書などの書類の作成・代理
3.遺言書の作成、離婚協議書の作成に関する相談業務、以上の3つを行政書士は業務にすることができる、ということになります。
・平成20年1月9日「行政書士法の一部を改正する法律」が成立し、行政書士の業務も拡大しています。今までの、許認可申請業務や契約書作成業務以外に、未開拓の分野も多数あるため、その数は数千~数万種類あると言われており、多方面での活躍が期待されています。
・行政書士試験も以前は「高卒以上」という受験資格の制限がありました。しかし、国家試験への以降に伴い、学歴等の制限が撤廃され、行政書士法の改正により職域が拡大したため、近年の資格人気となり受験者数が著しく増加しています。多くの資格試験には受験するための受験資格に制限がありますが、その中で、誰でも受験できるということは行政書士試験の大きな魅力の一つになっています。
※行政書士として登録を受けている人の総数は47,874人(平成30年10月1日現在)です。
※行政書士は許認可申請の専門家ですが、平成26年12月行政書士法改正により「特定行政書士」が誕生しました。 ⇒「特定行政書士」
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資格難易度 | ●難易度
「A」 難関
【資格の難易度レベル】
行政書士試験は合格基準を満たせば、順位に関係なく誰でも合格できる試験ですが、試験は難しく、合格率は例年5~6%前後です。「科目ごとで40~50%以上の得点率、かつ、全体で60%以上の得点率」というのが、例年の合格基準ですが、試験はここ数年の間に急速に難しくなりました、そのため甘い考えでは合格できません。しっかりと、腰をすえて学習する必要があります。独学での合格者もいますが、難易度が高く、合格率も低いこともあって資格スクールを利用する人が多い資格試験です。必要な学習時間の目安は700時間前後でしょう。少し知識がある人なら、毎日3時間勉強すれば4~5ヵ月程度でしょう。チャレンジされる方は、まずは過去問に触れてみて、本試験のレベルを知ることからはじめるのがいいでしょう。試験内容は非常に専門的なのに加えて、幅広い知識が求められるので、膨大な時間をかけて試験対策しなければならないことを知りましょう。
主な法律系資格で資格の難易度レベルを比較するとき、多くの人は 司法書士>社労士>行政書士であると思ってるはずです。しかし、実際は司法書士>社労士>行政書士>税理士(1科目の単発)>宅建と思う人は少ないのではないでしょうか。実は、税理士(1科目の単発)試験は、受験資格や合格率、また資格スクールの学習期間などから考えても社労士や行政書士より難易度は低いと考えられます。行政書士は「法律試験の登竜門」と言われますが、試験が易しいという意味ではありません。試験制度の改正により、法律家としての素養がさらに問われるようになってきています。
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・合格率
令和3年度行政書士試験結果 合格率11.2%
受験申込者数 61,869名 受験者数47,870名 合格者数5,353名
合格者平均得点 198点(前年度 195点)
※参考データ
・令和2年度行政書士試験結果 合格率10.7%
受験申込者数 54,847名 受験者数41,681名 合格者数4,470名
合格者平均得点 195点(前年度 196点)
・令和元年度行政書士試験結果 合格率11.5%
受験申込者数 52,386名 受験者数39,821名 合格者数4,571名
・平成30年度行政書士試験結果 合格率12.7%
受験申込者数 50,926名 受験者数30,105名 合格者数4,968名
・平成29年度行政書士試験結果 合格率15.7%
(受験申込者数 52,214名 受験者数40,449名 合格者数6,360名)
・平成28年度行政書士試験結果 合格率9.95%
(受験申込者数 53,456名 受験者数41,053名 合格者数4,084名) |
受験対策・資格の将来性 | 行政書士試験は以前は国家資格としては比較的取得しやすい(合格しやすい)ものとして、法律や、行政、コンサルタント系では登竜門のような位置づけになっていました。しかし、最近は試験の難易度が一転、難化傾向となり、合格率も大変低くなってきています。
通信教育や専門学校などで「一発で受かる」というような宣伝が多くなされていますが、弁護士などの資格と同じように難関の資格であることは間違いありません。資格講座を受けたからといって受かるというような簡単な試験ではありませんので、安易な気持ちは持たないようにすべきです。
行政書士試験、社労士試験、税理士試験、司法書士試験、これらの試験は、いづれも難関試験ばかりですが、これらの資格試験に合格するための学習法は同じやり方でいいと思います。これからこれらの試験の受験を予定・計画されている方は、多くの合格者が体験したこの学習ステップをぜひ参考にチャレンジしてしてみてください。
【行政書士受験勉強の流れ】
<ステップ1>勉強法を確立する。
近くのスクールに通って、資格対策講座を受講するか、スクールや講座がない場合は通信講座などを利用するかを決める。
<ステップ2>基礎固めをする。
講座内容やテキスト、参考書に書かれていることを徹底的に覚える。そして大事なことは、覚えたことを理解すること。理解しながら覚えなければ意味がありません。また、理解しながら覚える方が覚えやすのです。
<ステップ3>実力を養い、身につける。
講座の内容やテキストを理解し、覚えられたら、次は過去問に挑戦します。ここで大切なことは、一度だけで終わらないことです。何度も繰り返し行い正答率を上げていく努力が必要なのです。
そして最終的には、過去問の問題を覚え切るところまでやること。分からなかったことや、覚えたけど忘れていたことなどは特に”何度でも繰り返し、繰り返し”理解しながら覚えます。
<ステップ4>試験直前の追い込み。
次は、模擬試験に挑戦することです。いろいろな資格スクールが主催して行う模擬試験に積極的に挑戦してください。決して”井の中の蛙”にならないこと。自分の学習のやり方に間違いがないか、と言うことと、全体の中で自分が今いる位置を知り、確認するためにチャレンジします。模擬試験を受けることは大切です。あとはこれに基づいてスケジュールを立てることです。1ヶ月ごとに何をしなければならないのか、何月までに何を終わらせるのか、試験に向けた追い込みはいつから始めるかなどを、明確に本試験の日程から逆算して割り振っていきます。
実力の養成にためには、この4つのステップを踏んでいく方法が一番効率的で、かつ効果的です。
”楽して・・・”というのは、誰もが自然に心の底で求めることだと思いますが、貴方が天才でない限り、この単純で地道な努力を続けていくしか方法はないのです。そして、この地道な努力を最後までやり遂げた者だけが、この「難関資格試験」に勝利できるのです。
「行政書士」に合格したら、次は目標の「司法書士」を狙うつもりという人がいますが、そういう人にひと言。行政書士と司法書士の勉強では、「民法」と「商法」、「憲法」など、かぶる部分が比較的多くて、行政書士の勉強が活かせるので先に行政書士を受ける訳ですが、勉強時間で比較すると、行政書士の場合は少し知識がある人なら、毎日3時間勉強すれば4~5ヵ月で何とかなりますが、司法書士の場合は、スクールの15ヶ月合格コースを受講し、1年間毎日10時間勉強しても何ともならない、というレベルです。単純に時間数だけで比較しても500:5000。間違いなく、5倍は難しいと考えておいていいと思います。国立大学の受験より間違いなく難しいと思ってください。
行政書士試験に合格した人も、不運にも合格できなかった人にも、次にそして来年につなげる意味でも、ここで休まずにもう一息チャレンジしてほしい資格試験があります。
それは、「ITパスポート」、「FP技能士」、「個人情報保護士」です。どの試験も試験対策としてだけでなく、一般知識対策としてもたいへん有効だと思います。ちなみに、「ITパスポート」は、CBT方式の試験なので、いつでも全国で受験が可能です。また「FP技能士」は毎年5月と9月に試験があり、「個人情報保護士」は3月中旬が試験日です。
中でも、行政書士試験に合格した人で開業を考える場合には、必須の「簿記」の習得です。できれば2級が欲しいところです。また、行政書士とのダブルライセンスを狙いたい人には、難関試験ばかりですが、司法書士や社会保険労務士、又は海事代理士、土地家屋調査士、宅建などが相性もよく、役立つでしょう。
行政書士の試験対策は、通学講座と通信講座、そして独学で勉強する人の3通りに分かれている典型的な試験例だと言われています。
・「通学講座」は、大原やLECなどの資格試験の専門学校に通って勉強をする方法ですが、試験合格目的で作られた専用の教材を使って専任講師にきっちり教えてもらえます、また仲間やライバルの存在がモチベーションをアップしてくれるだけでなく、生の講義や生で質問できる環境は理解力が一段とあがります。しかし、時間とお金が一番かかります。
・「通信講座」の最大の利点は、自分の時間で自由に勉強ができるところです。問題は「モチベーションの維持」です。
・次に「独学」ですが、受験の経験者や関連する職場に勤めている人は独学が多いようです。全く初めての試験チャレンジャーの場合は、おそらく数年の勉強は覚悟しなければならないでしょう。結局、通学講座や通信講座の場合は、合格のためのノウハウが詰まった勉強法であるため、特に予習する必要はなく、しっかりと十分復習することで力はつきますが、教材代が高く、期間1年くらいの講座で受講料が20万円くらいは必要になります。独学の場合は自分のペースで勉強ができますが「ポイント」をつかんだ勉強ができません。しかし、それでも「独学で」という人は、試験が初めてに近い人の場合は、できるだけ試験合格だけに特化した教材を購入して勉強することが独学で突破する近道だと思います。市販の参考図書を使って独学で受かるほど甘い世界ではありません。
・行政書士試験の受験生の中に、行政書士試験対策と並行して、法学検定や公務員試験の勉強をする人が、少なくないことをご存知でしょうか。これは、どちらの試験問題も行政書士試験において問われる法律知識と重なる部分が少なからずあるためです。行政書士試験と公務員試験の両方を目指すことは少し厳しいと思いますが、時間に余裕のある人は、選択肢を増やすという意味では、挑戦する価値はありそうです。法学検定の場合は、行政書士試験よりも試験日が前にあることや、試験の難易度も行政書士試験より低いので、本試験の予行演習を兼ねて、受験するのも良いことだと思います。 |