資格の概要 | 中小企業診断士は経営・業務コンサルティングの専門家としては唯一の国家資格。中小企業の経営課題に対応するための診断・助言を行う専門家です。「現状分析を踏まえた企業の成長戦略のアドバイス」が主な業務となります。法律上の国家資格として、中小企業支援法に基づき、経済産業大臣が登録します。その名のとおり、「中小企業」の支援をすることが目的なので、「診断」という言葉が入っていますが、診断のみを行うのではなく、さまざまな経営支援を行っていく専門家です。
中小企業診断士になるには、次の2通りの方法があります。但し、いずれの方法も中小企業診断士第1次試験、第2次試験は合格する必要があります。
(1)中小企業診断協会が実施する試験に合格し、実務補習を修了する。又は実務要件を満たす。
(2)中小企業診断士養成課程を修了する。
上記(1)の方法では、まず2日間かけて7科目ある1次試験に合格した後、筆記試験と口述試験の第2次試験に合格しなければなりません。ただ2次試験に合格しても、その時点で中小企業診断士を名乗ることはできません。
次に、第2次試験合格後3年以内に実務補習(実際の企業に対して指導員の指示のもと経営診断・助言を行う)を15日以上受けるか、実務に15日以上従事することにより、中小企業診断士としての登録の申請を行うことができます。
必要書類を経済産業大臣に提出し、登録の通知を受け、晴れて中小企業診断士として活動ができます。
上記(2)の方法では、中小企業診断士養成課程(中小企業庁の示すガイドラインに基づいた「演習」と「実習」により構成されたカリキュラム)を修了すれば、2次試験および診断実習が免除されるという制度を利用する方法です。
【更新登録】
中小企業診断士は、5年ごとに登録の更新を行わなければなりません。登録を更新するためには、有効期間内に ①新たな知識の補充、②実務能力の維持、の両方の要件を満たす必要があります。登録を更新するためには、5年間の有効期間内に①及び②の両方の要件を満たすことが必要です。
①新たな知識の補充要件:5年間で 5回以上受講
②実務の従事要件:5年間で 30日以上従事
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試験方式 | 試験は、1次試験と2次試験で構成されています。
●1次試験
多肢選択式(4肢または5肢択一)マークシート形式の筆記試験
【1日目】
・経済学・経済政策/60分
・財務・会計/60分
・企業経営理論/90分
・運営管理(オペレーション・マネジメント)/90分
【2日目】
・経営法務/60分
・経営情報システム/60分
・中小企業経営・中小企業政策/90分
※配点はすべて各100点
・合格基準
第1次試験の合格基準は、総点数の60% 以上であって、かつ 1科目でも満点の 40%未満のないことを基準とし試験委員会が相当と認めた得点比率(絶対評価)。
※一部の科目に、他の試験合格者に対する免除措置があります。
※第1次試験の合格年度とその翌年度の2年間に限り第2次試験を受験することができます。
●2次試験
・筆記試験(短答式・論文式)/各80分×4
筆記試験の内容:中小企業の診断及び助言に関する実務の事例1~4
①組織(人事を含む)を中心とした経営の戦略及び管理に関する事例
②マーケティング・流通を中心とした経営の戦略及び管理に関する事例
③生産・技術を中心とした経営の戦略及び管理に関する事例
④財務・会計を中心とした経営の戦略及び管理に関する事例
・口述試験(口述試験は筆記試験合格者のみ)受験資格:第1次試験合格者
口述試験の内容:
中小企業の診断及び助言に関する能力について、個人ごとに面接10分
※配点は各100点
・合格基準
自分の成績だけでなく他の受験者の出来も結果に反映される相対評価の試験で、全体の上位約20%が合格となる。
【免除規定】
・以下に該当する者は1次試験の一部の科目が受験免除されます。
- 大学等の経済学の教授・助教授(通算3年以上)
- 経済学博士
- 公認会計士試験第ニ次試験において経済学を受験して合格した者。
- 不動産鑑定士、不動産鑑定士補
- 公認会計士、会計士補
- 税理士
- 税理士
- 技術士(情報工学部門登録者に限る)
- 以下の区分情報処理技術者試験合格者。
・ITストラテジスト
・システムアーキテクト
・応用情報技術者
・システム監査技術者
・プロジェクトマネージャ
・その他
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受験料 | ・1次試験:14,500円(非課税)
・2次試験:17,800円(非課税)
※その他にかかる費用
・実務補習の受講料:150,000円
・理論政策研修:1回6,300円 (更新には5年間で5回必要)
・中小企業診断協会の年会費:約50,000円
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資格難易度 | ●難易度
「A」 難関
【資格の難易度レベル】
中小企業診断士試験は試験科目の多さと出題範囲が膨大な上、1次試験と2次試験の2回の試験を突破しなければならないことを考えると難易度がかなり高い試験であることが分かります。例えば、令和4年度の結果を見ると、1次試験の合格率が28.9%、2次試験の合格率は18.7%ですので、1次も2次も一度にパスするための合格率は約5.4%になり、極めて難易度が高い試験であると言えます。
資格取得のための必要な学習時間が独学で約1000時間とされ、年換算で約1年ということになります。時間数だけでみると難易度レベルは一般的な国家公務員試験に匹敵するとも言えますが、これは診断士試験の試験科目の多さと出題範囲が膨大であることに起因しています。
総合的に考えると分野は異なりますが、難易度は行政書士よりはやや高く、一級建築士と同等レベルの難易度と思います。ニーズが高く、食いっぱぐれのない資格の代表で、転職市場では貴重な存在です。また公認会計士や税理士の資格保有者が併用して取得する資格でもあります。
新制度になって科目合格制度が導入されたことで旧試験制度に比べ1次試験は合格しやすくなりました。難易度的には特に2次試験の難易度が高く、2次試験が本試験と考えていいくらいです。
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●合格率
・令和4年度中小企業診断士 試験結果
一次試験結果 合格率 28.9% 受験者数 17,345人 合格者数 5,019人
二次試験結果(筆記)合格率 18.7% 受験者数 8,712人 合格者数 1,632人
口述試験の合格率は毎回99.7%以上です。
・令和3年度中小企業診断士 試験結果
一次試験結果 合格率 36.4% 受験者数 16,057人 合格者数 5,839人
二次試験結果(筆記)合格率 18.3% 受験者数 8,757人 合格者数 1,605人
・令和2年度中小企業診断士 試験結果
一次試験結果 合格率 42.5% 受験者数 13,622人 合格者数 5,005人
二次試験結果(筆記)合格率 18.4% 受験者数 6,388人 合格者数 1,174人
・令和元年度中小企業診断士 試験結果
一次試験結果 合格率 30.2% 受験者数 14,691人 合格者数 4,444人
二次試験結果(筆記)合格率 18.3% 受験者数 5,954人 合格者数 1,088人
・平成30年度中小企業診断士 試験結果
一次試験結果 合格率 23.5% 受験者数 16,434人 合格者数 3,236人
二次試験結果(筆記)合格率 18.8% 受験者数 4,812人 合格者数 906人
・平成29年度中小企業診断士 試験結果
一次試験結果:合格率 21.7% 受験者数 14,343人 合格者数 3,106人
二次試験(筆記試験)結果
合格率 19.4% 受験者数4,279人 合格者数830人
二次試験(口述試験)最終結果
合格率 19.4% 受験者数4,279人 合格者数828人
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受験対策・資格の将来性 | 中小企業診断士の試験対策としては、まず各分野の基本を勉強し、苦手科目をなくすことが大切です。1次試験では主に経営学や財政学、会計学などの科目や情報処理や販売士2級、日商簿記1級レベルの会計の知識も必要になります。また学習期間が長期になるため、モチベーションの維持方法にも注意が必要です。テキストや問題集を使って独学という人もいますが、科目がかなり多岐にわたることやモチベーションの維持の側面から考えると、出来れば効率的な勉強が出来るスクールに通うことがお薦めです。この試験は非常に難しい資格試験ですが、一次試験と二次試験を、それぞれを3年ずつかけて突破するという計算をすれば、最長で6年間資格取得のチャンスがあるという考え方でチャレンジできます。
2次試験に関しては、合格に必要な勉強時間は約400時間。科目別では難易度が高く、勉強に一番時間がかかるのが企業経営理論と、財務・会計です。また1次試験の内容の理解が2次試験で問われるという特徴があり、1次と2次試験が間接的に関連しています。口述試験は約10分間の面接試験ですが、2次試験で出題された事例についての質問があります。過去の合格率は95%以上ですが、必ず事前に時間をかけて読み返して準備しておかねばなりません。
2次試験は記述問題であるため1次試験に比べて相当難易度があがります。また1次試験合格後2年以内に合格しないとまた1次試験からやり直しになるリスクもあるため、そんな時に2次試験を回避して「中小企業診断士養成課程」を受けるという方法があります。2次試験を2回受けても不合格だった場合などには利用できますが、この養成課程は受験資格もありますが、最短でも6ヶ月の学習が必要で、費用も高くなります(約350万円)。2次試験の合格に自信がない人などは検討してもいいと思います。
中小企業診断士の資格は転職、就職には生きてきます。金融系・IT系企業など活用する業界は様々ですが、資格としてのニーズが高いのは経営コンサルタントとしての他に、経営戦略やマーケティング、新規事業開発などですが、営業職としてスキルを磨けば派遣登録して能力一本で収入を得ることも可能であり営業担当者にも人気の資格です。中小企業に融資を行っている金融機関には国が診断士の設置を奨励していることもあり、中小企業診断士のニーズはますます増加傾向にあります。特にこれからは、単に経営全般のコンサルティングではなく、消費者のニーズに敏感なマーケティングの知識がある診断士が期待されています。 |