試験方式 | 日商簿記検定では、統一試験とネット試験の両方が実施されます。
●統一試験方式
年3回(6月、11月、2月)の全国統一試験日に、各地商工会議所が定めた試験会場で、ペーパーで実施されます。ペーパーでの受験を希望する方におすすめです。
●ネット試験方式
ネット試験会場(テストセンター)が定める試験日時に、パソコンを使ってインターネットを介して試験が実施されます(随時施行)。試験終了後に合否が判明するなど、速やかに資格取得を目指す方にはおすすめです。
【1級】
ペーパー方式の「全国統一試験日に施行する試験方式」で実施されます。
【2級・3級】
ペーパー方式の「全国統一試験日に施行する試験方式」に加え、パソコンで随時施行する「ネット試験方式」で実施。尚、団体試験についても、ペーパーで随時試験を実施する「団体試験方式」が施行されます。
【簿記初級・原価計算初級】
随時実施(試験実施機関が日時を決めます)
◆試験方式にかかわらず、試験方式が以下のように統一されました。
・試験時間
2級/90分 3級/60分
簿記初級/40分 原価計算初級/40分
・出題数
3級/3題以内 2級/5題以内(語群選択、金額・語群穴埋め問題)
・試験問題、計算用紙の回収
1~3級について、試験終了後、答案用紙の他、試験問題と計算用紙も回収されます。
※1級は、後日、試験問題が検定ホームページで公開されます。
●ペーパー方式(全国統一試験日に施行する試験方式)
筆記試験形式で、簿記用語(勘定科目等)や計算した数値を実際に記入していきます。
・試験時間:
1級(3時間)
商業簿記・会計学/90分 工業簿記・原価計算/90分 計180分
2級(1.5時間)
商業簿記・工業簿記/90分
3級(1時間)
商業簿記/60分
※使用する筆記具は、HBかBの黒鉛筆、シャープペンシル、消しゴムに限定されています。
※電卓などの計算機具は使用可能。
・配点:
1級 各科目25点の合計100点
2級 商業簿記60点 工業簿記40点 合計100点
3級 商業簿記100点
・合格基準
1級:1科目40%以上、総計70%以上の得点率で合格となります。
2級~3級:70%以上の得点率で合格となります。
簿記初級:70%以上の得点率で合格となります。
原価計算初級:70%以上の得点率で合格となります。 |
資格難易度 | ●難易度
1級 難関 「A」
2級 普通 「B」
3級 やや易 「C」
【資格の難易度レベル】
「簿記検定」には、日本商工会議所主催の「日商簿記検定」と、全国経理教育協会(全経)主催の「簿記能力検定」がありますが、簿記検定間の難易度の差をある程度把握しておくこともいいと思います。一般的には、「日商簿記3級」<「日商簿記2級」<「全経簿記上級」<「日商簿記1級」と考えて臨めば良いでしょう。さらに、「全経簿記上級」と「日商簿記1級」を比較すると、試験の出題範囲はほぼ同じで、覚えることはかなり多いことは共通しますが、全経簿記上級は日商簿記1級よりもスタンダードな問題が多く、過去問関連の出題率も高いようです。従って、そういう意味からは試験対策はやり易いと言えます。難易度的には日商簿記1級の難易度よりも1ランクほど落ちるかな、という感じです。
・日商検定1級:税理士、公認会計士の登竜門。1級の合格率は10%前後の難関。税理士や公認会計士への入り口となるもので財務諸表や企業会計などの法規についても勉強することになります。
・日商検定2級:2級と1級とは難易度の差は桁違いですが、 2級からはメジャーな資格と言え、経理系の仕事に就くときは、必須資格となっています。
・日商検定3級:商業簿記に関する基本的な理解を問う試験で、独学でも十分取得可能なレベルの試験です。
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●合格率
【統一試験とネット試験の比較 受験者数/合格率】
・統一試験
3級:42,626名/35.1% 2級:62,785名/24.6% 1級:16,788名/10.1%
・ネット試験
3級:140,764名/41.7% 2級:72,631名/38.7%
2022年2月第160回簿記検定試験結果
・2級 受験者数17,448名 合格者数3,057名 合格率17.5%
・3級 受験者数44,218名 合格者数22,512名 合格率50.9%
※参考データ
2021年11月第159回簿記検定試験結果
・1級 受験者数9,194名 合格者数935名 合格率10.2%
・2級 受験者数22,626名 合格者数6,932名 合格率30.6%
・3級 受験者数49,095名 合格者数13,296名 合格率27.1%
2020年11月第156回簿記検定試験結果
・1級 受験者数8,553名 合格者数1,158名 合格率13.5%
・2級 受験者数39,830名 合格者数7,255名 合格率18.2%
・3級 受験者数64,655名 合格者数30,654名 合格率47.4%
令和元年11月第153回簿記検定試験結果
・1級 受験者数7,520名 合格者数735名 合格率9.8%
・2級 受験者数48,744名 合格者数13,195名 合格率27.1%
・3級 受験者数80,130名 合格者数34,519名 合格率43.1%
平成30年11月第150回簿記検定試験結果
・1級 受験者数7,588名 合格者数680名 合格率9.0%
・2級 受験者数49,516名 合格者数7,276名 合格率14.7%
・3級 受験者数88,774名 合格者数38,884名 合格率43.8%
平成29年6月第149回簿記検定試験結果
・1級 受験者数7,501名 合格者数1,007名 合格率13.4%
・2級 受験者数38,352名 合格者数5,964名 合格率15.6%
・3級 受験者数79,421名 合格者数35,189名 合格率44.3%
平成28年11月第147回簿記検定試験結果
合格率 1級5.9% 2級21.2% 3級40.3% |
受験対策・資格の将来性 | 簿記の知識は、現在や将来の利益を計る財務諸表や企業会計の法規を理解し、経営管理・経営分析を行うための基礎技能であり、経理事務や財務会計部門に限らず重要です。多くの企業が、簿記検定を自己啓発として取得を奨励する理由は、この技能がさまざまなビジネスシーンで活用できるからに他ありません。この資格を採用の判断材料に活用している企業も多く、就職や転職、再就職には役立ちます。
●1級
1級を取得すれば、知識を活かして財務部門において企業の 経営・会計指導面でスペシャリストとして活躍でき、また中小企業診断士などへステップアップも狙えます。さらに独立開業も可能です。試験では、2級の試験範囲にさらに会計学と原価計算が加わり、さらに、試験科目合計70点以上で4科目のうち1科目でも10点未満があった場合、足切りとなって合計70点以上であっても不合格となるなど難易度も一気に高くなります。難易度レベルは、高校生ではほとんど無理で、大学生で取れるかどうかのレベルと考えてよいでしょう。
試験対策では、1級は傾斜配点で採点され、各問題ごとに得点の比重を変えて合計されるため、極論を言えば、難しい問題には時間をかけずに、他のやさしい問題で確実に点数が取った方が点数が伸びることになり、結果、有利になります。また、得意科目を特化するより苦手科目を克服する勉強の方が点数の伸びが大きくなるのでお薦めです。
1級は試験が年2回行われますが、6月の試験より11月の試験の方が受験生の合格率が低くなる傾向があります。理由は、11月の検定試験では、公認会計士の勉強を始めて1年目の受験生が、この試験を受けるからです。
●2級
簿記検定の最大の特徴は、2級以上を取得していれば、この資格だけでも事務関係の仕事はできるということ、またこの資格を持っていると一般企業に就職しやすいこと、そしてさらに1級をめざし、税理士、公認会計士、中小企業診断士等を目指してステップアップできるということです。
試験対策は、簿記の勉強は初めてで2級を目指すならば、通学や通信講座を利用することを考える必要があります。2級は3級を取得していれば、独学で十分取得が可能ですが、簿記3級の基礎知識がない人にとって、いきなり2級の学習から入るののは、かなりハードルが高いでしょう。それでも、どうしても独学で、という人は、1日の勉強時間にもよりますが、合格レベルに達するのに早い人でも3ヶ月以上はかかることを覚悟しなければならないでしょう。目安として、合格するまでにかかる勉強時間は、個人差はありますが200時間程度です。
勉強手順は商業簿記から入るのが一般的です。理解しやすいのもこちらです。工業簿記は初めての人には理解しづらい科目ですが、解法パターンが載っている参考書を見ながら過去問を解いていき、解法パターンを覚える勉強方法がいいでしょう。
2級を習得できれば、どこでも通用する資格なので、転職やキャリアアップの切り札にもなり、収入や評価面でもプラスになるでしょう。特に女性の再就職、スキルアップには最適の資格です。
●3級
3級は社会人ならば最低でも身につけておきたい基礎中の基礎といえるでしょう。会社の経理業務には不可欠で、経理・会計等の仕事に就くのであれば、持っていなければならない資格。知らないほうが恥ずかしいくらいの話ですが、できれば最低でも2級は必要です。
簿記3級の試験は、他の級と比べても受験者数は多く、全国で約8万人が3級を受験しています。 合格率は40~50%で、資格試験の中では比較的易しく、かなり一般的な部類に入る検定試験です。一般的に、初学者は3級から受験することがほとんどです。専門学校でも3級が初歩レベルと位置づけています。試験対策は簿記3級だけを目指すのなら、市販のテキストで独学をしても十分です。独学で合格した人の平均的な学習期間をみると、優秀な人で1~3ヶ月。普通は大体3~6ヶ月位で簿記2級の合格レベルに達しています。また、3級の試験では過去問に類似した問題が出題されることも多く、試験対策としては過去問をできるだけたくさん解いておくことが最重要対策になります。
●簿記検定全般
①短期合格を目指す場合は独学はお勧めできません。また最終的に日商簿記1級まで目指すのであれば、 2級や3級から資格スクールの講座を受けた方が早道です。 独学などより分かりやすさは段違いです。また、基礎の3級からから2級までを確実に習得し理解できていないと、 1級は非常に難しくなるからです。
試験対策は過去問重点の勉強法がお薦めです。過去問を解き続けていると、試験問題出題者の意図がわかるようになってきます。予想問題集がたくさん発売されていますが、予想問題でいくら良い点数をとっても、過去問ができなければ、本試験でも良い点数を取るのは難しいことになります。従って、過去問を解答と照らしあい、確認しながら数多く解く練習をした方が力がつくことは間違いありません。
②簿記検定は、日本商工会議所、日本経理学校連盟、日本商業高校連盟の3団体が主催していますが、試験の難易度は難しい順に「日本商工会議所」→「全経」→「日本商業高校連盟」の順が一般的ですが、「全経」と「日本商業高校連盟」の2つはそれほど差がないと考えてよいでしょう。ただ、受験者が多く、実力を証明する力にすぐれている検定は日商簿記です。
また、「日本商工会議所」と「全経」の違いについては、主催者が違うだけで本質的には変わりません。日商簿記1級と全経簿記上級が同格扱いとなり、共に税理士試験の受験資格になります。
ただ全経上級では記述式の問題形式も多く、出題傾向も異なるため、試験対策は試験別に必要です。また全経1級は、会計又は工業簿記のどちらか合格してから、3回以内にもう一方の科目を合格すると、1級の合格が認定される科目合格制を採用しています。試験の難易度レベルは日商2級より少し高いレベルです。全経2級から4級までは工業簿記は出題されませんが、難易度レベルでは日商3級と全経2~3級は大体同じ位のレベルと考えてよいでしょう。
③持っていた資格の中で「一番役に立った資格No1」に選ばれたのがこの「簿記検定」です。たとえば、会社には事務系の仕事が多く、会計も任されるようになったとか、数字を使えば立場関係なく主張できる、また提案時やお客さまの財務状況を確認するときに役に立った。就活時も転職時も、これがあれば取りあえず面接まではいける。などの実体験が「役立った資格No1」に選ばれた理由のようです。
④簿記検定を取得できれば、その知識を応用して「ビジネス会計検定」の取得にチャレンジできます。また、さらにステップアップを考える人には、公認会計士や税理士などの上位の会計資格へのチャレンジをお勧めします。そうすれば、昇進や独立のチャンスが一気に広がります。また、簿記の力をつけると、社労士や中小企業診断士などの難関資格の取得もしやすくなるメリットもあります。 |