資格の概要 | 「社会保険労務士」は、厚生年金保険、健康保険などの社会保険に関する事務処理や、労務に関するコンサルティングを行う専門資格です。
労務管理のアドバイスや指導、労働・社会保険に関する法令に基づき、書類作成などを行うのが主な社会保険労務士の仕事です。基本業務は行政機関への提出書類の作成、提出手続きの代行業務、事業所の帳簿書類の作成業務で、これは社労士の独占業務になっています。詳しくは下記の業務内容を参照ください。よりよい職場環境をつくるための幅広い知識と優れた能力を備えた企業の有力なパートナーとして、有資格者の場は、今後ますます広がると思われますが、試験合格者の数は年々増えており、飽和状態になりつつあります。
特に、これから年金の仕組みが複雑でわかりにくいものになる中で、社会保険労務士に対する期待は高まることが想像されることもあり、受験者数が急増していることもあり、今後は仕事を獲得することが簡単ではない状況になりつつあります。
※社会保険労務士は、次に掲げる事務を行うことを業とします。
1.労働及び社会保険に関する法令に基づいて申請書等(行政機関等に提出する申請書、届出書、報告書、審査請求書、異議申立書、再審査請求書その他の書類を作成すること。
2.申請書等について、その提出に関する手続を代わつてすること。
3.労働社会保険諸法令に基づく申請、届出、報告、審査請求、異議申立て、再審査請求その他の事項について、又は当該申請等に係る行政機関等の調査若しくは処分に関し当該行政機関等に対してする主張若しくは陳述について、代理すること。
4.個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律の紛争調 整委員会におけるあつせんの手続並びに雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の調停の手続について、紛争の 当事者を代理すること。
5.地方自治法の規定に基づく都道府県知事の委任を受けて都道府県労働委員会が行う個別労働関係紛争に関するあつせんの手続について、紛争の当事者を代理すること。
6.個別労働関係紛争(紛争の目的の価額が民事訴訟法に関する民間紛争解決手続であつて、個別労働関係紛争の民間紛争解決手続の業務を公正かつ適確に行うことができると認められる団体として厚生労働大臣が指定するものが行うものについて、紛争の当事者を代理すること。
※平成28年10月末日現在、社会保険労務士は全国で41,131人です。内訳は、開業:23,797人、法人の社員:2,143人、勤務等:15,191人です。
全国に約40,000人いる社会保険労務士ですが、計算では1人あたり約43の企業と1,500人の労働者をサポートしているという、まさに引っ張りだこの状態と言えます。
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資格難易度 | ●難易度
「A 」 難関
【資格の難易度レベル】
社労士の試験の難易度は非常に高く、2020年度の合格率は6.4%でした。合格率に関しては平均して6%と、非常に低いです。決してやさしい試験ではなく、かなりの勉強量が必要で集中力、記憶力が必要条件になります。選択式試験は科目ごとに40~60%以上、択一式試験は科目ごとで40%以上、かつ全体で60~70%以上の正解率で合格できますが、 試験範囲が広く科目も多いため出題の予想や傾向がつかみにくく、独学での合格はなかなか難しい試験と言えます。 特にこれから学習を始める方には、モチベーション維持のためにも通学講座をお薦めします。社労士試験の各科目においては毎年多くの法改正があり、この法改正情報を把握するのは独学では時間的にも厳しいため、その意味でも通学講座を受講することがベストでしょう。スクールを活用する場合の学習期間は6ヵ月~1年。必要な学習時間の目安は、800~1000時間が必要です。
また、受験資格が大卒以外の方は行政書士資格を先に取得する方が資格取得には近道になります。試験は合格基準点以上取れば、順位に関係なく誰でも合格できますが、実務経験があると試験は有利になります。出題を見ると、択一式試験では個数問題や事例問題などが毎年増え、白書や統計からの出題など、今までになかったパターンで出題されています。また、選択式試験では判例からの出題や、問題文の長文化などの傾向と合わせて、読解力が問われる試験になってきているようです。
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・合格率
令和3年度第53回社会保険労務士試験結果
合格率 7.9%
(申込者数50,433名 受験者数37,306名 合格者数2,937名)
※参考データ
・令和2年度第52回社会保険労務士試験結果
合格率 6.4%
(申込者数49,250名 受験者数34,845名 合格者数2,237名)
・令和元年度第51回社会保険労務士試験結果
合格率 6.6%
(申込者数49,570名 受験者数38,428名 合格者数2,525名)
・平成30年度第50回社会保険労務士試験結果
合格率 6.3%
(申込者数49,582名 受験者数38,427名 合格者数2,413名)
・平成29年度第49回社会保険労務士試験結果
合格率 6.8%
(申込者数49,902名 受験者数38,685名 合格者数2,613名)
・平成28年度第48回社会保険労務士試験結果
合格率 4.4%
(申込者数51,953名 受験者数39,972名 合格者数1,770名) |
受験対策・資格の将来性 | 社労士試験の受験対策として一番重要なのは過去問の攻略です。試験形式が全問マークシート方式となっているので、論述や論文形式のよう な体系的な知識はさほど重要にはなりません。問題は「どのような問題がでるか」ということに慣れ、その解答を導き出す練習が必要になります。そして、弱点分野を作らないバランスのとれた学習法が合格の決め手となります。不得意な科目を極力つくらないことが大切です。
社労士の勉強は資格試験の中でも特に「つまらない」と言われます。実際、独学の場合は特にそうかも知れません。その理由は、とにかく1に暗記、2に暗記、3がなくって4に暗記という感じで、「暗記」の出来不出来が勝敗を分ける試験と言えるからです。
平均11冊ほどになる膨大な量のテキストを丸暗記しなければなりません。1回目を通してていねいにやったつもりでも、最初に戻るとほとんど忘れてしまっているという情けない状態を知りながらも果てしなくその作業を繰り返さねばならない苦行の連続です。スクールに通う場合には、独学よりはイメージがしやすくなるという利点がありますが、やることは同じです。社労士の試験対策では、「学力」=「記憶力」のように思えます。
全般的な学習手順としては、最初は全体、大まかな社労士制度の仕組みをよく理解した上で、少しづつ細かいところを押さえていく方法がいいと思います。どの試験でもそうですが、この試験も「苦手科目」を作らないように心がけることです。最終的には問題演習で力をつける方法しかありませんが、引っかけ問題にかからないように、引っかけのパターンを頭に入れるようにしておくことも大切です。受験対策の問題演習の中で大切なことの一つに「模擬試験」があります。社労士の場合も例外ではなく、模擬試験はできれば必ず受けて下さい、受ける価値はあります。資格スクールにとっても、模擬試験にズバリ的中の問題が多くあれば、翌年度の受講生募集の大きな宣伝になるため、総力を結集して問題を作成しているからです。
受験生にとってもまた、模擬試験を受けて問題を復習することで、本試験に向けて気持ちを盛り上げていく効果も生まれてきます。模擬試験の受験も会場受験がベストですが、どうしても日程面で無理な場合は、空き時間に自宅受験を受けることもできます。自宅受験は家族のしゃべり声や物音などが気になって集中できないデメリットもありますが、それでも受ける価値はあると思います。
資格取得後、社会保険労務士として開業し、他と差別化を図るなら、代行や書類の作成業務だけでなく、中小企業向けの労働環境の改善や改善提案などのコンサルティング分野も視野に入れていかなければなりません。ファイナンシャルプランナー資格を併せて取得し、個人向けに資産運用や年金など、様々なライフプランの提案などができれば活躍の場が広がります。
・一般的には、会社に入社後、総務部関係に所属し必要に迫られて取得したり、スキルアップのために取得というケースが多いようですが、社会保険労務士資格を持っておくと転職、就職に有利に働くことは間違いないでしょう。
社労士の試験に合格すると、合格後の手続きはそれぞれの都道府県会で行いますが、管轄は名簿を備えている全国組織が行います。社労士の登録は全国社会保険労務士会連合会、行政書士の場合は日本行政書士会連合会、が管轄しています。社会保険労務士法14条の2の1項には「社会保険労務士となる資格を有する者が社会保険労務士となるには、社会保険労務士名簿に、氏名、生年月日、住所その他厚生労働省令で定める事項の登録を受けなければならない」と規定されています。そして、14条の3の1項には「社会保険労務士名簿は連合会に備える」、2項には「社会保険労務士名簿の登録は連合会が行う」となっています。これは、登録についての問題として、実際に出題されることがありますので注意が必要です。 |