資格の概要 | 職業能力開発促進法に基づく技能検定は、「労働者の有する技能を一定の基準によって検定し、これを公証する技能の国家検定制度」で、労働者の技能と地位の向上を図ることを目的としています。技能検定に合格した人には、国家資格である「技能士」の称号が付与されます。試験は指定試験機関の「金融財政事情研究会(略:きんざい)」、及び「日本ファイナンシャル・プランナーズ協会(略:日本FP協会)」が実施しています。
ファイナンシャル・プランニング技能士(FP技能士)の職務は、主に個人を対象に、家計の収支や資産の状況、将来の収入の見通し、年齢や家族構成などのさまざまな要素を考慮して、効率的な資産運用プランの設計とアドバイスをすることで、金融商品や株式、不動産、税金、年金、ローンなどの幅広い知識が必要になります。金融関係や保険関係の仕事をしている人はこの資格は役立つでしょう。
FP技能士資格は「ファイナンシャル・プランニング技能検定」の合格者に与えられる資格(称号)で、1級技能士から3級技能士までの等級があります。試験では顧客の資産に応じた貯蓄・投資等のプランの立案・相談に必要な技能の程度などの検定が行われます。資産運用の提案ができるスペシャリストとして、平成15年にFP技能士として国家資格化されました。
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FP技能検定は国の技能検定ですが、そのFP技能士になるための検定試験(FP技能検定)は、(社)金融財政事情研究会と日本FP協会の両機関による複数指定試験機関方式で実施されています。どちらの試験を受けても合格すればFP技能士の認定を受けることができます。試験の受験者は銀行や証券会社、保険会社などで働く人が肩書を付けたいがために受験している場合が多いようです。
FP技能士の試験は、日本FP協会主催と金融財政事情研究会の主催する2つの試験があり、大変ややこしくなっています。双方ともファイナンシャル・プランニングについての専門的な知識・技術を一定水準以上持っていることを示す国家技能検定制度で、学科及び実技試験に合格した者をファイナンシャル・プランニング技能士(略:FP技能士)と呼びます。
(参考)
国家検定のFP技能士と同一種資格に日本FP協会が認定する民間資格のファイナンシャルプランナー資格の「AFP」とその上位資格の「CFP」があります。
民間資格の「AFP」や「CFP」と、国家資格の「FP技能士」の関係を説明しておきます。ファイナンシャルプランナーには、国家資格として1~3級の「ファイナンシャル・プランニング技能士(FP技能士)」と、民間資格として日本FP協会が扱う世界標準資格の「CFP」と、その基礎で下位にあたる「AFP」があります。AFPになるためには「AFP認定研修」を修了したあと「AFP資格審査試験」に合格しなければなりませんが、このAFPと同等の資格とされるのが「2級FP技能士」です。このAFP資格審査試験は2級FP技能検定を兼ねているため、2級FP技能士の受験資格で受けた人は、あとからAFP認定研修を修了すればAFP認定者になることができます。
未経験者の場合は、研修を受けてAFPに、またすでに業務を経験している人やFP3級技能士の資格を取っている人は、先に2級FP技能士の資格をとってからAFP認定を目指すこともできます。ファイナンシャルプランナー資格のAFPやCFPの詳しい内容についてはこちらを参照ください。➡ファイナンシャルプランナー資格
【ファインナンシャル・プランナー資格】
・国家資格:FP技能士(1級・2級・3級)
・民間資格:CFP(1級FP技能士相当) AFP(2級FP技能士相当)
【主催者と試験種類】
◆「日本ファイナンシャルプランナー協会」が実施している試験は下記の4種類。
・AFP
・CFP(取得すればFP技能士1級の学科試験が免除される)
・FP技能士1級(実技のみ)
・FP技能士2級(AFP資格審査も兼ねる)
◆「金融財政事情研究会」が実施している試験は下記の3種類。
・FP技能士1級
・FP技能士2級(AFP資格審査も兼ねる)
・FP技能士3級 |
試験方式 | 【FP技能検定1級・2級・3級】
各級とも学科試験と実技試験で行われ、それぞれ合否判定が行われます。
2級・3級試験は試験日の午前に学科試験、午後に実技試験が行なわれ、同じ日に学科試験と実技試験を受検することができます。
※主催者によって実技試験の方式が異なるため、実技試験を決めて、それに合わせて「日本FP協会」又は「きんざい(金融財政事情研究会)」のどちらの試験を受けるかの選択をすることになります。
●1級
・学科試験
筆記試験(マークシート方式)四答択一式 50問
(記述式)5題 試験時間120分
・実技試験:(きんざい:面接形式)資産設計相談業務から口頭試問方式で2問出題
(FP協会:筆記試験)資産設計相談業務に関する記述式
※200点満点で120点以上が合格
●2級
・学科試験
筆記試験:マークシート方式 四答択一式60問
試験時間 学科試験120分
※60点満点で36点以上が合格
実技試験:筆記試験(記述式40問)
(FP協会:資産設計提案業務に関する出題)
(きんざい:個人資産相談業務、生保顧客資産相談業務、中小事業主資産相談業務、損保顧客資産相談業務から1つ選択)
試験時間 実技試験90分
※50点満点で30点以上が合格
●3級
・筆記試験:マークシート方式 三答択一式 60問
試験時間 学科試験120分
※60点満点で36点以上が合格
・実技試験:筆記試験(三答択一式20問)
(FP協会:資産設計提案業務に関する出題)
(きんざい:個人資産相談業務又は保険顧客資産相談業務からの選択方式)
試験時間 実技試験60分
※50点満点で30点以上が合格
◆免除制度:CFPの資格試験に合格している人は、1級FP技能士の学科試験が免除されます。 |
試験科目 | 国家検定のFP技能士の職種は7種類あり、「資産設計提案業務」の試験のみ日本ファイナンシャル・プランナーズ協会が実施し、他は金融財政事情研究会が実施します。
●学科 (1,2,3各級共通)
・ライフプランニングと資金計画 ・金融資産運用設計 ・タックスプランニング
・リスク管理 ・不動産 ・相続/事業承継設計
●実技(各級とも実技試験は選択科目方式になっており、申請の際に試験科目(業務)を選択します。
・1級
(日本FP協会)資産設計提案業務
(金財)資産相談業務
・2級
関連業法との関係及び職業上の倫理を踏まえたファイナンシャル・プランニング
ファイナンシャル・プランニングのプロセス
顧客のファイナンス状況の分析と評価
プランの検討・作成と提示業務
・3級
関連業法との関係及び職業上の倫理を踏まえたファイナンシャル・プランニング
顧客のニーズおよび問題点の把握
問題解決策の検討・分析 |
受験料 | きんざい(金融財政事情研究会)(非課税)
・3級FP技能士 学科試験4,000円 実技試験4,000円
・2級FP技能士 学科試験5,700円 実技試験6,000円
・1級FP技能士 学科試験8,900円 実技試験28,000円
日本FP協会(非課税)
・3級FP技能士 学科試験4,000円 実技試験4,000円
・2級FP技能士 学科試験5,700円 実技試験6,000円
・1級FP技能士 実技試験のみ20,000円 |
資格難易度 | ●難易度
3級 「D」 易しい
2級 「C」 やや易
1級 「B」 普通
【資格の難易度レベル】
3級では基礎知識が求められ試験形式も○×形式と3答択一ですが、2級では4答択一になり少し難易度が上がります。1級ではさらに難度が上がり、学科と技能の中でも学科の難易度が高くなります。テキストや過去問には出てこない問題の出題が多いことで1級の難度が上がっているところもあります。
合格率からみると、2級では例年、学科試験が40~50%、実技試験は50~60%で3級は約70~80%の合格率です。一方、学科試験は60点満点で60%の36点以上取れば合格です。実技試験は運営者によって合格基準点が異なり、日本FP協会では100点満点中60点以上、金融財政事情研究会が50点満点中30点以上と設定し、絶対評価制のため合格基準点以上を獲得できれば問題ありません。
総合的に見ると、FP技能士は学科試験の方が難易度が高いのが特徴なので、学習時間の目安は、3級を独学の場合は30~120時間(1~2ヵ月)くらい、2級の場合は150~300時間(3~5ヵ月)位が必要です。独学でも比較的取得しやすい試験と言えるでしょう。
【FP技能士とファイナンシャルプランナー難易度の比較(目安)】
FP1級≒CFP>FP2級≒AFP>FP3級
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●合格率
金融財政事情研究会(きんざい)と、日本ファイナンシャル・プランナーズ協会(日本FP協会)の2つの団体によって実施されているFP技能士1級~3級試験の「合格率の比較と推移」を参照ください。
【金融財政事情研究会】FP技能士
・2022年9月試験
1級試験結果
(学科)合格率12.3%(受験者数5347名 合格者数657名)
2級・3級試験結果
(2級学科)合格率15.8%(受験者数34,872名 合格者数5,495名)
(2級実技)合格率38.1%(受験者数23,392名 合格者数8,901名)
(3級学科)合格率43.4%(受験者数21,018名 合格者数9,125名)
(3級実技)合格率49.5%(受験者数21,819名 合格者数10,792名)
【日本FP協会】FP技能士
・2020年9月実施 FP技能検定1級試験結果 (資産設計提案業務)
(実技)合格率97.7%(受験者数523名 合格者数511名)
・2020年9月実施 FP技能検定2級・3級試験結果
(学科)合格率49.2%(受験者数25,117名 合格者数12,355名)
(実技)合格率57.4%(受験者数20,163名 合格者数11,567名)
(学科)合格率89.6%(受験者数31,247名 合格者数28,011名)
(実技)合格率88.0%(受験者数31,319名 合格者数27,574名)
・2019年9月実施 FP技能検定1級試験結果 (資産設計提案業務)
(実技)合格率93.0%(受験者数1,009名 合格者数938名)
・2019年9月実施 FP技能検定2級・3級試験結果
(学科)合格率43.4%(受験者数20,935名 合格者数9,090名)
(実技)合格率62.6%(受験者数17,258名 合格者数10.809名)
(学科)合格率78.1%(受験者数22,266名 合格者数17,388名)
(実技)合格率79.5%(受験者数20,332名 合格者数16,159名) |
受験対策・資格の将来性 | FP技能士は国家資格であり、取得すれば永久にその資格が失われることはありません。広く浅く勉強することを心がければ独学で十分合格が可能です。勉強は過去問に早い時期から徹底的に繰り返して取り組むことが良い結果を生みます。学科試験は広く浅く出題されますが、基本的なことが主になっています。また実技試験は、特定の状況下で学科試験の知識を正しく使えるかを問う問題が主になり、実技試験だけのための受験対策は特別必要ではないように思います。
勉強は、1日の勉強時間を2〜3時間程度を目安とした場合、FP2級の勉強必要時間は150〜300時間、3級は80〜150時間くらいです。2級と3級では出題範囲が異なるため、テキストや過去問題で理解を深めておくことが大切です。1日の勉強時間にもよりますが、毎日2時間勉強する場合、2級で3ヵ月〜4ヵ月、3級なら2ヵ月〜3ヵ月くらいになります。
FP1級の場合は勉強時間は500〜600時間ほどとされています。目安として、1級の勉強時間は2級の勉強時間の2倍程度が必要です。またFP1級の試験では、法改正に関する問題も含めて毎年新しい問題が提出される傾向があります。テキストや問題集で勉強すること以外に、毎日新聞を読んで世の中の情勢を把握しておくことも大切です。
多くの人が3級に合格してから2級に挑みます、3級の試験勉強で学ぶ基礎知識は2級で出題される応用問題を解く際の重要な要素になりますので、2級は3級と並行して勉強できれば非常に効率が良く、3級に関する勉強も無駄にならないと思います。
銀行・証券・保険会社など仕事の現場では、資格の有無に関わらず最低でも2級レベルの知識は必要になりますので、一定の知識水準がある証として2級もしくは1級の取得をお勧めします。
最近は自分の資産は自らで管理するという風潮になってきていますが、自分の判断で資産を効率的に運用するのは非常に難しくリスクも伴います。こういった状況の中では、FPの需要は今後ますます高まっていくと考えられます。FP資格の取得者は金融関係や保険業界の人ががほとんどです。金融系の業界に就職希望する人は取っておいても損はありませんが、宅建士などの資格を合わせて取得しておくと尚一層いいと思います。
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