資格の概要 | 科学技術の応用面に携わる技術者のための国家資格。試験は、技術部門ごとに分かれており、機械、船舶・海洋、航空・宇宙、電気電子、化学、繊維、金属、資 源工学、建設、上下水道、衛生工学、農業、森林、水産、経営工学、情報工学、応用理学、生物工学、環境、原子力・放射線、総合技術監理の全21通りあります。
国内最高峰の技術系資格といわれる、技術士法に基づく国家資格です。有資格者は「技術士」の称号を使用して、登録した技術部門の技術業務を行えます。一次試験合格者や合格に相当する者で登録を受けた者が「技術士補」となり、二次試験に合格し、登録を受けた者が「技術士」になります。従って、第一次試験は技術士補試験を兼ねており、第二次試験は修習技術者(一次試験合格者)が、技術士になるために受ける試験になります。
技術士は、「技術士」の名称を用いて、科学技術に関する高等の専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、試験、評価またはこれらに関する指導の業務を行います。
「技術士補」は、将来技術士となる人材の育成を目的とする、技術士法に基づく国家資格です。有資格者は技術士の指導の下で、「技術士補」の称号を使用して、技術士を補佐する技術業務を行えます。国は「技術士」の称号を与えることにより、その人が科学技術に関する専門的な応用力をもちあわせていることを認定しています。技術士補も同じく国家試験(技術士第一次試験)に合格し、登録した人だけに与えられる称号です。
技術士の第一次試験と第二次試験が2013年度に大幅に改正されました。第二次試験の建設部門では、「建設一般」や「一般論文」と呼ばれる記述式の必須科目は択一式試験に変わり、選択科目(専門論文)では記述式の試験が新たに加わりました。また、技術的体験論文は廃止され、口頭試験の時間なども見直されています。改正の結果、二次試験の受験資格を満たすのは相変わらずそう簡単ではないことは変わりませんが、全体的には取得のハードルが下がる方向に変わったと言えるようです。
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試験方式 | 【一次試験】
全科目択一式マークシート形式(五肢択一式)の筆記試験
①基礎科目:試験時間1時間
②適正課目:試験時間1時間
③共通科目:5科目から2科目を選択
④専門科目:20部門から1部門選択 試験時間2時間
【二次試験】
論文式の筆記試験・口頭試験
(あらかじめ提出される技術的体験論文を元にした面接形式の口答試験の2段階で構成)
●総合技術監理部門以外の技術部門
(筆記試験)
①必須科目:記述式600字×3枚以内/3時間30分
②選択科目:記述式600字×3枚以内/3時間30分
③選択科目:記述式600字×3枚以内/3時間30分
●総合技術監理部門
(筆記試験)試験時間:計5時間30分
①必須科目:1.択一式40題/2時間 2.記述式 3時間30分
②選択科目:1.記述式/2時間
選択科目:2.記述式
選択科目:3.記述式/ 3時間30分
(口頭試験):技術士としての適格性と高等の専門的応用能力ほか
【合格基準】
・第一次試験:基礎/専門/適正科目 いづれも50%以上の得点率
・第二次試験(総合技術監理部門を除く技術部門):必須科目/選択科目 いづれも60%以上の得点率
・第二次試験(総合技術監理部門):必須科目/選択科目 いづれも60%以上の得点率
・口頭試験(総合技術監理部門を除く技術部門)60%以上の得点率
・口頭試験(総合技術監理部門):60%以上の得点率
【科目免除規定】
●一次試験全部免除:JABEE認定プログラムの修了者
●一次試験の一部免除
・第二次試験で合格した技術部門と同じ技術部門で第一次試験を受験する場合
→ 基礎科目と専門科目が免除になる
・第二次試験で合格した技術部門と別の技術部門で第一次試験を受験する場合
→ 基礎科目が免除になる
・資格による科目免除
中小企業診断士資格保有者、情報処理技術者試験合格者、 |
試験科目 | ●第一次試験の試験科目
1.基礎科目:科学技術全般にわたる基礎知識
科学技術全般にわたる基礎知識を問う問題(五肢択一式 試験時間1時間)
出題分野
(1) 設計・計画に関するもの(設計理論、システム設計等)
(2) 情報・論理に関するもの(アルゴリズム、情報ネットワーク等)
(3) 解析に関するもの(力学、電磁気学等)
(4) 材料・化学・バイオに関するもの(材料特性、バイオテクノロジー等)
(5) 技術連関(環境、エネルギー、品質管理、技術史等)
2.適性科目:技術士法第四章(技術士等の義務)の規定の遵守に関する適性
技術士法第四章の規定の遵守に関する適性を問う問題(五肢択一式 試験時間1時間)
3.専門科目:20技術部門(部門は機械、船舶海洋、航空宇宙、化学、繊維、金属、資源工学、建設、上下水道、衛生工学、農業、森林、水産、経営工学、情報工学、応用理学、環境、原子力放射線部門など)の中から1技術部門を選択し、その選択した1部門に係る基礎知識及び専門知識を問う問題(五肢択一式 試験時間2時間)
※一次試験の科目免除
学士の学位(理科系統の専攻分野)を有する者又はこれと同等以上の学力を有すると認められる者や、公害防止管理者、電気主任技術者、測量士等の資格保有者
●第二次試験の試験科目
第二次試験は、筆記試験及び口頭試験により行い、口頭試験は、筆記試験に合格した者について行われます。
筆記試験【総合技術監理部門以外の技術部門】
・必須科目①:技術部門全般にわたる専門知識、応用能力、問題解決能力及び課題遂行能力
(記述問題)1800字 2時間30分
・選択科目②:選択科目に関する専門知識と応用能力
(記述問題)3600字
・選択科目③:選択科目に関する問題解決能力及び課題遂行能力
記述問題)3600字 3時間30分
筆記試験【総合技術監理部門】
・必須科目①
「総合技術監理部門」に関する課題解決能力及び応用能力を問う問題
・必須科目②
「総合技術監理部門」に関する課題解決能力及び応用能力を問う問題
・選択科目①
選択した全「技術部門」の専門知識、応用能力、問題解決能力及び課題遂行能力に関する事
・選択科目②
選択した技術部門の「選択科目」についての専門知識及び応用能力に関すること
・選択科目③
選択した技術部門の「選択科目」についての問題解決能力及び課題遂行能力に関すること
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資格難易度 | ●難易度
技術士 「A」 難関
技術士補 「B 」 普通
【資格の難易度レベル】
技術系資格の中で最高峰と言われるのが「技術士」です。合格率は毎年10%前後で、その大半の受験者が技術に関するハイレベルな知識を有している人ばかりであることを考えると、この資格の難易度の高さが分かります。合格するまで複数回受験する人がほとんどと言われる難関国家試験です。試験では、比較的実務経験を重視されることや、口述試験も難しいという特徴がありますが、非常に幅広い分野での知識や経験を問われる筆記試験が最大の難関です。中でも二次試験は一次試験より難易度レベルがはるかに高くなります。二次の論文、口述試験は独学ではなかなか力が付きにくいため、スクールや通信講座の活用も検討するほうがいいと思います。
細かく分かれた多くの分野の中から、自分の一番得意の分野を受験できるため、きちっとした細かいスケジュールを組み、計画的にしっかりと学習に取り組むことができれば、合格できない資格ではありません。受験に関する情報量も多いので、独学で突破を目指すことも不可能ではないと思いますが、独学ではハードルが高く、難しいことは間違いありません。
例えば、「応用理学部門」は物理・化学・地質に携わる部門です。試験は物理及び化学、地球物理及び地球化学、地質の3科目。合格率が1次が30%以下で二次は15%前後なので、一次試験の合格率が低く難関です。受験対策は1次が過去問中心の+参考書の勉強法で、2次は論文対策に講座を活用するのがベストです。「化学部門」では、まず論文対策が難しく、化学分野の専門的な知識を基にして論文を記述する文章作成の練習が避けられません。また、技術士(化学分野)の受験教材(テキストや問題集)が非常に少ないため受験対策が立てにくいことなどがハードルを高くしています。
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・合格率
令和3年度技術士第一次試験結果
部門別平均 合格率33.6% 受験者数 14,594名 合格者数 6,380名
第二次試験結果
合格率11.9% 受験者数 20,365名 合格者数2,423名
※参考データ
・令和2年度技術士第一次試験結果
部門別平均 合格率33.6% 受験者数 14,594名 合格者数 6,380名
第二次試験結果
合格率11.9% 受験者数 20,365名 合格者数2,423名
・令和元年度技術士第一次試験結果
部門別平均 合格率48.6% 受験者数9,337名 合格者数4,537名
再試験結果 合格率58.1% 受験者数3,929名 合格者数2,282名
第二次試験結果
合格率11.6% 受験者数24,326名 合格者数2,819名
・平成30年度技術士第一次試験結果
部門別平均 合格率37.8% 受験者数16,676名 合格者数6,302名
第二次試験結果
合格率9.1% 受験者数25,914名 合格者数2,355名
・平成29年度技術士第一次試験結果
部門別平均 合格率48.8% 受験者数17,739名 合格者数8,658名
・平成29年度技術士第二次試験結果
合格率13.3% 受験者数26,253名 合格者数3,501名 |
受験対策・資格の将来性 | ・一次試験(技術士補)
一次の技術士補試験対策としては、まず基礎科目と適正科目は5、6年分の過去問の解答が十分理解出来るまで勉強しなければなりません。その中でも微積分や行列、ベクトルなどは難しいですが、出題パターンは大体決まっていますので比較的対応しやすい科目です。教科書と過去問集を反復することで過去問の内容を理解して解けるようになるまで継続することが効果的です。こうして過去問で7割以上の正解率を目指します。あと、適正科目の中で考えておかねばならないのが技術者倫理に関することです。対策としては技術士法第4条と付属の関連法令とISO(リスク低減に関する内容)も一読しておくほうが良いでしょう。ただ、一番難解なのは専門科目です。専門科目も過去問での理解を中心にした対策を行うことになりますが、テキストの入手のしやすさは技術部門によってまちまちで、建設部門などであれば参考書もたくさん発売されていますが、科目の解説テキストが入手できない技術部門では、他の資格の過去問題の解説テキストを参考に勉強を進めるような工夫も必要になります。
・二次試験(技術士)
二次試験は、筆記試験でも口頭試験でも「技術士に求められる資質能力の有無」が評価の判定基準になります。受験者の専門領域における知識をもとにして、与えられたテーマについて試験時間内で論文にまとめる試験なのですが、独学ではレベルアップが難しく、技術士試験の最大の山場と言えます。与えられたテーマについて論文にまとめる方法などは、経験者のアドバイスがあれば一番有効です。論文の書き方については添削指導が受けられれば減点のポイントを把握することは可能なので、そういう意味からも独学は不利と言えます。効率的に勉強するためには通信講座の受講でしょう。受験対策書は分野別に揃っていますが集中した勉強が必要になります。民間のスクールや通信講座を受講して試験合格をめざす人も多く、選択した専門分野における知識を十分に獲得して臨まねばなりません。試験もこのレベルになると試験合格にはそれなりの受験技術をマスターすることも大切な項目の一つになります。
技術系国家資格で口頭試問があるのはこの技術士試験だけで、資格取得には長期的な計画が必要になります。二次試験の口頭試験では、45分間のなかでトップエンジニアである技術士としての人物確認が行われます。必要な知識を身に付けているだけでなく、受応えや受験態度についても重要であり、試験官の心証を良くすることがポイントになるでしょう。
提出する技術的体験論文は、口頭試験の材料になるものですから、できれば経験のある技術士に添削してもらい、問題点を把握することが重要です。口頭試験についても試験の経験者にアドバイスがもらえれば得点のポイントを事前に把握でき、さらに口頭試験の模擬試験をやっておけば、試験対策は問題ないでしょう。
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技術士資格の取得方法は、先に実務経験を経てから受験をするのが一般的になっており、 一般的な取得の手順は、大学卒業→就職(エンジニア・研究者)→1次試験→技術士補登録→所定の実務経験→2次試験→技術士登録、という道筋になります。
実際の試験では試験の性格上、試験問題は実務経験とは縁の薄い基礎知識を確認するものばかりですが、実務経験がないと最終合格は難しい試験です。技術士になることは、コンサルティングエンジニアの登竜門であり、技術士として登録した後はプロのエンジニアとして、またコンサルタント業等での活躍が可能です。
取得をすることが大変難しい資格であることは企業の人事担当者ならば理解していますので、スキルと同時に人間性という部分で評価の対象となります。技術士の資格を取得すると、各種の国家資格取得時に試験科目一部免除など、多くの特典があります、例えば電気通信業界での一番のメリットは電気電子部門で建設業法の監理技術者となれることです。
一般的には、業務経験(4,500万円以上の工事を2年間責任ある立場で担当するなど)を積むことによって取得する方法などがありますが、現状では業務経験を積むことが大変難しい状況であるため、技術士取得が一番の近道になっていることが注目されています。 |