資格名

弁理士

資格の種類

国家資格(業務独占資格)

主催者

経済産業省 試験実施:工業所有権審議会

資格の概要

弁理士は、特許や商標などの知的財産権に関する専門家です。知的財産権の保護や活用に関する法律や専門知識を有し、それに関するすべての事務手続を代理することができます。特許庁への手続きや不服申し立てなどの代理業務は、弁理士にしか許されない独占業務です。

弁理士になるためには、毎年1回行われる弁理士試験に合格し、弁理士登録をする必要があります。受験資格に制限はありません。弁理士試験は1次試験の短答式、2次試験の論文式、3次試験の口述式が行われ、論文式試験は短答式試験に合格した者、口述試験は論文式試験に合格した者に行われ、この1次から3次の3回の試験に合格すれば弁理士試験に合格したことになります。

次に、弁理士資格を取得して正式に弁理士になれる人には以下の(1)~(3)の者になります。
(1)弁理士試験に合格した者
(2)弁護士となる資格を有する者
(3)特許庁において審判官又は審査官として審判又は審査の事務に従事した期間が通算して7年以上になる者
この(1)~(3)のいずれかに該当する者は、該当後に実務修習を修了することで、弁理士となる資格を得ることができます。

弁理士の仕事は、大きく分けて以下の3つに分けられます。
(1)知的財産権の取得
特許や商標などの知的財産権を取得するための手続きを代理します。
(2)知的財産権の維持
特許権や商標権などの知的財産権の権利を維持するための手続きを代理します。
(3)知的財産権の活用
特許権や商標権などの知的財産権を活用するためのアドバイスや、侵害に関する対応を行います。
近年、企業の海外進出や国際化が進むにつれて、知的財産権の重要性が高まっています。そのため、これらの弁理士の仕事の需要も拡大しています。



試験の合格率・難易度

難易度 
  「S」  超難関

【資格の難易度レベル】
弁理士試験は、高度な専門知識と論理的思考能力が求められることで合格率が極めて低い、非常に難しい試験です。例えば、最新の統計によれば、令和3年から令和6年の4年間の弁理士試験の合格率はわずか6.0~6.1%でした。この低い合格率が続く背景には、広範な学習内容と1次のマークシート方式の短答式試験、2次の筆記試験の論文式試験、3次の口頭で解答する口述試験、この種類の異なる3段階の試験で理解度が問われ、全てをクリアしなければ合格できない試験であることがあります。
また、弁理士試験合格に必要な勉強時間は約3,000時間と言われます。これは、1日2時間勉強するとすれば1,500日(約4.1年)で、1日4時間勉強するとしても750日(約2年)かかる計算になります。その一方で、受験者の多くが会社員であり、仕事との両立を図りながら試験合格を目指していることを考えると、十分な勉強時間を確保することがなかなか難しくハードルは高そうです。そして、これらのことが主に合格率の低さの要因として挙げられます。

弁理士試験の特徴は、国立大卒の受験者が多いことと、「理系の弁護士」と言われるように試験の志願者、合格者共に理系出身が7割以上になることです。令和6年度弁理士試験では、試験の最終合格者における理系出身者の割合は81.7%でした。試験も基本的に理系が有利な試験だとされていましたが、最近では文系の受験者が少ないからといって「文系では難しい」というのは間違いで、文系でも理系でも構わず挑戦することができる資格であると言われています。その理由は弁理士の業務にあります。

例えば、弁理士の主要業務に特許出願等の特許に関する権利化業務と、意匠又は商標の権利化業務があります。特許に関する権利化業務は理系弁理士が専門とする得意な業務ですが、意匠や商標についての業務に関しては、一般に理系の高度な知識はほとんど求められることがなく、代わりに高度な法律の知識が必要なことがあり、この場合は文系の弁理士が活躍できる業務になります。他にも短答式試験、論文式試験(必須)、口述試験は、法律知識のみが問われる試験であり、理系出身の受験者に有利な内容になっていることはありません。大学等で法律の勉強をすることが少ない理系の方は、一から法律を勉強する必要があります。そのため、できるだけ効率的な勉強に取り組む必要がでてきます。



 

●合格率

・令和6年度弁理士試験最終結果
 志願者数 3,502名 
 受験者数 3,160名 
 合格者数 191名 
 合格率(合格者数/受験者数) 6.0%
・令和5年度弁理士試験最終結果
 志願者数 3,417名 
 受験者数 3,065名 
 合格者数 188名 
 合格率(合格者数/受験者数) 6.1%
・令和4年度弁理士試験最終結果
 志願者数 3,558名 
 受験者数 3,177名 
 合格者数 193名 
 合格率(合格者数/受験者数) 6.1%
・令和3年度弁理士試験最終結果
 志願者数 3,859名 
 受験者数 3,248名 
 合格者数 199名 
 合格率(合格者数/受験者数) 6.1% 

試験の内容・勉強法

弁理士試験対策としては、試験合格までの必要な学習時間の目安が、3,000時間程度とされていますが、毎日の勉強に全力を注ぐことが難しい社会人の受験生はもっと時間がかかることを想定しておかねばなりません。従って、まず、適切な学習計画を立てて適切な学習を継続するということが大前提になります。それが狂うと合格が難しい試験になります。

弁理士試験対策としては、短答式試験、論文式試験、口述式試験の各試験で求められる能力や対策は異なりますが、共通して大切なことは、体系的な学習と継続的な努力です。従って、適正な学習内容を作成し、組み立てた学習計画に落とし込んで継続できる計画に作り上げ、あとは実行あるのみのスタイルを準備することから始めます。
試験別の試験対策は下記を参考に考えるのがいいと思います。

【短答式筆記試験】
・試験のポイントは、 法律の条文の正確な理解と条文間の関係性の把握、多岐にわたる知識の定着を計ること。法律の条文の理解は試験合格後も実務で必要とされ、受験勉強を通して十分に習得しておかねばなりません。
●受験対策
 ①基本テキストと過去問の学習を徹底的する: 各科目のテキストを繰り返し読み込み、条文の意味を正確に理解すること。併行して過去問を解くことで出題傾向をつかみ、弱点分野をなくす学習をする。
 ②頻出条文の暗記:条文は丸暗記ではなく、条文の意味を理解した上で暗記することが大切です。
 ③問題演習・模擬試験:問題演習を繰り返すことでスピードアップを図ります。模擬試験は実戦形式で自分の実力を知り、時間配分や解き方の改善に役立てます。

【論文式筆記試験】
・弁理士試験のポイントは論文試験です。主に法令や条文の正確な理解に基づいた論理的な文章作成能力や問題解決能力が求められますので、論文に強い人は有利と言えますが、苦手な人でも合格まで3年くらいはかかる覚悟で長期計画を立てて受験に挑むならば問題ありません。
●受験対策
 ①過去問の分析: 過去問を十分に分析し、出題形式、出題傾向や採点基準などを把握します。
 ②答案作成の練習:主に問われる部分の条文や判例、学説などを読んで、問題に対して結論を導く練習(アウトプットの練習)を過去問や予想問題を使って繰り返しやりましょう。
 ③添削指導を受ける:多くの合格者を輩出している予備校に通学、又は予備校が提供する通信講座を受講し、経験豊富な講師に答案を添削してもらうことで、自分の課題を明確にし、改善につなげる。
 ④論理的思考力の養成:法学的な論理だけでなく、一般的な論理的思考力も養うことが必要です。

【口述試験】
・口述試験のポイントは、専門知識の理解度や、論理的な説明能力、コミュニケーション能力などですが、この試験の特徴は重要な概念は繰返し出題される傾向にあることです。
●受験対策
 ①経験豊富な弁理士や先輩受験生と練習会や講習会、模擬試験などを活用し、実戦形式で練習しましょう。
 ②予備校で有料の想定問題集をもらえますので、予想される問題に対して事前に回答を準備しておきます。
 ③緊張せずに、自信を持って堂々と自分の考えを述べる練習を必ずしておきましょう。




◆受験勉強を効率的に進めるために行うこと
(1)良く考えながら具体的な学習計画を立て、目標を明確にし、計画的に学習を進めること。
(2)静かで集中できる学習環境を整えること。(勉強に必要ないものは持ち込まない)
(3)長時間集中しすぎると効率が落ちるため、適度に休憩を取るように気を付ける。
(4)モチベーションを維持するために、同じ目標を持つ仲間と積極的に勉強や情報交換できる時間をつくる。
(5)効率的に学習を進めるためには、無理に独学にこだわらず予備校や通信講座を活用することを検討する。

我が国が知的財産の重要性をますます認識し、その価値を高めていく中で、弁理士は大きな役割を果たすことが期待されます。弁理士資格の価値は今後、確実に上昇するでしょう。

試験日程

●試験実施:毎年1回 1次試験から3次試験まで実施されます。
●試験日
  短答式筆記試験 5月中旬~下旬
  論文式筆記試験
   必須科目/選択科目:6月下旬~7月上旬 
  口答試験 10月中旬~下旬
●申込期間:(試験)3月中旬~4月上旬 (実務修習)11月中旬~下旬頃
●願書配布:3月上旬~4月上旬(インターネット願書請求は2月上旬~3月下旬)
※受験願書は、特許庁、各経済産業局特許室(内閣府沖縄総合事務局特許室を含む)および日本弁理士会での交付、特許庁への郵送による請求の他、インターネットから請求し入手することができます。
●合格発表:(短答式)6月上旬 (論文式)9月上旬 (最終発表)10月下旬~11月上旬

   令和6年度 弁理士試験日程

受験資格

●1次(短答式試験)
 ・受験資格は特になし。
●2次(論文式試験)
 ・短答式筆記試験合格者
 ・短答式筆記試験免除者
●3次(口述試験)
 ・論文式筆記試験最終合格者

試験会場

・短答式筆記試験 東京  大阪  仙台  名古屋  福岡
・論文式筆記試験 東京  大阪
・口述試験    東京

受験費用

 12,000円 非課税(特許印紙にて納付)

試験方式

●1次(短式試験)
 ・マークシートによる五枝択一
 ・問題数60問/試験時間3.5時間
●2次(論文式試験)
 ・論述式
【必須科目】
  工業所有権に関する法令
   特許法・実用新案法 2時間
   意匠法 1.5時間
   商標法 1.5時間
   ※試験の際、弁理士試験用法文の貸与あります。
【選択科目】1.5時間   
   ※受験願書提出時に次の6科目の中から一つを選びます。
●3次(口述試験)
 ・面接形式 各3科目についてそれぞれ約10分程度
      ①特許・実用新案に関する法令
  ②意匠に関する法令
  ③商標に関する法令

【合否基準】
・短答式筆記
総合得点の満点に対して65%の得点を基準として、工業所有権審議会が相当と認めた得点以上であること。ただし、満点の40%を下回る科目が一つもないこと。
・論文式筆記
 (必須科目)
標準偏差による調整後の各科目の得点の平均が、54点を基準として工業所有権審議会が相当と認めた得点以上であること。ただし、47点未満の得点の科目が一つもないこと。
 (選択科目)
科目の得点が満点の60%以上であること。
・口述試験
採点基準をA、B、Cのゾーン方式とし、合格基準はC評価が2つ以上ないこと。

試験科目

●1次(短式試験)
 ①特許法・実用新案法、②意匠法、③商標法、④工業所有権に関する条約、⑤著作権法・不正競争防止法 以上の7法令/5科目
●2次(論文式試験)
 ・必須科目:工業所有権に関する法令 ①特許法・実用新案法、②意匠法、③商標法の3科目
 ・選択科目:次の6科目のうち1科目選択
①理工I(機械・応用力学) ②理工IⅡ(数学・物理) ③理工Ⅲ(化学) ④理工Ⅳ(生物) ⑤理工Ⅴ(情報) ⑥法律(弁理士の業務に関する法律)
●3次(口述/面接試験)
 工業所有権に関する法令(特許法・実用新案法、意匠法、商標法)

【免除制度】
免除制度とは、一定条件を満たしている場合に試験科目の一部が免除される制度で、弁理士試験の免除制度とは、短答式試験と、論文式試験(必須科目)、論文式試験(選択科目)に適用されます。
・短答式試験の場合の例
 短答式試験合格者は、短答式試験の合格発表日から2年間、短答式試験の全ての試験科目が免除されます。
 短答式試験に一度受かれば、2年間はこの試験の受検が免除されるということです。
・論文式試験(必須科目)の場合の例
 論文式試験(必須科目)の合格者は論文式試験の合格発表日から2年間論文式試験(必須科目)が免除されます。
・論文式試験(選択科目)の場合の例
 論文式試験(選択科目)の合格者は論文式試験の合格発表日から永続的論文式試験(選択科目)が免除されます。
・公的資格を有している方の例
 技術士、司法書士、行政書士ほかの公的資格保有者は各資格に対応する論文式試験(選択科目)が免除されます。◆弁理士試験の免除制度は少し複雑な仕組みですが、制度を上手に利用することで試験の負担を最小限にすることを考えることが大切です。免除制度の詳しい解説はこちらを参照 ➡ 弁理士試験の免除関係に関するQ&A

試験関連情報

【資格の難易度情報】
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●資格試験関連情報
弁理士試験を合格した方は、日本弁理士会が実施する「実務修習」を修了することが弁理士登録の条件となっています。  ➡ 「実務修習」に関する案内

●関連資格
 知的財産管理技検定
 情報処理技術者試験
 ビジネス著作権検定

問い合わせ先

特許庁総務部秘書課弁理士室試験第一係
http://www.jpo.go.jp/indexj.htm  
〒100-8915 東京都千代田区霞が関3-4-3
TEL 03(3581)1101

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