資格の概要 | 司法試験は裁判官・検察官・弁護士になるために必要な学識、およびその応用能力を判定することを目的とする国家試験。合格すれば司法修習生となる資格を得ることができます。
平成18年(2006)からは従来の司法試験のほかに、法科大学院修了者を対象とした司法試験が行われるようになり、前者を旧司法試験、後者を新司法試験と呼ばれています。また平成23年(2011)からは司法試験予備試験が実施され、その合格者には司法試験(新司法試験)の受験資格が与えられます。尚、旧司法試験は同年を最後に廃止されました。
試験は以前は合格率3%とも言われ、非常に狭き門であったのですが、新制度の導入により、2010年の合格率は25%程度になり、昔よりはずいぶん広き門となっています。法科大学院を修了しなくても、2011年から始まった予備試験を通過すれば受験資格を得られますが、受験回数は、大学院修了や予備試験通過から5年以内に3回までと決められています。
ただ、予備試験はあくまで例外的措置であるため、合格者数はかなり絞り込まれる予定であり、やはり司法試験を受ける場合には、法科大学院を修了するのが王道パターンになります。しかし、年間20%程度の合格率の為に多額の費用と貴重な時間を費やし、ようやく弁護士になってもメシが食べられないようでは、法科大学院の人気低下はますます拍車がかかります。そして、このまま法科大学院離れが進むと法曹界に優秀な人材が集まりにくくなると言った問題もあるのです。
そんな中で最近の傾向として注目されているのが、予備試験からの合格狙いです。これは法科大学院修了と同等の知識があるかどうかをはかる国家試験で、合格すれば司法試験の受験資格が得られます。これなら大学在学中に予備試験合格を果たせば司法試験受験資格が得られ、その上、合格率が法科大学院卒よりも良いのです。2016年の試験結果を見ても、司法試験合格者1,583人のうち235人(前年比49人増)が予備試験組からの合格者となっているのです。こういった状況が続くと、今後はさらに法科大学院卒は予備試験組との競争が激化すると思われ、合格上位の法科大学院だけが残るのではと予想されます。
(注)当サイトでは、本番の司法試験より「司法試験予備試験」の方が難易度が高いという評価をしています。その理由は、予備試験は、短答・論文・口述と3次まで試験がある上に、試験科目に一般教養が含まれるなど、司法試験よりも範囲がかなり広いです。また、それにもかかわらず、合格率が司法試験に比べて極端に低い結果が出ています。平成30年の結果を見ても、受験者ベースで司法試験の最終合格率が29.1%だったの対し、予備試験の合格率は3.9%で、7.5倍の開きがありました。この状況から司法試験よりも予備試験のほうが難易度が高い、と判断できます。
⇒「司法試験予備試験」に関する情報はこちらを参照下さい。
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資格難易度 | ●難易度
「S」 超難関
【資格の難易度レベル】
(新)司法試験が導入されてから、2018年度で13年が経ちました。また、2015年からは短答式試験の出題科目が3科目(憲法・民法・刑法)に変更され、受験期間内に受けることができる司法試験の回数(5年間で3回)の制限が廃止になりました。受験生にとっては受験し易い試験となったはずなのですが、最高峰の資格試験であることに変わりはありません。ロースクールができても、同様に難しいことには変わりません。法科大学院ができるまでは合格まで5年、6年かかるのが常識であったNo1の超難関試験で、間違いなく最高ランクの試験です。もし、目指そうとするのであれば、それなりの覚悟が必要で本当に過酷な試験になっています。毎日、家や予備校の自習室にかよって何年も勉強し続けなければ合格できないのが普通。試験では憲法、行政法、民法、民事訴訟法、商法、刑法、刑事訴訟法をはじめ、幅広い法律知識が出題されます。知識を暗記する力だけでなく、論理的思考力や分析力も必要とされます。
ただ、試験合格のためには何か特別な方法があるわけではなく、基本書と過去問の繰り返しです。 択一試験なら、基本書のどの部分がどのような形で聞かれているか、常にフィードバックを心掛けることが重要。 論文試験も、詳しいものが要求されているわけではなく、一般的な教科書に載っているレベルのごくあっさりしたもので良いのです。ただ、「論文」試験は「論ずる」必要があり、自己の見解とその根拠が必要になります。
合格のポイントは論文試験の突破です。暗記だけでは対応できない試験なので、過去問の分析・研究と、理解や表現の学習が重要になります。
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●合格率
・令和元年 司法試験最終結果
出願者数4,930名 受験予定者数4,899名
受験者数4,466名 採点対象者数4,429名
短答式合格者数3,287名(合格率73.60%)
最終合格者数1,502名(最終合格率33.63%)
法科大学院課程修了の資格に基づく受験者は4,081名(91.4%)
司法試験予備試験合格の資格に基づく受験者は385名(8.6%)
※参考データ
・平成30年 司法試験最終結果
出願者数5,811名 受験予定者数5,726名
受験者数5,238名 採点対象者数 5,200名
短答式合格者数3,669名(合格率70.05%)
最終合格者数1,525名(最終合格率29.11%)
・平成29年 司法試験最終結果
出願者数6,716名 受験予定者数6,624名
受験者数5,967名 採点対象者数 5,929名
短答式合格者数3,937名(合格率65.98%)
最終合格者数1,543名(最終合格率25.86%)
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受験対策・資格の将来性 | 【短答試験】
短答試験では判例等の知識が問われますが、論述試験ではロジックが問われます。判例が採用する規範を用いて、あてはめればよいということではありません。判例の規範を示しつつ、それを批判したり、また射程が及ばないことを指摘したりすることで、自己の見解とその根拠につなげられると高得点につながりやすいといわれています。判例の規範にのるにしてもその根拠を示す必要があるわけです。判例が根拠を示していないときには、判例に賛成する学説の根拠を借用したり自分なりの根拠をひねり出したりして、根拠を示すことになります。判例が確立しているかどうかは関係なく、判例の見解を自己の見解とするときは根拠が必要になります。結局、短答式試験は、制限時間内にいかに早く正確に問題を解くかがカギとなります。条文と判例の知識が問われるので、暗記力の勝負です。
【論文試験】
論文式試験は、事例文(A4用紙2~4枚程度)を読んで、設問に答える形式ですが、これは暗記だけでは対応できません。出題されるのは、教科書などには全く載っていない架空の事例についてなので、その場で自分の法律の知識を組み合わせて、論文を書かなければなりません。必要なのは文章力だけでなく、事例に登場する依頼者の視点に立つことが、場合によっては必要になることがあります。論文試験は現場での思考力を問う試験であるため、試験用の六法全書を参照しながら答案を作成することが認めらています。尚、新司法試験では、旧司法試験とは異なり、絶対的評価(各科目とも満点の40%以上が必要で、総合で満点の60%以上が必要)により短答式試験の合否が決せられ、論文式試験においても最低必要点が設定されており、1科目でも満点の25%に満たない場合には不合格となる。合格者の決定は、短答式試験の合格者の中から論文式試験のみで不合格となった者を除外した上で、短答式試験の成績と論文式試験の成績を総合評価して行われる。短答式試験と論文式試験の比重は1:4とし、判定に当たっては論文式の素点に1.75倍したものに短答式の素点を加算して判定される。非常に難易度の高い試験であるため、必要な学習時間の目安はありません。試験は超難関試験ですが、法律に興味があり、かつ、正義感にあふれる人は、ぜひチャレンジしてほしいものです。
(参考)
全国大学生活協同組合連合会が、2015年9月の各大学生協で販売した本の売り上げベスト10を公開しました。それをみると資格や検定の問題集が目立ち、中でもTOEICテスト関連本が4大学でランクインしています。その中で特異なのは、慶應義塾大学の1位が「伊藤真が選んだ短答式一問一答1000刑法」(伊藤真著)であることでしょう。伊藤氏は「マコタン」と呼ばれ、書籍は司法試験、予備試験、法科大学院入試の短答式試験対策用として活用されています。
⇒全国10生協の書籍部で、今売れている本のベストテンを紹介。 |