資格の概要 | 司法試験は裁判官、検察官、弁護士になろうとする者に必要な学識及びその応用能力を備えているかどうかを判定する試験で、法科大学院課程における教育及び司法修習生の修習の連携として行われるものですが、法科大学院を修了していなくても司法試験を受験できるように、平成23年からバイパス制度として開設されたのが「司法試験予備試験」です。この予備試験は短答式試験、論文式試験、口述試験の3段階になっており、法律科目だけでなく一般教養科目の試験も実施されます。予備試験の合格者は、司法試験の受験資格を得ることができます。
このように、司法試験では予備試験はあくまで例外的措置であるため、合格者数はかなり絞り込まれることになり、やはり司法試験を受ける場合には、法科大学院を修了するのが王道パターンと言えますが、予備試験は法科大学院を経由しない者にも法曹資格を取得する道を開くために設けられた試験です。法科大学院の学費が高価であることなどから、司法試験予備試験を目指す受験者も増加しています。
そんな中、最近の傾向として注目されているのが、予備試験からの合格狙いです。これは法科大学院修了と同等の知識があるかどうかをはかる国家試験で、合格すれば司法試験の受験資格が得られます。これなら大学在学中に予備試験合格を果たせば司法試験受験資格が得られ、その上、合格率が法科大学院卒よりも良いのです。2021年の試験結果を見ても、司法試験合格者1,421人のうち374人(前年比4人増)が予備試験組からの合格者となっているのです。こういった状況が続くと、今後はさらに法科大学院卒は予備試験組との競争が激化すると思われ、合格上位の法科大学院だけが残るのではと予想されます。
⇒「司法試験」に関する情報はこちらを参照下さい。
|
試験の合格率・難易度 | ●難易度
「S」 超難関
【資格の難易度レベル】
司法試験予備試験は、短答・論文・口述と3次まで試験がある上に、試験科目に一般教養が含まれるなど、司法試験よりも範囲がかなり広いです。また、それにもかかわらず、合格率が司法試験に比べて極端に低い結果が出ています。そのような状況から、当サイトでは本番の司法試験より「司法試験予備試験」の方が難易度が高いという評価をしています。
平成30年の結果を見ても、受験者ベースで司法試験の最終合格率が29.1%だったの対し、予備試験の合格率は3.9%で、7.5倍の開きがありました。この状況から司法試験よりも予備試験のほうが難易度が高い、と判断できます。平成30年司法試験の結果によると、法科大学院別の合格者数と合格率のトップは「予備試験合格者」で、合格者数は336人、合格率は77.6%でした。
予備試験ルートで司法試験に合格しようとする人は、目安として最低でも2000時間、多い場合は5000時間程度の勉強が必要になると言われます。勉強をスタートする段階で、すでにかなりの法律知識を有していることも必要ですが、それでも最低、毎日5時間以上で3年間ぐらいの勉強は必要になります。また、予備試験ルートならダブルスクールが必要で効果的です。従って、独学での突破は自殺行為と考えてよいでしょう。レベル的には、ロースクール生と同程度の知識では予備試験は受りません。ロースクールの卒業生のトップ数%と同レベルの学力が必要と考えたらいいでしょう。その理由は、予備試験合格者の70%以上が司法試験に合格していることから、予備試験に合格することは、司法試験の合格レベル一歩手前であるという評価ができます。また法科大学院卒業生の司法試験合格率が20%前後であることと比較しても、予備試験合格がいかに難しいかが理解できると思います。
--------------------------------------------
●合格率
令和4年司法試験予備試験結果
(短答式試験)出願者数16,145名
受験者数13,004名 合格者数2,829名 合格率21.8%
※参考データ
・令和3年司法試験予備試験結果 最終合格率3.99%
(短答式試験)出願者数14,317名
受験者数11,717名 合格者数2,723名 合格率23.2%
(論文試験)受験者数2,633名
採点対象者数2,619名 合格者数479名 合格率18.2%
最終(口述試験)受験予定者数479名
受験者数476名 合格者数467名 口述合格率98.1%
・令和2年司法試験予備試験結果 最終合格率4.17%
(短答式試験)出願者数15,318名
受験者数10,608名 合格者数2,529名 合格率23.8%
(論文試験)受験者数2,439名
採点対象者数2,428名 合格者数464名 合格率19.1%
最終(口述試験)受験予定者数494名
受験者数464名 合格者数442名 口述合格率95.7%
・令和元年司法試験予備試験結果 最終合格率4.04%
(短答式試験)出願者数14,494名
受験者数11,780名 合格者数2,696名 合格率22.9%
(論文試験)受験者数2,580名
採点対象者数2,566名 合格者数494名 合格率19.3%
最終(口述試験)受験予定者数494名
受験者数494名 合格者数476名 口述合格率96.4%
・平成30年司法試験予備試験結果 最終合格率3.89%
・短答式試験 出願者数13,746名
受験者数11,136名 合格者数2,661名 合格率23.9%
・論文試験 受験者数2,551名
採点対象者数2,534名 合格者数459名 合格率18.0%
・最終(口述試験)受験予定者数459名
受験者数456名 合格者数433名 口述合格率95.0%
・平成29年司法試験予備試験結果
・予備試験 出願者数13,178名(対昨年 411名増)
・短答式試験結果
合格率21.4% 受験者数10,743名 合格者数2,299名
・論文式試験結果
合格率21.3% 受験者数2,200名 合格者数469名
・口述試験(最終)結果
合格率21.3% 受験者数469名 合格者数444名 |
試験の内容・勉強法 | ・短答試験
短答式試験では、解答方式が選択式(マーク解答)で8科目あります。270点満点中170点~165点で取れれば合格できます。合格率はおよそ20%ほどです。短答式の問題自体はそれほど難問ということはないようですが、試験に対して高得点が求められるため難関であることは間違いありません。出題は非常に基本的な問題が多く、合格者の多くが高い平均点で高い得点を取得しています。基礎的な知識・理論正確に、幅広く身につけておくことことが大切です。
<ポイント>
予備試験は科目が多いため、どの科目もまんべんなく力をつける勉強をしようと思うと非常に難しくなります。予備試験は「法律基本科目(憲法・民法・刑法・商法・民事訴訟法・刑事訴訟法・行政法)」と、「法律実務基礎科目(民事・刑事)」、それと「一般教養(社会科学・人文科学・自然科学・英語)」があるのですが、基本的には「法律基本科目」の7科目で勝負が決まるので、この7科目を集中して勉強する。他の「法律実務基礎科目」はそこそこできればいいという考え方で臨み、一般教養は実力でカバーするのでほとんどやらない、というように重点的に勉強する科目、そこそこの勉強でいい科目、ほとんどやらなくていい科目、の3つに分けて勉強に濃淡をつけて対策することが重要です。従って、きちっと真剣に勉強するのは「法律基本科目」とし、全てを全部まんべんなく勉強する方法は取らないという方針で臨んだ方が良い結果が出ると思われます。
・論文試験
予備試験最大の難関は論文式試験です。論文は論述式で科目は10科目で500点満点中210点~240点くらい取得できれば合格です。合格率はおよそ20%弱です。出題形式が新司法試験に近く、論点が明確な問題に関しては、原理・原則といった基礎的事項をどれだけ深く理解しているか、またそれを答案上で正確に表現できるかどうかが合否を分けることになります。答案の型を身につけ、出題形式に近い問題にできるだけ多く取り組んで力をつけることが大切です。また、法律の知識だけでなく、文章を構成する能力や時間内に答案を書きあげるための時間管理能力なども求められるため、独学で克服することは難しいため予備校などを利用して対策する必要があります。
・口述試験
口述は対話式の試験で2科目です。60点を基準とし119点以上で合格となります。合格率はおよそ95%です。
⇒「司法試験」に関する情報はこちらを参照下さい。 |