資格の概要 | 心理カウンセラーやサイコセラピストなどの資格には、国家資格や明確な資格が存在しませんが、民間の認定資格は多数存在します。その中で臨床心理士は、文部科学省の認可する財団法人が実施する試験に合格し、認定を受けることで取得できる“心理専門職の証”となる資格で、現在最も知名度の高いものです。臨床心理士は、臨床心理学にもとづく知識や技術を用いて、人間の“こころ”の問題にアプローチする“心の専門家”です。
心理職が活動する舞台は広がっており、いじめや不登校問題を抱える学校現場でも臨床心理士らがスクールカウンセラーとして活躍しています。2014年度には全国2万2013カ所の小中学校や高校などに7344人を配置しています。
日本臨床心理士会の調査によると、臨床心理士の活動分野は医療・保健が33%と最多で、教育が25%、大学・研究所が18%、福祉が14%。自殺やうつなど心の健康問題を抱える産業・労働分野も4%を占めています。
2017年4月現在で34,500名超の「臨床心理士」が認定されています。その中で医師免許所有者数は573名です。
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臨床心理士になるには、日本臨床心理士資格認定協会の資格試験に合格することが必須要件となります。ただし資格試験を受けるためには、あらかじめ臨床心理士養成に関する指定大学院または専門職大学院の修了を基本モデルとする「受験資格」の取得が必要になります。
※臨床心理士受験資格に関する指定大学院・専門職大学院一覧
※国家資格の「公認心理師法案」が成立し、新資格が誕生しました。新国家資格「公認心理師」は、現在の臨床心理士と受験資格その他が似ていることもあって、「公認心理師」は民間資格の臨床心理士が格上げされるのではないか、という噂もあるようですが果たしてどのようになるのか・・・。「公認心理師」の資格条件や資格の難易度などの詳しい情報は「公認心理師」で確認できます。 |
試験の合格率・難易度 | ●難易度
「C」 やや易
【資格の難易度レベル】
臨床心理士資格試験の試験に合格するには、かなりの知識や経験が必要ですが、試験自体の難易度はそれほど高くありません。1次試験はマークシート方式の選択問題で、他に小論文の試験があります。マークシート方式の試験は全部で100問。臨床心理学と心理学全般から出題されます。試験のポイントは、暗記でカバーできる単なる専門知識よりも、臨床実践において生きた総合的な知識が身についているかが問われますので、単に知識や技術を学ぶだけでなく、それを実習等の臨床実践体験に照らしながら生きたものとして学ぶように、日頃から心掛けておくことが大切です。
また、小論文は1000字から1200字程度で、約90分で書き上げないといけません。簡潔で論理的に内容を表現すること以外に、必ず求められた字数制限内で内容をまとめることが大切です。
さらに、2次試験の面接試験では、今まで学んだ事や臨床経験、臨床心理士としての自分の将来像、資格を取る事の意味などが問われます。当然、日頃から臨床実践での備えをしておくことが大切ですが、この二次試験は臨床心理士になるための資格審査試験のなかでも、とくに専門性の面から重要な位置にあると言えます。試験の傾向として、受験資格のハードルが高いため、合格率も高くなっている傾向があります。
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●合格率
令和2年度臨床心理士資格試験結果
受験者数 1,789名 合格者数1,184名 最終合格率64.2%
合格者累計 38,397名
※参考データ 試験結果
・令和元年度臨床心理士資格試験結果
受験者数 2,133名 合格者数1,337名 最終合格率62.7%
合格者累計 37,249名
・平成30年度臨床心理士資格試験結果
受験者数 2,214名 合格者数1,408名 最終合格率63.6%
・平成29年度臨床心理士資格試験結果
受験者数 2,427名 合格者数1,590名 最終合格率65.5%
・平成27年度臨床心理士資格試験結果
一次試験受験者 2,812名 一次試験合格者 1,768名
二次試験合格者 1,601名 最終合格率61.8%
・平成26年度臨床心理士資格試験結果
一次試験受験者 2,812名 一次試験合格者 1,768名
二次試験合格者 1,610名 最終合格率60.4% |
試験の内容・勉強法 | 臨床心理士になるための最初のステップは、日本臨床心理士資格認定協会の指定する指定大学院の入学試験を受けるところから始まります。
入試の方法は大きく一般入試と社会人入試の2つの方式があり、試験の内容も大きく異なっています。特に社会人の方は、どちらの方式で臨床心理士指定校の合格を目指すのかをまず最初に決めなければなりません。
一般入試の受験資格は、学士号(大学卒業資格)取得者で、試験科目は英語・専門論文(心理学・臨床心理学)・書類(研究計画書・志望理由書)・面接になります。また、社会人入試の受験資格は、学士号(大学卒業資格)取得者かつ、社会人経験3年以上が概ね一般的です。試験科目は、書類(研究計画書・志望理由書)・面接・筆記試験(大学院によっては無し)です。 入試は毎年秋期試験と春期試験があり、入学時期は全て4月となります。
入学試験科目については、2種類の科目試験があります。1つは筆記試験ですが、筆記試験は英語と専門科目の2科目です。もう一つは「研究計画書」の提出です。研究計画書は、自分が臨床心理士として、どのようなことを学習していくのかということを書いて、願書の提出時に願書とともに事前に提出する書類です。
入学試験では、この他にも面接が行われ、面接のときに、その研究計画書についての質問が行われることがあります。 また、入試のパターンでは、英語と専門試験の得点を同等に評価する大学院や、英語の得点を重視する大学院など試験科目の比重の置き方に大学院ごとの違いがありますので、その辺も事前に情報収集しておかねばなりません。
このように、指定大学院入試の難易度は、その指定が1種か2種かは関係なく、学校によって大きく違い、指定大学院に入学することは決して簡単なことではないことを認識しておかねばなりません。従って、臨床心理士資格試験はこの受験資格を有していないと受験することすらできないことから、指定大学院の教育レベルも合格率にとって重要なポイントになってくることが考えられます。結局、臨床心理士の受験会場にたどり着くまでにかなりのふるいにかけられていることを念頭おかねばならないことがわかります。
臨床心理士の人気が高まるにつれ、指定大学院の数も年々増加していますが、定員の割合に対する受験者数が多く倍率も高いため、指定大学院入試が難関になってきています。
例年約3,000人程度の人が臨床心理士資格試験を受験し、1,800人前後が臨床心理士の資格を取得していますが、資格取得者は、平均的に教育関係に従事している女性が多いようです。
資格取得者は、文部科学省の任用するスクールカウンセラーや、家庭教育カウンセラーを始め、病院や福祉機関などで活躍しています。社会貢献度も高く、ニーズも非常に高い資格です。
臨床心理士は、大学の先生や精神科の医師と並んでスクールカウンセラーの資格要件としてあげられる、いわばカウンセリング系資格の最高峰とされています。文部省がスクールカウンセラー配置基準を設け、小学、中学、高校に「心の専門家」として臨床心理士をスクールカウンセラーとして全国に配置したことや、今後の認知症患者の増加による高齢福祉現場での需要を考えると、ますます臨床心理士の活躍の舞台は増えていくことは間違いありません。カウンセリング系に関心のある人や仕事に就きたい人は、臨床心理士受験資格が得られる進学先を選ぶと良いでしょう。 |