資格の概要 | 基本情報技術者試験は経済産業省が行う情報処理技術者試験の一つで、新試験制度のスキルレベル1~4のうちレベル2に相当します。ちなみにレベル1は入門レベルのITパスポート試験、レベル3は応用情報技術者試験で、レベル4は各専門分野の高度情報処理技術者試験(9試験)になります。この試験は2009年春期試験から開始された試験で、数あるコンピュータ関連の資格試験の中で最も受験者数が多い経済産業省が認定する国家資格です。ITエンジニアが最低限身に付けておくべき知識をひと通り学べることから、学生や新入社員が多く受験しています。まさにプロとしての第一歩を記す資格といえるでしょう。
基本情報技術者試験は、システム開発プロジェクトでプログラム設計書を作成し、プログラム開発を行い、単体テストまでの一連のプロセスを担当するプログラマやシステムエンジニアの基本的知識レベルの認定試験と位置づけられていて、システム開発会社においては技術者の必須資格になっています。IT関連の技術者をめざして、その専門性を高めたり、フリーへの転身をはかる上での土台となる資格です。また採用の際、基本情報技術者の資格を提示することで、最低限の情報システムの知識を持つ証明になります。テクノロジ系だけでなくマネジメント系、ストラテジ系などの幅広い知識が問われる試験であるため、一般企業の情報システム部門においても高く評価されている資格試験です。
【基本情報技術者試験が2023年から変わりました】
試験の主な変更点は以下の5点ですが、変更によって受験対策等が変わるところなどもありますので注意が必要です。
このページでは、ページの記載内容を変更後の新試験の内容に変えて掲載しております。
◆基本情報技術者試験の変更点◆
①春期・秋期試験から「通年試験」に変更
②採点方式が素点方式から「IRT方式」に変更
③午前試験・午後試験が「科目A試験・科目B試験」に変更
④「試験時間」・「出題形式」・「問題数の変更」
⑤「出題範囲」の変更
※以後のページでは、基本情報技術者試験にチャレンジを考えている方のために、2023年から基本情報技術者試験がどのように変わるかを解説しています。
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◆基本情報技術者試験関連の情報
・2023年4月から通年試験(CBT)となります。それに伴い、試験内容、試験時間も以下のように変更になります。
・2020年から情報セキュリティマネジメント試験、基本情報技術者試験は、試験方式がCBT(Computer Based Testing)方式に変わりました。
・2020年春、IPA(情報処理推進機構)は運営する国家試験「基本情報技術者試験」で選択できるプログラミング言語からCOBOLをなくして、Pythonを新たに採用しました。
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試験方式 | 【2023年4月以降】
●試験方式
試験は「科目A」として以下の①が、「科目B」として以下の②がそれぞれCBT試験方式で行われます。
・午前試験
①「科目A」:多肢選択式(四肢択一) 60問出題。試験時間90分。(出題60問→解答60問必須)
・午後試験
②「科目B」:多肢選択式 20問出題。試験時間100分。(出題 大問20問→解答20問必須)
旧午前試験は試験時間が150分で80問出題でしたが、科目A試験では90分、60問出題になりますので時間当たりに解かねばならない問題数が増えるため、今まで以上に早く回答しなければならないことになります。一方、旧午後試験では試験時間150分で11題の大問のうち5題を選択して回答する形式だったのに対して、科目B試験は時間100分で小問20問出題を全ての問題に回答することになりますので、選択問題がなくなり、時間配分も変わることで要注意です。
●合格基準
科目A (配点)1000点満点 (基準点)科目評価点:600点/1000点満点
科目B (配点)1000点満点 (基準点)科目評価点:600点/1000点満点
科目A、科目Bの両方とも1,000点満点中600点以上を得点することで合格となります。採点はIRT(項目応答理論)方式で行われますので、1問何点という配点は公開されていません。
※IRT(項目応答理論)方式は、問題の難易度や他の周りの回答者と比較することで問題ごとに点数調整が行われる採点方法です。主に採点の公平性を保つことを目的に使われます。
●免除試験制度
※IPAの認定を受けた講座を受講すると1年間午前試験が免除になる「午前試験免除制度」は、「科目A試験免除制度」として継続されます。➡ 免除制度の概要
科目A試験免除制度
・免除試験(午前試験と同じ内容)に合格すれば、その後1年間これが有効になり、本試験は午後試験のみ受験すれば良いという免除制度。
2023年4月に通年試験となった後は、受講後1年間の中で行う受験において何回でも午前免除の申請ができることになります。 |
試験科目 | 【2023年4月以降】
午前試験
●科目A(四肢択一の多肢選択式 90分/60問) ※知識を問う問題
・テクノロジー系:基礎理論、コンピュータシステム、技術要素、開発技術
・マネジメント系:プロジェクトマネジメント、サービスマネジメント
・ストラテジ系:システム戦略、経営戦略、企業と法務
※「科目A」試験の出題範囲は旧午前試験と変わりありません。
午後試験
●科目B(多肢選択式 100分/20問) ※技能を問う問題
・プログラミング全般に関すること
実装するプログラミングの要求仕様の把握、その他
・プログラムの処理の実装に関すること
型、変数、配列、代入、算術演算、比較演算、その他
・データ構造及びアルゴリズムに関すること
再帰、スタック、キュー、木構造、グラフ、連結リスト、その他
・情報セキュリティの確保に関すること
情報セキュリティ要求事項の提示、マルウエアからの保護、その他
※「科目B」試験は、旧午後試験から出題範囲が変更されます。
2023年からの科目Bでは、「情報セキュリティ」と「データ構造およびアルゴリズム」を中心とした小問20問が出題されます。試験要綱を見ると、この内訳が20問のうち「アルゴリズムとプログラミング」分野が16問、情報セキュリティ分野が4問とされています。また、プログラミングに関する問題では、プログラミング言語の選択はなくなり、疑似言語により普遍的・本質的なプログラミング的思考能力を問う問題が出題されます。これをみると、科目B試験がほぼプログラミング問題になるなど、プログラミング能力を重視した試験形式に戻っています。
このことから「科目B」の試験対策では、旧試験対策のような幅広い勉強は必要でなく、「情報セキュリティ」と「データ構造およびアルゴリズム」に絞って勉強すれば良いと言えます。 |
資格難易度 | ●難易度
「B-上」 普通の上位
【資格の難易度レベル】
◆【2023年4月以降】
合格率が令和2年秋期以降、大幅にアップしており、近年では平均40%程度になっています。令和2年秋期以前は平均で25.5%前後だったので急激な変化と言えます。デジタル庁の発足と同時期であったことと関係があるのかどうか・・。
基本情報技術者試験の受験にはある程度の情報処理の基礎知識は必要ですが、試験としては初~中級向けの試験と考えてよいでしょう。実務経験はなくても基礎知識をある程度持っている(情報系の大学卒)人なら、独学で1ヵ月間集中して勉強すれば合格できるレベルです。特に情報系大学で講義を受けた人なら午後試験は特に準備をしなくても良いくらいでしょう。試験ではプログラミングにおけるアルゴリズムやソフトウェアに関する知識が試験の合否を分けるカギになります。あと、時間的にギリギリになることが多いので時間配分にも注意が必要です。独学でも合格は可能ですが、全くの初心者の方の場合はスクールか通信講座を利用する方が良いでしょう。
情報処理システムの開発、運用、利用に関する幅広い知識が問われ、論理的思考能力が必要なことから、試験の難易度も高いですが、問題は情報処理に関する基本的な知識が主なので、きちんとした勉強と受験対策を怠らなければ、高校在学時でも十分に合格できる試験です。ただ、初心者の場合や理数系が苦手な人の場合でも、最低限、高校1~2年レベルの代数・関数の知識は必要不可欠です。式と変数、ベクトル、行列、数列などの専門用語は、さらにまだその先にあることを知っておくことが必要です。
(参考) 「情報処理技術者試験の難易度」を参照ください。
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●合格率
・令和4年度基本情報技術者試験結果
受験者数101,620名 合格者数38,033名 合格率37.4%
・令和3年度秋期基本情報技術者試験結果
受験者数52,879名 合格者数21,190名 合格率40.1%
・令和3年度春期基本情報技術者試験結果
受験者数32,549名 合格者数13,544名 合格率41.6%
・令和3年度1月(CBT受験)基本情報技術者試験結果
受験者数8,519名 合格者数4,934名 合格率57.9%
・令和3年度2月(CBT受験)基本情報技術者試験結果
受験者数14,568名 合格者数7,356名 合格率50.5%
・令和2年度秋期基本情報技術者試験結果
受験者数52,993名 合格者数25,499名 合格率48.1%
・令和元年度秋期基本情報技術者試験結果
受験者数66,870名 合格者数19,069名 合格率28.5%
・平成30年度秋期基本情報技術者試験結果
受験者数60,004名 合格者数13,723名 合格率22.9%
・平成30年度春期基本情報技術者試験結果
受験者数51,377名 合格者数14,829名 合格率28.9%
・平成29年度秋期基本情報技術者試験結果
受験者数56,377名 合格者数12,313名 合格率21.8%
・平成29年度春期基本情報技術者試験結果
受験者数48,875名 合格者数10,975名 合格率22.5% |
受験対策・資格の将来性 | ◆2023年4月以降の試験対策について
基本情報技術者試験はスキルレベル2に相当する試験で、出題範囲は広いですが、すでに情報処理技術者としての知識を身につけている人であれば、問題の難易度が高すぎるということはないと思います。ただ、当然のことながら基本になる情報処理の知識がある人とない人で、その難易度は大きく変わります。情報系の学校出身者や、IT業界で働いている人、ITパスポート試験の合格者などの場合は、1日2時間で約1ヵ月、50時間程度の勉強ができれば、基本情報技術者試験の合格は可能だと思います。一方、文系の学校の出身者や情報系の資格を取得するのがはじめての方などで、情報処理の基本知識がほとんどない方の場合には、基本情報技術者試験の出題範囲を全て勉強し習得しなければならないので膨大な勉強量になります。合格には200時間以上の勉強が必要とされ、1日2~3時間の勉強時間で最低2~3か月は必要となると思います。具体的な勉強方法は、以下を参考にしてください。
・「科目A」試験
科目Aについては、旧午前試験対策と出題範囲は変わりませんので、従来の勉強で得た知識はそのまま活用することができます。試験で多くの問題が過去問題からの出題が多いため、少し基礎知識のある人なら「ひたすら過去問を解いて覚える」という過去問主体の勉強法で突破できると思います。午前対策では絶対に「過去問」が大事ですが、過去問だけでなく公開模試なども毎日の隙間時間などを通して、できるだけ多くの問題を解いておくことが重要です。
・「科目B」試験
「科目B」試験では、旧午後試験で必須問題であった「情報セキュリティ」と「データ構造およびアルゴリズム」の科目内容になるため、これらについて勉強したことはそのまま活用できますが、「情報セキュリティ」と「データ構造およびアルゴリズム」以外の旧午後試験対策として勉強した知識については、この試験で活用できる可能性はほとんどなくなるでしょう。身に付いた知識が無駄になることはありませんが、「科目B」試験対策として考えた場合には、新たに「情報セキュリティ」と「データ構造およびアルゴリズム」を中心に勉強を進める方がと良いと思いますが、過去問がありませんのでIPAが公開しているサンプル問題などで傾向を分析し、他の問題集で勉強して慣れておく練習をしておくといいと思います。
この試験はふるい落としをかける試験ではありませんので、意地の悪い問題や引っ掛け問題などは出題されません。それより過去問や類似した問題がそのまま出題されますので、大事なのは最後までテキストをしっかりやっておくことです。
新試験の出題範囲は旧試験から大きく変更があったため、2023年からの試験対策では、2022年までに出版されたテキストには使えるものと使えないものがあります。ただ、2022年以前のテキストの中でも午前試験対策の内容や、午後試験の「情報セキュリティ」と「データ構造およびアルゴリズム」に関する部分は、2023年からの試験対策にもそのまま使えます。ただ、午後試験のアルゴリズムに関しては、個別の言語の知識ではなく、基本的なプログラミング的思考に関する部分は勉強に役立てられます。
受験者の年齢層は10代半ばから50歳代と幅広いですが、学生や経験年数の浅い(4年未満)エンジニアの受験者が多く、他の情報処理技術者試験に比べて年齢が2~3歳ほど若いようです。また、層別では情報系の大学生、専門学校生のいる19~21歳と、主にシステム開発会社の新入社員のいる22~25歳が多いようです。 |