資格の概要 | 建築士は、主に建築物の設計および工事の監理を行います。設計は建物や内装のデザイン以外にも、安全性や耐震性などを考慮した構造設計や電気や空調などの設備設計なども行います。
建築士には、一級建築士、二級建築士、木造建築士の3種類の資格があり、建築士法によって設計・工事監理ができる範囲が定められています。一級は延べ面積500㎡を超える学校、病院など、大型のビル・マンションを含むすべての建物の設計と工事監理が可能となります。二級は木造建物と比較的小さな鉄筋コンクリート造の建物、木造建築士は2階建てまでの木造建物が対象範囲です。
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建築士になるには建築学科を卒業することが近道です。一級建築士の場合は実務経験も必要です。そのため、建設会社、住宅メーカー、設計事務所、工務店などで働きながら、建築士の資格取得を目指すことになります。
建築士の資格を取得するためには試験合格後に登録申請をして、二級・木造は都道府県知事、一級は国土交通大臣の免許を受けます。それぞれの試験の受験資格は、建築に関する学歴と実務経験年数によって決まります(受験資格の欄を参照)。
一級建築士になれば、自ら設計事務所や建築士事務所を開業する道が開けます。ただ、資格取得後は、建築会社や設計事務所などに所属して、キャリアを積む人がほとんどです。二級や木造建築士でも独立は可能ですが、建築できる建物に制限があるため、独立を目指すなら一級を取得するのがベストです。二級の場合は専門学校で2年間学べば受験資格が得られますので、就・転職への第一歩としてもおすすめです。
◆ 建築士資格関連情報
【改正建築法の施行】
2020年3月1日に施行された改正建築士法の目的は若い受験者の数を増やし、継続的かつ安定的に建築士人材を確保することでした。
改正によって、
①受験制度の見直しで実務経験がなくても受験できるようになりました。
②実務経験の対象実務の見直しで実務の範囲が拡大、資格の幅が広がりました。
③学科試験免除制度の見直しで学科試験合格の有効期限が5年に延長されました。
その他、詳しい内容はこちらを参照ください。
➡ 建築士試験の受験資格が変わりました。 |
試験方式 | 試験は学科試験と設計製図試験で構成されています。学科試験に合格すると設計製図試験に進むことができます。学科試験の法規の科目については法令集の持ち込みが可能です。
●一級建築士
【学科試験】筆記試験
試験方式:四肢択一のマークシート方式
問題数:合計125問/6時間30分
科目数:学科Ⅰ~Ⅴの5科目(出題:Ⅰ・Ⅱ各20問、Ⅲ~Ⅳ各30問、Ⅴ25問)
【設計製図】図面の作成
1課題/6時間30分(事前の公示課題で設計製図を行います)
●二級建築士・木造建築士
【学科試験】筆記試験
試験方式:五肢択一のマークシート方式
問題数:合計100問/6時間
科目数:学科Ⅰ~Ⅲの4科目 100問
【設計製図】図面の作成
1課題/5時間(事前の公示課題で設計製図を行います)
◇免除
・設計製図試験が不合格の場合は、翌年・翌々年の2年間(2回)に限り本人の申請で学科試験が免除されます。試験は学科試験が免除されます。
◇合格基準
・一級建築士
学科試験:各科目とも50%超、かつ全体で72%以上の得点
※125点満点中、おおよそ87~92点以上の正答が必要
設計製図試験:Ⅰ~Ⅳの4段階評価のⅠ(上位40%程度)
※一級建築士としての「建築物の設計に必要な基本的かつ総括的な知識及び技能」を有することを認められた者
・二級建築士・木造建築士
学科試験:各科目とも50%超、かつ全体で60%以上の得点
※100満点中、おおよそ58~60点以上の正答が必要
設計製図試験:Ⅰ~Ⅳの4段階評価のⅠ(上位60%程度)
※二級建築士・木造建築士としての「建築物の設計に必要な基本的かつ総括的な知識及び技能」を有することを認められた者 |
資格難易度 | ●難易度
一級建築士 「A」 難関
二級建築士/木造建築士 「B」 普通
【資格の難易度レベル】
一級建築士は最終合格率が10%前後で、学科試験では70点を取っても落ちることもあるほどの難関試験であり、資格取得者も少ないです。難易度ランクで言えば不動産鑑定士とそれほど変わらないレベルの建築系の最高峰資格です。
建築士は独学で勉強する人が少ない代表的な資格ですが、大学の建築学科の出身者であれば、指定科目をひと通りは履修していますので、学科試験なら市販の参考書や問題集を使いながら独学で合格することも可能です。建築学科以外の人でも、ある程度建築の素養があれば、学科試験に関しては独学での合格は可能でしょう。
ただ、設計製図試験については、正確に素早くきれいに描くといった技能の要素が必要になり、慣れやトレーニングによって大きな差が出てくること、また図面試験特有の書き方やコツがあり、自分で合格レベルを確かめることができないことなどで、どうしても独学には向きません。スクールに通うことで先生の指導を受けながら勉強するのが効率的です。
二級・一級の取得者は「土地家屋調査士」の平面測量・作図試験が免除になるほか、一級取得者は「建築施工管理技士」の学科試験や「弁理士」の論文試験の選択科目(理工Ⅰ)が免除になるなどの特典もあります。
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●合格率
・令和3年度(一級)建築士試験結果 総合最終結果 合格率9.9%
(学科試験)合格率15.2%(実受験者数31,696名 合格者数4,832名)
(設計製図)合格率35.9%(実受験者数10,499名 合格者数3,765名)
・令和3年度(二級)建築士試験結果 総合最終結果 合格率23.6%
(学科試験)合格率41.9%(実受験者数19,596名 合格者数8,219名)
(設計製図)合格率48.6%(実受験者数11,450名 合格者数5,559名)
・令和3年度木造建築士試験結果 総合最終結果 合格率33.0%
(学科試験)合格率49.9% (実受験者数706名 合格者数352名)
(設計製図)合格率67.7% (実受験者数356名 合格者数241名)
・令和2年度(一級)建築士試験結果 総合最終結果 合格率10.6%
(学科試験)合格率20.7%(実受験者数30,409名 合格者数6,295名)
(設計製図)合格率34.4%(実受験者数11,035名 合格者数3,796名)
・令和2年度(二級)建築士試験結果 総合最終結果 合格率26.4%
(学科試験)合格率41.4%(実受験者数18,258名 合格者数7,565名)
(設計製図)合格率53.1%(実受験者数11,253名 合格者数5,979名)
・令和2年度木造建築士試験結果 総合最終結果 合格率37.8%
(学科試験)合格率53.0% (実受験者数589名 合格者数312名)
(設計製図)合格率72.1% (実受験者数337名 合格者数243名)
・令和元年度(一級)建築士試験結果 総合最終結果 合格率12.0%
(学科試験)合格率22.8%(実受験者数25,132名 合格者数5,729名)
(設計製図)合格率35.2%(実受験者数10,151名 合格者数3,571名)
・令和元年度(二級)建築士試験結果 総合最終結果 合格率22.2%
(学科試験)合格率42.0%(実受験者数19,389名 合格者数8,143名)
(設計製図)合格率54.9%(実受験者数10,884名 合格者数5,037名)
・令和元年度木造建築士試験結果 総合最終結果 合格率33.3%
(学科試験)合格率56.1% (実受験者数595名 合格者数334名)
(設計製図)合格率59.4% (実受験者数357名 合格者数212名)
・平成30年度(一級)建築士試験結果 総合最終結果 合格率12.5%
(学科試験)合格率18.3%(実受験者数25,878名 合格者数4,742名)
(設計製図)合格率41.4%(実受験者数9,251名 合格者数3,827名)
・平成30年度(二級)建築士試験結果 総合最終結果 合格率25.5%
(学科試験)合格率37.7%(実受験者数19,557名 合格者数7,366名)
(設計製図)合格率54.9%(実受験者数10,920名 合格者数5,997名)
・平成30年度木造建築士試験結果 総合最終結果 合格率35.8%
(学科試験)合格率57.4% (実受験者数544名 合格者数312名)
(設計製図)合格率64.9% (実受験者数316名 合格者数205名)
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受験対策・資格の将来性 | 一級建築士の勉強時間は初学者の場合には、目安で1,000~1,500時間、期間約2年、費用は90~130万円ほどかかります。実務経験者なら500~1,000時間、期間は約1年です。設計製図試験の学習では建築物が十分な機能と耐久性・安全性をもつように設計する必要があり、高度な専門知識と技術が要求されることになります。このあたりの独学では難しい勉強をスクールで先生の指導を受けながら勉強することが必要になります。
二級建築士の場合は一級ほど難易度は高くなく、実務経験者なら3~4ヶ月,初学者でも800~1,000時間くらい勉強すれば合格ラインには入れます。学科試験はほぼ出題傾向が決まっているので、傾向に沿った学習を繰り返せば大丈夫です。
受験生は設計事務所等、建設業務に携わっている人が多く、国家資格の中では比較的独立しやすい資格です。一級の受験には一定の実務経験が必要となるため、まずは建築事務所や設計事務所に就職するのが一般的です。二級・木造でも独立は可能ですが、建築できる建物に制限があるため、独立を目指すなら一級を取得するのがベストです。二級なら専門学校で2年間学べば一級の受験資格が得られるので、就・転職への第一歩としてもおすすめです。
就職先としてはゼネコン、設計事務所、など建築関係全般です。一級建築士で就職に困るという事はまずありません。いろんな実務経験があった方が就職、転職はしやすいようです。独立自体は二級建築士でも可能ですが、やはりネームバリュー、顧客の信頼を考えて一級を取得しておいた方が何かと都合が良いのは当然です。建築物の大規模化、機能や設備の複雑化に伴い活躍の場は広がります。
建築士の主な職場は建築士事務所ですが、建築士として3年以上の経験を積んだ後、所定の講習を受けて「管理建築士」となれば独立開業も可能です。
「管理建築士」について
建築士事務所を管理する建築士を「管理建築士」と言います。管理建築士になるためには、建築士として3年以上の設計や、その他の国土交通省令で定める業務に従事した後、国土交通大臣の登録を受けた機関が行う管理建築士講習を修了しなければなりません。講習は1日の講習(講義5時間と修了考査1時間)が行われます。
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