資格の概要 | 不動産の鑑定評価に関する法律に基づき制定された国家資格であり、土地価格や周辺交通等の環境面や、土地や建物に関連する法律面の諸条件を考慮して、住宅やマンションといった不動産価値の鑑定をおこない、適正価格を決定する専門家です。また、不動産鑑定評価は不動産鑑定士の独占業務であり、不動産鑑定士以外の者が不動産の鑑定評価を行うことは法律で禁じられています。国土交通省に備える不動産鑑定士名簿に登録されます。
不動産鑑定士の業務は、主に不動産鑑定業務とコンサルティング業務があげられます。不動産鑑定業務は、定期的な鑑定評価に、国や都道府県が行う地価公示や 都道府県地価調査、相続税・固定資産税標準地の評価があります。そのほかにも公共用地の買収評価や裁判上の評価なども行います。また、コンサルティング業務としては、不動産の専門家として、不動産の最も有効な活用方法や相続税のアドバイスなどを個人や企業を対象に行います。不動産鑑定士となるためには国土交通省土地鑑定委員会が実施する国家試験に合格しなければなりません。試験は、短答式試験及び論文式試験の2回の試験が行われます。短答式試験に合格した場合、以後2年間の短答式試験が免除され論文式試験を受けることができます。
国家試験合格後、国土交通大臣の登録を受けた実務修習機関(公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会)が主催する「実務修習」を受けることができます。実務修習期間は、1年、2年、3年の3種類(コース)があります。
実務修習は(1)講義、(2)基本演習、(3)実地演習の3単元で構成され、各単元とも修得確認が必要です。修得確認を取得できない場合には再受習となります。この3単元全ての修得が確認されれば、修了考査を受けることができます。
修了考査は「小論文」と「実地演習の事案に対する口頭試問」です。修了考査で修了確認されれば、国土交通大臣の修了の確認手続後、不動産鑑定士として登録されます。
※修了考査の合格率
・平成25年 受験者数176名 合格者数156名 合格率88.6%
・平成26年 受験者数146名 合格者数128名 合格率87.7%
・平成27年 受験者数148名 合格者数136名 合格率91.9%
※不動産鑑定士の資格を取得後、主な勤務先としては不動産鑑定事務所や不動産業界、その他信託銀行などもあります。また、年収はピンキリですが、独立後は比較的高収入を得ている人が多い資格のひとつであることは間違いありません。尚、不動産の鑑定評価に関する法律の改正により、不動産鑑定士補の資格は廃止されています。
◆不動産鑑定士資格関連情報
・平成29年の不動産鑑定士試験から、民法・経済学・会計学について必要な見直しを行うことになっていましたが、見直しについての検討の結果、学生等の特定の受験者が不利となる要素は少ないと考えられるため、現行の出題内容を基本的には継続することとなりました。
・「不動産コンサルティング技能登録者」の新名称が「公認 不動産コンサルティングマスター」になりました。また、新名称決定と同時に受験資格が拡大され、これまでの対象であった宅地建物取引主任者、不動産鑑定士に加え、一級建築士の資格保有者の方も受験できるようになりました。
|
資格難易度 | ●難易度
「A-上」 難関の最上位
【資格の難易度レベル】
司法試験(裁判官、検察官、弁護士)、公認会計士とならび三大難関国家試験の一つといわれる。試験の難易度はものすごく高く、独学での突破はほとんど無理。難易度レベルは「S」と変わらないほどの難関試験です。このサイトでは不動産鑑定士の難易度を「A」(難関)としていますが、難易度は国家試験の中でもトップクラスであり、レベルとしては「S」(超難関)にランクしてもおかしくないと思っています。試験は1次の短答式試験より2次の論文式試験の方が、はるかに難易度が高く、多くの受験生が論文式試験で不合格になります。資格取得まではかなりの勉強時間が必要で、最低1500~2000時間は必要と言われますが、これには個人差があります。論文式という試験の性質上、普段の学習でも答案作成の練習を十分にする必要があります。文章を書くのが苦手な人はこの作業に時間を大きく費やすことになりますが、文章を書くことに苦手意識がなければ、平日は3~4時間程度、休日は8時間程度、勉強期間1年程度で目標達成は可能です。過去の例からも、一発で合格する確率は非常に低く、最低2~3回の受験の覚悟は必要でしょう。
--------------------------------------------
●合格率
令和3年不動産鑑定士試験 短答式試験結果
短答式試験 合格率 36.3%
申込者数2,367名 受験者数1,709名 合格者数621名
論文式試験 合格率 16.7%
申込者数1,295人 受験者数809名 合格者数135名
※合格基準:得点380点以上を取得した者
※参考データ
・令和2年不動産鑑定士試験 短答式試験結果
短答式試験 合格率 33.1%
申込者数2,091名 受験者数1,415名 合格者数468名
論文式試験 合格率 17.7%
申込者数1,160人 受験者数764名 合格者数135名
・令和元年不動産鑑定士試験 短答式試験結果
短答式試験 合格率 32.4%
申込者数2,262名 受験者数1,767名 合格者数573名
論文式試験 合格率 14.9%
申込者数1,276人 受験者数810名 合格者数121名
・平成30年不動産鑑定士試験 短答式試験結果
短答式試験 合格率 33.4%
申込者数2,273名 受験者数1,751名 合格者数584名
論文式試験 合格率 14.8%
申込者数1,268人 受験者数789名 合格者数117名
・平成29年不動産鑑定士試験 短答式試験結果
短答式試験 合格率 32.5% 申込者数2,126名 受験者数1,613名 合格者数524名
※合格基準:総得点の 67.5%以上を取得した者
※合格者の平均年齢は38.6歳、最高齢は85歳、最年少は20歳でした。
・平成29年不動産鑑定士試験 論文式試験結果
論文式試験 合格率 14.5% 申込者数1,150名 受験者数733名 合格者数106名
|
受験対策・資格の将来性 | 論文試験に対応するためには、膨大な量の専門的知識が必要です。この専門的知識を独学で習得するのは容易でありませんので、実績ある予備校で試験範囲を絞ってもらい、難解な専門的知識をわかり易く教えてもらうのがベストな方法です。
論文式試験は、民法(配点100点)、会計学(配点100点)、経済学(配点100点)、鑑定理論(論文、配点200点)、鑑定理論(演習、配点100点)で実施されます。配点からも明らかなように試験対策は、鑑定理論を中心として準備することになります。具体的には、過去問を十分に分析し、研究するところから始めることになります。
このように、合格するには、長期にわたって勉強に専念できる環境が必要なため仕事を辞めて専門学校に通い受験する人が多いようです。費用も50万円以上必要になります。
試験に合格しても、試験合格後に実施される実務修習期間から資格取得まで、最短でも1年半程度はかかるため、不動産鑑定士試験の勉強期間や受験期間まで含めて考えると、費やす時間は数年越しにも渡ることになり、資格取得まで一筋縄ではいかない、すべてに難しい資格といえます。
ただ、不動産鑑定事務所には企業や個人からの鑑定依頼があるだけでなく、地価公示や地価調査、公共用他の買収、裁判上の争いなどに伴って、国や自治体などからも仕事を委託されます。そのため、独立後も安定収入を確保できる魅力があります。2日で完了する仕事でも10万円程度と、高収入が見込めます。資格手当として受け取る場合は、平均で12万円程度あり、資格取得者の平均年齢は30代前半です。また女性はおよそ1~2割です。累計登録者数 約7000人。
不動産鑑定士の資格取得を目指して勉強を始める人は、不動産鑑定士試験の勉強必要時間が1600時間位と決めて、自分の知識のレベルに合わせてスタート時期を決めると良いでしょう。
この仕事にはフッ トワークのよさが必要です。不動産鑑定士は他のあらゆるジャンルとの融合をしながら成長していく将来性のある資格です。特に、金融業界とのつながりが深くなるため、かなり高額の収入を得ることが可能になります。
不動産鑑定士は難関の国家資格ですが、一度資格を取得すると景気の好不況に左右されず、一生続けられる仕事です。資格取得者は信託銀行など、金融機関に多かったのですが、最近は資格取得後に不動産鑑定事務所やコンサルティング会社などに転職する人も増えているようです。
一般的には、不動産会社や建設会社、金融機関など、不動産取引に携わる企業の社内鑑定士として働くほか、個人あるいは複数のメンバーで鑑定事務所や専門コンサルティング会社を運営する独立系鑑定士の道などがあります。
また不動産鑑定士は、鑑定士補の資格所有者を合わせても登録されている人数が1万人に満たない難関資格であるため、希少価値のある狙い目の資格でもあり、この資格を取得して就職に困るといった事はまずありません。就職先情報は日本不動産鑑定協会に掲載されていますので条件などを参考に探すことができます、また住宅新報社の月刊不動産鑑定にもいろいろと掲載されています。
将来的には不動産業界のほか、金融や流通、コンサルティング分野などでも広く活躍できる将来性豊かな資格として扱われることになると思います。資格取得にチャレンジする場合は、年齢的には当然、若いほど良いので、後々の事も考え30前後には取得しておきたいところです。実際、合格者は20代後半~40代くらいまでが一番多くなっています。また、結構、パソコンの能力が必要な資格であることも留意が必要です。
今後10年以内くらいに不動産鑑定業界は人手不足になる可能性があります。それは、現在、主力となり活躍されている60代の不動産鑑定士が徐々に引退される年齢に差し掛かっているためです。
一方で、不動産鑑定士は試験に合格したら直ぐに開業できる資格ではありませんので、これから数年以内に合格して10年後に独立というような長期的な展望を持てる方にとっては有望な資格と言えるでしょう。 |