資格の概要 | 「情報処理安全確保支援士」は、サイバーセキュリティに関する国家資格で、平成29年に新設された新しい士業で、現在もその認知度や人気が高まっています。この資格は、情報セキュリティに関する高度な知識・技能を有し、組織の情報セキュリティを総合的に確保・向上させるために必要な能力を備えた人材を対象としています。
税理士などと異なり独占業務はありませんが、サイバーセキュリティに関する専門的な知識・技能を持つ者として経済産業省の認定を受けています。また、この資格は中小企業診断士や税理士などと同様に、試験を受けて合格してはじめて「情報処理安全確保支援士」として登録ができて、ようやく情報処理安全確保支援士と名乗れて関連する仕事をするようになります。この分野で士業をうたえる国家資格は情報処理安全確保支援士が初めてです。また、資格を維持するためには法定の講習を受けて合格後も知識をアップデートしていく必要があることも特徴です。
資格維持には、IPAが実施するサイバーセキュリティに関する有料講習を受講する義務があり、3年のサイクルで講習の受講を継続しなくてはなりません。
取得後は、セキュリティ分野のスペシャリストとして、IT企業はもちろん、一般企業の情報セキュリティ担当として活躍できますが、CSIRT(Computer Security Incident Response Team:サイバーセキュリティの専門チーム)を設置している企業では、そこに在籍することが多くなります。
◆「情報処理安全確保支援士」資格関連の情報
・情報処理安全確保支援士試験は、2022年度までは午後試験はⅠとⅡに分かれており、Ⅰはセキュリティ対策の企画・立案・実施に関する問題、Ⅱはセキュリティ対策の運用・評価に関する問題が出題されていましたが、近年のセキュリティ対策の高度化・複雑化に伴い、午後試験ⅠとⅡを分ける意義が薄れてきたこと、また、受験者の負担を軽減するために、2023年度から午後試験ⅠとⅡが統合され、午後試験が一つとなりました。
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試験の合格率・難易度 | ●難易度
「A」 難関
・情報処理安全確保支援士の難易度ランキング
【資格の難易度レベル】
情報処理安全確保支援士試験の合格率は、基本情報セキュリティが約60%、応用情報セキュリティが約40%となっています。合格率から考えると、合格する割合はおおよそ6人に1人くらいの計算になります。さらに複数回の受験の後にようやく合格する人も珍しくないことから、受験者のほとんどが応用情報技術者試験合格レベルの知識や技能の持ち主であることを考えると、かなり難しい試験であることがわかります。民間資格を含め、国内で実施されるセキュリティ関連試験の中では最難関とされ、難易度レベルは応用情報技術者試験よりは、はるかに高い試験です。
ただ一方で、情報処理安全確保支援士は情報処理技術者試験の9つある高度区分の中で最も易しいと言われます。その理由は、1つはレベル4の試験の中で唯一、年2回開催されていること。もう1つは午後試験が論述形式ではなく記述式であることのようです。午後試験が記述式で回答する試験で、論述式でないことが、実務経験がなくても市販のテキストを活用して独学でも合格可能なレベルと判断されている理由のようです。
必要な勉強時間は、応用情報技術者を取得していることを前提に考えた場合でも、おそらく250時間くらいは必要です。基本情報技術者試験や応用情報技術者試験の知識が無く、いきなりこの試験を受ける場合は、確保する時間としてはおおよそ500時間以上は覚悟したほうが良いと思います。
午後試験が2023年度から1試験にまとめられて、2回目の試験が行われましたが、これまでのところ、必要な知識の範囲などは4題ともあまり変わってないという印象ですが、総合的に見ると少しやさしくなった気がします。それは、これまでの午後Ⅱ試験より、求められる知識レベルのハードルが低くなったと言えるからです。
(参考) 情報処理技術者試験の難易度
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●合格率
・令和5年度春期「情報処理安全確保支援士」試験結果
合格率19.7% (受験者数12,146名 合格者数2,394名)
・令和4年度秋期「情報処理安全確保支援士」試験結果
合格率21.1% (受験者数13,161名 合格者数2,782名)
・令和4年度春期「情報処理安全確保支援士」試験結果
合格率19.2% (受験者数11,117名 合格者数2,131名)
・令和3年度全期「情報処理安全確保支援士」試験結果
合格率20.7% (応募者数32,627名 受験者数22,582名 合格者数4,665名)
・令和3年度秋期「情報処理安全確保支援士」試験結果
合格率20.1% (受験者数11,713名 合格者数2,359名)
・令和元年度秋期「情報処理安全確保支援士」試験結果
合格率19.4% (応募者数21,237名 受験者数13,964名 合格者数2,703名)
・平成30年度春期「情報処理安全確保支援士」試験結果
合格率16.9% (応募者数23,180名 受験者数15,379名 合格者数2,596名)
・平成29年度秋期「情報処理安全確保支援士」試験結果
合格率17.1% (応募者数23,425名 受験者数16,218名 合格者数2,767名)
・平成29年度春期第1回「情報処理安全確保支援士」試験結果
合格率16.3% (応募者数25,130名 受験者数17,266名 合格者数2,822名) |
試験の内容・勉強法 | 情報処理安全確保支援士の勉強法は、基本的には過去問演習が中心になります。
午前、午後の各試験別の勉強法を以下にまとめました。
・午前Ⅰ
午前の択一試験は、応用情報技術者試験の午前Ⅰと同一の試験範囲で、選択式の問題が出題されますが、選択肢までそのままシャッフルされずに再出題されることもあり、過去問演習が重要です。応用情報技術者試験の午前Ⅰを合格していれば免除となりますが、そうでない場合は過去問を繰り返し解いて知識を増やして定着させる勉強法を進めましょう。
・午前Ⅱ
午前Ⅱは、応用情報技術者試験の午前Ⅱと一部重複する範囲もありますが、情報セキュリティに関する専門的な知識も問われます。過去問を繰り返し解いて傾向を把握し、重点的に対策すべき分野を明確にすることが重要です。特にメインとなるセキュリティと、関連の深いネットワークの難問には十分な対策が必要です。
・午後
午後の記述問題は、専門用語の散りばめられた長文を読解し、問題文に関連する課題の解決策を論理的に記述式で回答する問題が出題されます。実務経験や応用力が求められるため、情報系の実務経験がある方でも慣れないと高得点は難しいでしょう。過去問を繰り返し解いて傾向を把握し、問われるポイントを押さえておく対策を立ててください。
過去問は無料で公開されていますが、「何故そのような回答になるのか?」など、模範解答だけ読むとつまづくことも予想されるので、良質な解説の付いた参考書や、予備校に通うのがどうしても必要になってきます。
この試験を全体的に見ると、専門的な知識が求められる試験であるため幅広く深く勉強しなければなりません。特に、午前が理解できていないと午後は解けないため、午前の勉強では基礎知識を確実に習得しましょう。また、実務経験がなく、テキストや問題集などを使って独学で勉強をしてきた人は、自分で考えて答えを導き出す訓練が必要です。関連業務に携わっていない人の場合は、独学での突破は難しくなってくるかも知れません。独学が不安な人は通信講座を考えねばならないでしょう。
現在、情報セキュリティ対策に無関心な企業はありませんので、情報処理安全確保支援士資格は、転職には間違いなく有利な資格です。
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受験費用 | 7,500円 (情報処理安全確保支援士試験は非課税)
他に、支援士の登録手数料:10,700円
登録免許税:9,000円(収入印紙)
登録事項の変更手数料:900円
・維持費用(定期講習受講料等)
オンライン講習:2万円程度/年1回
集合講習:8万円程度/3年に1回
※3年ごとに最低でも14万円(1年あたり4万7千円程度)の資格維持コストが求められます。
※新規の登録申請書類などについてはこちらを参照下さい。 |