資格の概要 | プロジェクトマネージャ試験は「情報処理の促進に関する法律」に基づいて実施されている国家試験の一つで、高度IT人材として確立した専門分野を持ち、システム開発プロジェクトの責任者として、プロジェクト計画を立案し、必要となる要員や資源を確保し、計画した予算、納期、品質の達成について責任を持ってプロジェクトを管理・運営する人が対象とされています。従って、システム開発プロジェクトの責任者としてプロジェクト全体を把握し、リーダーシップを発揮する人材と位置づけられ、そのためには、実際のシステム開発要員としての経験、すなわち、アプリケーションエンジニアやプロダクションエンジニアなど、他の高度情報処理技術者として経験を積んでいることが必要され、試験もそれらと同等以上の知識・経験を持つ、5年程度以上の実務経験者を想定しておこな われます。
尚、情報処理技術者試験のうちでは情報システム開発・運用側に属し、システムアナリストのもとでプランを具体的に実行するため、開発プロジェクトを組織し、指揮、監督する、とされています。
プロジェクトマネージャの業務と役割を円滑に遂行するため、次の知識・実践能力が要求されるとしています。
(1)組織運営およびシステム全般に関する基本的な事項を理解している。
(2)個別システム化構想・計画およびプロジェクトへの期待を正しく認識し、実行可能なプロジェクト計画を立案できる。
(3)前提・制約条件の中で、プロジェクトの目標を確実に達成できる。
(4)要因・資源・予算・工程・品質などを管理し、プロジェクトの全体意識を統一して、プロジェクトを運営できる。
(5)プロジェクトの進捗状況や将来見込まれるリスクを早期に把握し、適切に対応できる。
(6)プロジェクトの計画・実績を適切に分析・評価できる。また、その結果をその後のプロジェクトの運営に活用できるとともに、ほかのプロジェクトの参考に資することができる。
資格の将来性も注目度も高いですが、難易度も高い資格です。IT技術系の資格ですが、求められるのはむしろ、業務プロセス管理能力、チームマネジメントなどのヒューマンスキルになります。情報処理技術者として経験を積んだ人が、更にキャリアアップのためにチャレンジするのが最適な資格といえます。
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試験方式 | ●試験方式はペーパー式で午前試験Ⅰ・Ⅱ、午後試験Ⅰ・Ⅱの計4つに分かれています。
・午前試験Ⅰ
多肢選択式(四肢択一)全30問出題(全問回答) 試験時間50分
※基準点は60点。基準点に達しない場合、午前Ⅱ・午後Ⅰ・午後Ⅱ試験の採点は行われず、不合格となります。
・午前試験Ⅱ
多肢選択式(四肢択一)全25問出題(全問回答) 試験時間40分
※基準点は60点。基準点に達しない場合には、午後Ⅰ・午後Ⅱ試験の採点は行われず、不合格となります。
・午後試験Ⅰ
記述式3問出題 2問回答 試験時間90分
※大問3問のうち2問を選択し解答する。大問1つにつき50点の合計100点満点。基準点の60点に満たない場合は、午後試験Ⅱの採点は行われず、不合格となります。大問1つにつき数問の設問が出題され、それぞれ20字~50字程度で解答します。
・午後試験Ⅱ
論述式(小論文)2問出題 1問回答 試験時間120分
※大問2問のうち1問を選択し回答。大問1つにつき数問の設問が出題され、それぞれ600字~1600字程度で解答します。
●評価方法
設問で要求した項目の充足度、論述の具体性、内容の妥当性、論理の一貫性、見識に基づく主張、洞察力・行動力、独創性・先見性、表現力・文章作成能力などを評価の視点として、論述の内容が評価されます。
※評価ランクがA~Dまであり、Aを取得すれば合格になります。
※問題冊子で示す「解答に当たっての指示」に従わない場合は、論述の内容にかかわらず、その程度によって評価を下げることがあります。
●科目免除制度
※科目免除制度があり、以下の1~3のいずれかの条件を満たせば、その後2年間、午前試験Ⅰの受験が免除されます。
1.応用情報技術者試験に合格する
2.いずれかの高度試験に合格する
3.いずれかの高度試験の午前I試験で基準点以上の成績を取った場合 |
資格難易度 | ●難易度
「A」 難関
【資格の難易度レベル】
試験分野の知識と実務経験があっても、かなり難しい中上級者向け試験です。実務経験5年程度で知識があっても、独学で最低3~4ヵ月間くらいは覚悟して勉強しなければ合格できないレベルです。勉強方法は、午前Ⅰ・Ⅱも午後Ⅰも過去問をひたすら解くことが大切です。午後Ⅱは過去問からの出題が2割強出るので、表現方法を論文集で頭に入れ、暗記してしまうくらいまでやると効果的です。午後Ⅰは出題傾向をつかめるまで過去問をやり通すことです。午後Ⅱは論文の練習を何度もやることに尽きます、最低10回は必要でしょう。午後II試験の結果が合否を分けます。論文試験の対策が特に重要ですので、午前問題で苦戦するような状況では、受験はまだ早いと自覚するべきです。この試験を受験するにはある程度の実務能力が必要で、試験対策には要点の理解・暗記と問題演習の繰り返しが避けて通れません。
(参考) 情報処理技術者試験の難易度
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・合格率:
令和3年度秋期情報処理技術者 高度試験
プロジェクトマネージャ試験結果 合格率14.4%
応募者総数 10,184名 受験者数6,680名 合格者数959名
※参考データ
・令和元年度春期情報処理技術者 高度試験
プロジェクトマネージャ試験結果 合格率14.1%
応募者総数 17,588名 受験者数10,909名 合格者数1,541名
・平成30年度春期情報処理技術者 高度試験
プロジェクトマネージャ試験結果 合格率13.2%
応募者総数 18,212名 受験者数11,338名 合格者数1,496名
・平成29年度春期情報処理技術者 高度試験
プロジェクトマネージャ試験結果 合格率13.1%
応募者総数 18,291名 受験者数11,596名 合格者数1,521名
・平成28年春期プロジェクトマネジャー試験結果
合格率 14.5% (受験者数10,263名 合格者数1,491名) |
受験対策・資格の将来性 | 勉強方法や勉強時間に関しては、このレベルの試験になると、当然のことながら受験する人の知識や経験の程度によって相当変わりますので一発で表現することは難しいですが、独学で突破を召さすなら、1日3~4時間位の勉強で最低3.5~4ヵ月、350時間程度は必要に思います。独学の場合は「論文試験」の文章のハードルが高くなるため時間数が多くなります。この試験にもスクールや通信教育がありますので受講すれば、費用はかかりますが効率的・効果的に勉強が出来るので勉強時間も減らすことが可能です。
この試験の難しいところは、理系の試験であるのに「暗記」が苦手な人には難しい、という点だと思います。この試験では、書いてあることを理解できても試験には合格できません。合格への近道は暗記だからです。ピンボックと呼ばれるPMBOK(Project Management Body of Knowledge)を1章、1~2週間を目安に丸覚えするところからスタートした方が合格への近道になります。教材では、翔泳社の「情報処理教科書 プロジェクトマネージャ 」 に、午後Ⅰ問題と午後Ⅱ問題の解答テクニックが多くのページを割いて記載されており、これはたいへん役に立つ内容なので活用すべきでしょう。
プロジェクトマネージャ試験は国家資格である情報処理技術者試験の1区分です。企業内システム構築の責任者として、開発プロジェクトの運営・管理にあたる技術者を認定することを目的としています。組織全体の進むべき方向性を定めたり、組織を管理したりと、仕事の責任は非常に重いですが、その分やりがいのある仕事と言えます。プロジェクトメンバーや進捗・コストの管理に加え、費用見積もりなどクラ イアントとの折衝なども担当するポジションであり、専門的な知識や能力、技術的バックボーンもさることながら、高いコミュニケーション能力や経営的観点など、幅広い資質と経験が求められます。
SEからプロジェクトリーダーへ、そしてマネジメント経験を高めて プロジェクトマネジャーへの流れの中でキャリアを積む場合が多くなります。ITエンジニアのキャリアにおいて、ひとつの代表的な目標地点となりますが、当然ながら難易度は高く、誰でもなろうと思ってなれるポジションではありません。平成21年度からの制度改定で、ITストラテジスト、プロジェクトマネージャの2つはITスキル標準の想定レベルがレベル5-からレベル4に下がったため、若干難易度は下がったかもしれませんが、今まで見る限りではそれほど目立って変わったところはないようです。
プロジェクトマネージャ合格者への業界内の評価は非常に高く、ITPro(日経BP社)が行っている「社員に取らせたいIT資格」というアンケートでは毎年1位となっています。ただ、世界共通の資格であるPMPと比べ、プロジェクトマネージャは「アジア地域でしか通用しない」点が弱点、という意見もあります。 |