資格の概要 | 建築設備の高度化、複雑化が進む中で、これに的確に対応するため、昭和58年5月の建築士法の改正において、建築設備士制度は定められました。主旨は建築士が大規模の建築物や、その他の建築物の建築設備に係る設計又は工事監理を行う場合に、建築設備士の意見を聴いたときは、設計図書又は工事監理報告書において、その旨を明らかにしなければならないというものです。
高層ビルからインテリジェントビルへと建築物の形態は変わり、ビル空調や衛生、電気設備などの建築設備も複雑化しています。建築設備士は、これらの建築設備に関する知識と技能を有し、建築設備の設計、工事管理が的確に行われるように建築士の求めに対して適切なアドバイスを行える、建築士法に基づく国家資格です。
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建築設備士の資格者数と登録者数(令和4年3月31日現在)
建築設備士 約45,000名 登録者 38,784名
※「建築設備士」の資格試験合格者は、国土交通大臣指定登録機関の登録者名簿に氏名等の登録を行うことが出来ます(登録は任意)。 登録者は、国土交通省の設計業者資格審査において、一級建築士と同等の資格として扱われます。
※建築設備士の資格取得後、建築に関する実務経験が4年以上の者は「一級建築士」の受験資格が得られます。
※また、実務経験不要で二級建築士、木造建築士試験の受験資格が与えられます。さらに、1年の実務経験で電気工事、管工事の一般建設業における営業所の専任技術者、工事現場の主任技術者となることができます。 |
試験の合格率・難易度 | ●難易度
「B」 普通
【資格の難易度レベル】
建築設備士試験は電気工事・管工事・建築の知識が必要で、製図試験もあるため範囲が広いのが特徴です。難易度は一級建築士よりは低いですが、建築設備を専門とする技術者等が受験する資格で合格率25%は、かなりの難関です。一次試験では法令集を持込むことが許可されていますので、出題の比率が高い建築設備に関する記載が多い建築設備関係法令集を購入し、持ち込めば少しは有利になるはずです。一次試験は独学でも突破は可能ですが、2次は講習会または講座受講と併用で考えたほうが間違いありません。
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●合格率
令和4年度建築設備士試験結果
(一次試験)学科 31.4% (受験者数2,813名 合格者数882人)
(二次試験)設計製図 46.4% (受験者数1,111名 合格者数516人)
(最終結果)受験者数3,183名 合格者数516名 合格率16.2%
※参考データ
・令和3年度建築設備士試験結果
(一次試験)学科 32.8% (受験者数2,900名 合格者数950人)
(二次試験)設計製図 52.3% (受験者数1,158名 合格者数606人)
(最終結果)受験者数3,217名 合格者数606名 合格率18.8%
・令和2年度建築設備士試験結果
(一次試験)学科 25.7% (受験者数2,526名 合格者数650人)
(二次試験)設計製図 41.4% (受験者数916名 合格者数379人)
(最終結果)受験者数2,811名 合格者数379名 合格率13.5%
・令和元年度建築設備士試験結果
(一次試験)学科 26.8% (受験者数2,800名 合格者数749人)
(二次試験)設計製図 54.3% (受験者数1,123名 合格者数610人)
(最終結果)受験者数3,198名 合格者数610名 合格率19.1%
・平成30年度建築設備士試験結果
(一次試験)学科 31.2% (受験者数2,983名 合格者数930人)
(二次試験)設計製図 52.0% (受験者数1,242名 合格者数646人)
(最終結果)受験者数3,335名 合格者数646名 合格率19.4%
・平成29年度建築設備士試験結果
(一次試験)学科 28.9% (受験者数2,907名 合格者数841人)
(二次試験)設計製図 52.2% (受験者数1,112名 合格者数580人)
最終総合結果 合格率18.1% (受験者数3,205名 合格者数580名)
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試験の内容・勉強法 | 建築設備士試験が大学卒で2年の実務経験があれば受験資格が得られるようになったことや、第三種電気主任技術者や、空調衛生工学会の設備士検定試験に合格し、2年の実務経験を積むことで受験することができるようになったため、以前よりずいぶん受験しやすい資格となりました。また、これにより建築設備士資格を取得することにより、早期に一級建築士となるための道筋ができたとも言えます。
●建築設備士 一次試験の受験対策
建築一般知識に関しては、基礎的な内容が多く、二級建築士程度の難易度と考えたらいいでしょう。構造問題もそれほど複雑な形状については出題されないようなので、試験対策は二級建築士の問題集を何度も繰り返し解くことで十分クリアできると思います。出題は、環境工学や建築計画、構造力学関係などが多く、中でも環境工学は範囲も広く専門的なので、重点的に学習しておく必要があります。建築設備に関しては、まず過去問中心の勉強から始めて、管工事施工管理技士や電気工事施工管理技士の専門性の高い問題にまで手を広げ、建築設備全体の知識として習得することが大切です。
一次試験は、過去問と参考書、テキストを駆使し、過去の問題集を中心に徹底的にマスターすることで独学突破が可能です。
●建築設備士 二次試験の受験対策
一次試験に比べて、二次試験を独学で突破するのは非常に難しいでしょう。二次試験対策は、やはりまず講習会を受講することでしょう。電気設備学会や空気調和・衛生工学会などでも二次試験対策講習会を実施していますので、参加することがべストだと思います。最終的には、試験対策機関が実施する講習会と併行して過去の問題を徹底的に解き、解説を読み、試験問題のパターンに慣れることを繰り返すことです。
二次試験の基本設計では、与えられた建築物の条件に対し、設備で留意した内容を記載します。設備プロット図の作成や系統図の作図、設備関係諸室のプランニング課題などがあり、設備的に間違いのない設計・計画を組み立てることが求められます。ここでは時間配分に十分注意し、時間切れにならないようにすることも大事です。
※建築設備士 二次試験対策講習会について
・講習会の講習科目と時間
①空調設備:3時間
②衛生設備:3時間
③電気設備:3時間
受講料 25,000円(税込)
この資格は、単独では建設業、建築設計事務所、空調関係会社などの仕事が主になります。いづれの仕事場でも、給排水・空調換気・電気などの建築設備に関するアドバイザーとして有資格者は重視されることは間違いありませんが、1級施工管理技士や建築士を取得した後に取得できれば仕事の幅がグッと広がりベストでしょう。
※建築設備士の登録(国土交通大臣が指定する登録)
・実施機関
一般社団法人建築設備技術者協会
・登録手数料 23,100円(税込) |
受験資格 | 基本的には下記の(1),(2),(3)に該当する者に受験資格があります。
(1)学歴を有する者
正規の建築、機械、電気、又はこれらと同等と認められる類似の過程を修めた者で、次の①から④の学校を卒業後、建築設備に関して一定の年数の実務経験を有する者
①大学、職業能力開発総合大学校(総合課程など)、職業訓練大学校(長期指導員訓練課程など)、専修学校(専門課程、修業年限4年以上、120単位以上)卒業後2年以上。
②短期大学、高等専門学校、職業能力開発短期大学校(特別高等訓練課程など)、職業訓練短期大学校(特別高等訓練課程など)、専修学校(専門課程、修業年限2年以上、60単位以上)卒業後4年以上。
③高等学校、上記①,②以外の専修学校(専門課程)卒業後6年以上。
④高等学校を卒業し、職業能力開発校などを修了後、6年以上。
(2)資格取得者で建築設備に関して一定の年数の実務経験を有する者
・一級建築士・一級電気工事施工管理技士・一級管工事施工管理技士・空気調和・衛生工学会設備士・電気主任技術者(一種~三種)の資格取得者で資格取得の前後を問わず通算2年以上、ほか
(3)建築設備に関する実務経験を有する者(建築設備に応じた実務経験年数が必要)
・実務経験のみ9年以上
※実務経験として認められるもの
・設計事務所、設備工事会社、建設会社、維持管理会社等での建築設備の設計・工事監理(その補助を含む)、施工管理、積算、 維持管理(保全、改修を伴うものに限る)の業務
・官公庁での建築設備の行政、営繕業務
・大学、工業高校等での建築設備の教育
・大学院、研究所等での建築設備の研究(研究テーマの明示が必要となります)
・設備機器製造会社等での建築設備システムの設計業務
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