試験の合格率・難易度 | ●難易度
「C」 やや易
【資格の難易度レベル】
「救急救命士国家試験」に臨むためには、受験資格として救急救命士法第34条の定める条件を満たしている必要があり、各種の条件、特例がありますが、大半が消防署で救急隊員として現場の経験を経てきた消防士と大学や専門学校で受験資格を満たし国家試験に臨む学生の受験となっています。ただ、合格率が高いのは専門の養成所で勉強した人で、90%近くが合格しますが、資格取得には試験に合格した後にも160時間以上の病院実習が必要となっています。この病院実習を終えると初めて、救急救命士としての職務につけることになります。
救急救命士養成所などを卒業さえすれば、資格試験は合格率90%前後で、決して難易度の高い試験ではありません。
--------------------------------------------
●合格率
令和3年第45回救急救命士国家試験結果
合格率 91.3% 受験者数3,263名 合格者数2,979名
・令和2年第44回救急救命士国家試験結果
合格率 86.7% 受験者数2,999名 合格者数2,599名
・令和元年第43回救急救命士国家試験結果
合格率 87.0% 受験者数2,960名 合格者数2,575名
・第42回救急救命士国家試験結果
合格率 91.9% 出願者数3,146名 受験者数3,105名 合格者数2,854名
・第41回救急救命士国家試験結果
合格率 85.0% 受験者数3,015名 合格者数2,562名
・第40回救急救命士国家試験結果
合格率 85.0% 受験者数3,031名 合格者数2,576名
・第39回救急救命士国家試験結果
合格率 86.1% 受験者数2,871名 合格者数2,471名
・第38回救急救命士国家試験結果
合格率 90.2% 受験者数2,956名 合格者数2,665名 |
試験の内容・勉強法 | 救急救命士試験の内容は、ほとんどがヘルス出版の「救急救命士標準テキスト 上巻 改訂版」と、「救急救命士標準テキスト 下巻 改訂版」 から出題されています。出題範囲はかなり広いですが、出題傾向は過去5~10年分くらいの過去問をこなせば傾向が分かります。毎年それほど変っていませんので、しっかりと準備し勉強しておけば合格することがそれほど難しい国家試験ではありません。ただ、出題される200問のうち、午後の必須問題30問は80%以上の解答が出来ていないと、そのほかの問題がどんなに出来ても合格できませんので注意が必要です。
詳しい情報は財団法人日本救急医療財団、厚生労働省のホームページで確認できます。こちらでは受験資格や毎年の国家試験の具体的日時、申し込み方法や期間などの確認ができます。
救急救命士の登録者数は、令和5年3月末で約69,840人で、このうち37,000人余りが消防組織で働いています。また救急救命士養成所は横浜、東京、埼玉、名古屋、神戸、大阪、広島などに9ケ所あり、九州、東京の2カ所の救急振興財団の養成所(ELSTA)と合わせて年間約900人弱の救急救命士が世に出ています。一方、救急救命士法34条1号に該当する、高校卒業生を対象とした2年間の専門教育で国家試験の受験資格が得ることができますが、これには全国で13施設ある民間の救急救命士養成専門学校があたります。ここでは毎年500名程度の育成がなされています。
救急救命士の仕事は、消防署などに勤務し、救急患者に対して救急車内等で救急処置を行うことですが、その責任は大変重く、その1分・1秒で患者の一生が決まります。 その意味で、緊急時にしっかりと対応できる冷静な判断力が重要な職業です。また、医療行為を行う際は医師の指示が必要で、基本的に医師の指示無しに医療行為を行うことはできません。救急処置ができるのは、救急車で向かった現場と、病院への搬送中に限定されていますので、その能力を日常的に生かせる場所は、消防以外ではほとんどありません。
救急救命士資格を取得したとしても、その後、消防士の公務員試験に合格し、消防署に勤務できなければ、資格や能力を十分に生かすことはできません。救急救命士の就職先のほとんどは消防で、その他には医療機関や自衛隊などがありますが、その割合はごくわずかです。 |
受験資格 | ・受験資格
①大学に入学することができる者で、文部科学大臣が指定した学校または都道府県知事が指定した救急救命士養成所において、2年以上救急救命士として必要な知識および技能を修得した者。
②大学または高等専門学校、文教研修施設または養成所において1年(高等専門学校は4年)以上修業し、かつ、厚生労働大臣の指定する科目を修めた者で、文部科学大臣が指定した学校または都道府県知事が指定した救急救命士養成所において、1年以上救急救命士として必要な知識および技能を修得した者。尚、厚生労働大臣の指定する科目は、公衆衛生学、医学概論、解剖学、生理学、薬理学、病理学、生化学、微生物学、看護学概論、内科学、外科学、小児科学、産婦人科学、整形外科学、脳外科学、精神医学および放射線医学のうち13科目である。
③大学において厚生労働大臣の指定する科目を修めて卒業した者。尚、厚生労働大臣の指定する科目は、公衆衛生学、解剖学、生理学、薬理学、病理学、生化学、微生物学、内科学、外科学、小児科学、産婦人科学、整形外科学、脳外科学、精神医学、放射線医学および臨床実習である。
④消防法第2条第9項に規定する救急業務に関する講習で規則第14条に規定するものの課程を修了し、及び5年(救急活動を行った時間が2,000時間に至った場合においては、それまでの間に救急業務に従事した期間)以上救急業務に従事した者で、文部科学大臣が指定した学校または都道府県知事が指定した救急救命士養成所において、1年以上救急救命士として必要な知識および技能を修得した者。
⑤外国の救急救命処置に関する学校もしくは養成所を卒業し、または外国で救急救命士に係る厚生労働大臣の免許に相当する免許を受けた者で、厚生労働大臣が上記①から④までに掲げる者と同等以上の知識および技能を有すると認定した者
⑥法の施行の際(平成3年8月15日)に救急救命士として必要な知識および技能の修得を終えている者、または法の施行の際現に救急救命士として必要な知識および技能を修得中であり、その修得を法の施行後に終えた者で、厚生労働大臣が上記①から⑤までに掲げる者と同等以上の知識および技能を有すると認定した者
以上の①から⑥が受験資格ですが、非常に複雑なので簡単にまとめると以下のようになります。
●救急救命士国家試験の受験資格は、まとめると以下の2つになります。
(1)高校卒業者であって、文部科学大臣が指定した学校又は厚生労働大臣が指定した救急救命士養成所において2年以上(大学などで1年以上修業し、かつ指定科目を修めている場合は1年以上)、救急救命士 として必要な知識及び技術を習得したもの。
(2)消防法に規定する救急業務に関する講習の過程を修了し、5年以上又は2000時間以上、救急業務において1年 (現職の救急隊員の場合は6ヶ月)以上救急救命士として必要な知識及び技術を習得したものとなっています。
●次に救急救命士になるには一般的には方法が3つあります。
(1)救急救命士課程がある4年制大学を卒業したあと、救急救命士国家試験を受験します。この試験に合格後、地方公務員試験を受験 し消防士になる方法
(2)救急救命士の専門学校を卒業したあと、救急救命士国家試験を受験します。この試験に合格後、地方公務員試験を受験 し消防士になる方法
(3)地方公務員試験を受験し合格後、消防士になります。一般救急隊員として実務経験を積んだ後、7ヵ月間の救急救命士の養成課程に入ります。その後、救急救命士国家試験を受験します。
結局、(1)の方法でも、(2)の方法も(3)の方法でも、救急救命士になるには救急救命士と消防士の2つの試験に合格する必要があることが分かります。
各地方自治体の消防士採用試験に合格し消防士となること、そして厚生労働大臣の認定する救急救命士国家試験に合格しなければならないことは変わりません。要は、救急救命士となってから消防士になるか、消防士になってから救急救命士になるかの違いだけです。
ただ、(3)の方法だけは、消防士になれたとしても、必ず救命士の養成課程に行けるとは限りません。消防士から救急救命士になるためには、最初に消防学校に入校したあと約6ヶ月間、消防士としての基礎教育を受けます。その後、また何年か後に、約2ヶ月の一般救急隊員の養成課程に入ります。そこで、一般隊員として5年以上経験するか、2000時間以上の救急現場経験をすると、救急救命士の養成課程への入校資格が得られます。この後、消防署内での選考会で選ばれれば約7ヶ月間の救急救命士養成課程に行け、その後 国家試験を受験することができます。
結局、どの方法で取得するにしても、「地方公務員試験の合格」と「救急救命士国家試験の合格」の二つが壁になります。救急救命士として活躍するためには、基本的には消防士にならないとできないということです。 |