資格の概要 | 「非破壊検査」とは、“物を壊さずに”その内部のきずや表面のきずあるいは劣化の状況を調べ出す検査技術のことを言います。また「非破壊検査技術者資格試験」は、金属や構造物を破壊せずに、その内部のきずや表面のきずあるいは劣化の状況等を調べ出す超音波検査や放射線検査など、ハイテク検査技術を使った検査をする技術者の技量を認定する資格試験をいいます。
非破壊検査に用いられる試験には、いくつかの種類があり、調べたい欠陥や素材によって適している試験が変わります。
【非破壊検査に用いられる試験】
①放射線(X線)透過試験(RT)
②超音波深傷試験(UT)
③磁粉探傷試験(MT)
④浸透探傷試験(PT)
⑤渦流探傷試験(ET)
⑥ひずみ測定(ST) ※非破壊検査技術者資格試験は、①~⑥の6つに分かれています。
上記の試験種類の試験技法(NDT方法)ごとに行われ、それぞれの試験技法にはレベル1・レベル2・レベル3の技術レベルが設定されています。レベルは数字が大きくなるほど難易度も高くなり、高度な経験を有していると認められ上位資格となります。※NDT:Non-Destructive Testingの略
JSNDI(日本非破壊検査協会)資格のレベルと種類
資格レベル |
主な業務 |
必要な経験年数 |
レベル 1 |
基本的な検査業務、機器操作 |
0~2年 |
レベル 2 |
検査データ解析、品質管理 |
2~5年 |
レベル 3 |
技術指導、検査基準策定 |
5年以上 |
尚、全6部門に通じるエキスパートのみ受験できる資格が「非破壊検査総合管理技術者」、特級資
格です。非破壊検査総合管理技術者は、非破壊検査に関する幅広い知識、技術及び経験を基に総合的な非破壊検査の計画、実行、判断などを行う極めて優れた技術者の資格として我が国が世界に誇るものとされています。
●非破壊検査に関する技術者資格を「非破壊検査技術者資格」と称します。資格は非破壊試験の種類に合わせて分かれています。
※非破壊検査技術者資格の有効期間は5年間です。
更新するためには、5年目の有効期限日約4~5 ヵ月前に通知される「更新登録」と10年目に行う「再認証登録」があります。
◆非破壊試験と非破壊検査
●非破壊試験
JISの用語で素材や製品を破壊せずに、きずの有無・その存在位置・大きさ・形状・分布状態などを調べる試験のこと。材質試験などに応用されることもあります。放射線透過試験、超音波探傷試験、磁粉探傷試験、浸透探傷試験、渦流探傷試験、などがあります。 略記号は「NDT」を用います。
●非破壊検査
非破壊試験の結果から、規格などによる基準に従って合否を判定する方法のことを言います。
略記号は「NDI」を用います。
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試験の合格率・難易度 | ●難易度
レベル1 「C」 やや易しい
レベル2 「B」 普通
【資格の難易度レベル】
非破壊検査技術者資格試験は一次試験(筆記)、二次試験(実技)があり、出題内容は放射線検査や非破壊試験概論など専門的な問題が多く、資格の取得には専門知識、実務経験が不可欠です。
近年(2021~2023年秋季)のレベルごとの平均合格率を見ると、
レベル1: 44.9% レベル2: 31.2% レベル3: 23.5% でレベル1でも合格率の平均は50%を切ります。また一方で、試験の合格基準が一次試験で70%以上、二次試験で80%以上得点できなければ合格できません。これをみると、試験突破のハードルは、かなり高いと言えます。
本試験では実技試験もあるので、独学での突破は少し無理があります。もちろん日々現場で仕事を続ける中で勉強するのですから、どれも難しいのですが、中でもレベル3の試験は難関です。また試験種目別の合格率では「超音波探傷試験」や「渦電流探傷試験」が一番低く難易度が非常に高いことが分かります。
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●合格率
・2023年度秋期非破壊検査技術者資格試験結果
レベル1 申請者数1,451名 合格者数656名 合格率45.2%
レベル2 申請者数4,702名 合格者数1,643名 合格率37.0 %
レベル3 申請者数530名 合格者数172名 合格率32.5%
・2023年度春期試験結果
レベル1 申請者数1,309名 合格者数624名 合格率47.7%
レベル2 申請者数4,539名 合格者数1,352名 合格率29.8%
レベル3 申請者数529名 合格者数117名 合格率22.1%
・2022年度春期試験結果
レベル1 申請者数2,594名 合格者数1,113名 合格率42.9%
レベル2 申請者数9,266名 合格者数2,589名 合格率27.9%
レベル3 申請者数1,045名 合格者数288名 合格率27.5%
・2021年度春期試験結果
レベル1 申請者数1,343名 合格者数497名 合格率 43.7%
レベル2 申請者数5,543名 合格者数1,515名 合格率 30.2%
レベル3 申請者数1,189名 合格者数121名 合格率 11.7%
・2020年度春期試験結果
レベル1 申請者数1,807名 合格者数470名 合格率 36.9%
レベル2 申請者数5,737名 合格者数1,142名 合格率 27.4%
レベル3 申請者数1,286名 合格者数153名 合格率 15.3%
・2019年度春期試験結果
レベル1 申請者数1,710名 合格者数603名 合格率 38.5%
レベル2 申請者数5,884名 合格者数1,429名 合格率 25.8%
レベル3 申請者数1,256名 合格者数116名 合格率 10.1% |
試験の内容・勉強法 | 非破壊検査技術者の試験は一次試験と二次試験の二本立てで構成されており、レベル1,2の一次試験は学科試験です。学科試験は基礎分野と専門分野の両方とも70%以上の正解で合格となります。その後、二次の実技試験を受験して合格すれば資格が取得できます。
(レベル別の出題内容)
試験は、技術者のスキルや経験に応じたレベルが設定されています。
一般的には レベル1(初級) →レベル2(中級) →レベル3(上級))の順に難易度が高くなります。
●レベル1(初級)の出題と難易度
筆記試験ではJIS規格や検査原理の基礎知識が出題されます。また実技試験では、特定の非破壊検査法(超音波探傷、磁粉探傷、放射線透過など)に基づいた基本操作の試験が行われます。合格率は約50%前後で、過去問とテキストなどで勉強をしておけば合格できます。
●レベル2(中級)の出題と難易度
レベル2では、レベル1よりは高度な技術と知識が求められ、試験範囲も広がります。試験ではやや応用的な非破壊検査技術の知識、欠陥の評価、試験結果の解釈などが対象になります。実技試験の難易度も高く、機器の適切な調整や測定値の正確な読み取りが求められます。合格率は約35~40% とやや低めで、しっかりとした学習が必要です。
●レベル3(上級)の出題と難易度
レベル3は、試験の設計、品質管理、教育・指導など、管理者や指導者としての役割を果たすための資格ですので、筆記試験では、試験方法の選定、欠陥の評価、基準の適用など、専門的な知識が、実技試験では、複雑な欠陥評価や高度な解析技術が求められます。合格率は約20~30% と低く、長期間の準備と学習、実務経験が不可欠です。
(受験学習のポイント)
非破壊検査技術者試験は、筆記試験も実技試験も勉強のポイントを認識してから学習に取りかかる方が効果的なので、以下のポイントだけは十分習得しておかねばなりません。
・筆記試験
①非破壊検査の原理や手法に関する知識を習得する
②試験方法ごとの特性を知る(超音波探傷、磁粉探傷、放射線透過など)
③日本工業規格(JIS)に関する理解
・実技試験
①検査機器の操作を確認
②検査結果の解釈
③異常や欠陥の判定精度を知る
(勉強方法)
①筆記試験と実技試験の学習計画を立てる
②筆記試験対策は、過去問を主体に解き、間違えた問題は解説を確認し、確実に理解する
③実技試験の練習を重視し、検査機器の取り扱いや検査結果の正確な解釈を勉強する
④模擬試験を受けて実力を確認する
筆記試験では理論的な知識が問われるため、事前の学習が不可欠です。また実技試験では機器の操作や現場での対応力が求められるため、実務経験を積むことが重要になります。試験の関門はやはり実技試験だと思います。試験時間は、与えられた課題をこなすには最低限必要な時間しかなく、全てのデータを採取して残り時間が2~3分程度と時間的な余裕は殆どありません。
このように、時間内にこなさなければいけない課題がとても多く、ぶっつけ本番で臨んで合格するのは多分無理です。事前の実技講習会は絶対に受けたほうが賢明でしょう。
非破壊検査技術者の受験対策としては、独学で勉強して取得を目指すことも可能ですが、独学での勉強の場合は実技に不安を感じてしまう場合が多くなるため、特にレベル2、3では日本非破壊検査協会の技術講習会を受講したり、各種団体で行うNDIの認定試験用の講習会を活用することをお薦めします。また、自学では模擬試験を積極的に受けることが有効になります。
製品や建物などの安全確認を、素材と構造部を破壊しないで欠陥や疲労度を調査する専門家のニーズは高く、非破壊検査資格を取得することで、企業の品質管理部門や検査専門会社、プラントの保守管理部門など、これからも幅広い職種での活躍が可能となり、就・転職にも有利になることは間違いありません。 |
受験資格 | ◆「JIS Z 2305 非破壊試験技術者の新規試験」を新規に受験するための方法
JIS Z 2305に基づく非破壊試験技術者の認証資格を取得するには,以下の4つの条件を満足する必要があります。
【4つの条件】
1.満足する視力検査
2.訓練
3.試験の合格
4.経験
新規に受験するためには、上記の1.と2.の
①「1.満足する視力検査(近方視力、色覚)」の証明と「2.訓練(シラバスに基づく訓練内容で最小限の訓練時間を満足する)」を修了したことの証明が必要になります。 2つの証明が揃ったら、②受験申請書を作成し、申請書類一式をまとめて提出します。
※年に2回(春期と秋期)の試験を実施しており、各々申請書類の提出時期があります。
③提出された申請書類一式は審査され、パスすると資格試験を受験することができます。
※資格試験は、一次試験と二次試験からなり、一次試験に合格すると二次試験を受験することができます。不合格となった試験は、次回と次々回の2回の再試験を受けることができます。
◆非破壊試験技術者資格試験のレベル1及び2の受験申請から取得までの流れ
手順1:受験する科目を決める。レベルは数字が大きくなるほど上位資格で難易度が上がります。
手順2:受験申請に必要な訓練時間を満たす訓練証明書を準備。
手順3:レベルごとの「 訓練シラバス 」に基づいた訓練を受ける。
手順4:訓練が終了したら、受験申請書をダウンロードし受験申請を行う。
(参考)【各レベルの必要最小限の訓練時間】
●レベル1
レベル1を新規に受験する者は、過去5年間に以下の最低訓練時間が必要です。
・放射線透過試験、超音波探傷試験、渦流探傷試験:40時間
・磁粉探傷試験、浸透探傷試験、ひずみ測定、超音波厚さ測定:16時間
・極間法磁粉探傷検査、通電法磁粉探傷検査、コイル法磁粉探傷検査、溶剤除去性浸透探傷検査、
水洗性浸透探傷検査:8時間
●レベル2
レベル2を受験する者(レベル 1 資格所有者)は、過去5年間に以下の最低訓練時間が必要です。
・放射線透過試験、超音波探傷試験: レベル2(80時間)
・磁粉探傷試験、浸透探傷試験、ひずみ測定: レベル2(24時間)
・過流探傷試験: レベル2(40時間)など細かく規定されています。
●レベル3
レベル 3 新規受験に対する受験資格としては,訓練の他に個人学習や非破壊検査技術に対する
貢献などが条件となっています。
過去5年間において以下のいずれかの条件を満たしている者。
・NDT 関連書籍による個人的学習を行った者
・NDT 関連の研究・論文発表者
・NDT 関連の書籍解説等の執筆者
・NDT 関連の学術講演会又はセミナーへの出席者又は発表者
・NDT 関連の訓練コース
※レベル3の場合は最低訓練時間の設定はありません。 |
試験方式 | ●レベル1・2 新規試験
・1次試験(筆記試験) 四肢択一式/試験時間:計120分
一般試験: 基礎知識に関する問題
専門試験: NDTの適用に関する問題
※一般試験と専門試験で構成される問題が四者択一式(マークシート)で出題されます。
・2次試験
実技試験/ 試験時間 70~165分
●レベル3 新規試験
・1次試験:筆記試験 四者択一の基礎試験(全てのNDT方法に対して共通の試験)
※レベル3としての基礎知識が問われる。
※試験時間は、パートA,B,Cあわせて150分/多項選択式マークシート
パートA(25問以上)材料科学、製造技術に関する技術的知識
パートB(10問以上)JIS Z 2305に基づいた認証機関の資格、認証に関するスキームの知識
パートC(60問以上)受験申請時に選択した4種類のNDT方法におけるレベル2の基礎知識
・2次試験(一次試験に合格された方が受験対象) 筆記試験/四者択一の記述試験
パートD 多項選択式(30問以上)申請NDT方法に関連するレベル3の知識
パートE 多項選択式(20問以上)関連する分野におけるNDT方法の適用等に関する問題
パートF 記述式(手順書作成)関連する分野におけるNDT方法の手順書の作成問題
●合格基準
・一次試験は全ての試験で70%以上取得
・二次試験は全ての試験で80%以上取得で合格
※1次試験、2次試験に不合格となった者は、1回に限り次回に行われる試験を再試験として受験できる。また、資格発効日から10年後の有効期限の2年前から半年前までに、取得した資格を継続させるための再認証試験が実施される。
※資格試験は、技術者の技能差が出やすいため、技術レベルを一定にする目的で、JIS Z 2305に基づき(社)日本非破壊検査協会が実施しています。 |