資格の概要 | 年間のエネルギー使用量が3,000kl以上のエネルギーを消費する工場は、国から「第一種エネルギー管理指定工場」に指定されます。そのうち、製造業、鉱業、電気供給業、ガス供給業、熱供給業の5つの業種の工場は「第一種特定事業者」と区分され、1~4人の「エネルギー管理者」を選任しなければならないと法で定められています。
エネルギー管理士には、熱分野と電気分野の2つの専門区分が設けられています。どちらを選んだ場合でも、試験に合格すればエネルギー管理士の免状を取得することができます。どちらで資格を取得しても同じなので得意な分野の方で受験したほうが有利です。
・資格の取得方法
(1)国家試験による取得
財団法人省エネルギーセンターが行う「エネルギー管理士試験」に合格後、経済産業大臣に申請し、エネルギー管理士免状の交付を受ける。
※燃料等(電気)の使用の合理化に関する実務に1年以上従事することが必要。受験の前でも後でも構いません。
(手順)
①一般財団法人省エネルギーセンター(経産大臣指定の試験機関)が毎年8月に行うエネルギー管理士試験に合格する。試験は誰でも受けられます。試験はマークシート方式です。
②免状申請の際に、エネルギー使用の合理化に関する実務に1年以上従事していることが必要です。この実務経験は受験の前でも後でも構いません。
③経産大臣に申請することにより、エネルギー管理士免状が交付されます。
受験申込みから免状取得までの流れ(フロー図) 課目合格制度について(試験)
(2)認定研修による取得
実務経験の受験資格を得た後、財団法人省エネルギーセンターが行う「エネルギー管理研修」を受講し修了試験に合格後、経済産業大臣に申請し、エネルギー管理士免状の交付を受ける。
※研修申込時までに燃料等(電気)の使用に関する合理化に関する実務に3年以上従事していることが必要です。
※この研修は、毎年12月中旬に7日間実施されます。
(手順)
①エネルギー管理研修を受けるためには、研修申込時までにエネルギー使用における合理化に関する実務に3年以上従事していることが必要です。
②一般財団法人省エネルギーセンター(経産大臣に登録した研修機関)が毎年12月に行うエネルギー管理研修を受講し、修了すること。(修了試験に合格すること。)修了試験は記述式です。
③経済産業大臣に申請を行うことにより、認定され免状交付が受けられます。
認定研修による申込みから免状取得までの流れ(フロー図)
課目合格制度および受講課目免除について(研修)
選任されたエネルギー管理者は、第1種エネルギー管理指定工場におけるエネルギーの使用の合理化に関し、エネルギーを消費する設備の維持、エネルギーの使用の方法の改善及び監視その他経済産業省令で定める業務を管理することが法で定められています。
※省エネ法の改正に伴い、従来の「熱管理士」および「電気管理士」の資格制度は「エネルギー管理士」へと平成18年度に一本化されました。
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試験の合格率・難易度 | ●難易度
「B」 普通
【資格の難易度レベル】
エネルギー管理士試験は、熱管理と電気管理の2種類の選択式の試験ですが、「熱」より「電気」の方が難易度は少し高いようです。電気系資格の中で比較すれば、電験2種ほどは高くないですが、電験3種と同程度か、少し難しいレベルです。電気の知識が全くない人が挑戦するのには少々無理があるでしょう。「熱」は公害防止管理者(大気1種)や電験3種より少し難易度は低いと判断しています。このレベルになると基礎知識がどの程度あるかにもよりますが、試験勉強に必要な時間は最低でも100時間程度は必要です。ただ、この試験ではかなり専門的な知識まで問われますので、初学者の場合は1年以上勉強する気持ちで取り組まねばならないでしょう。
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●合格率
令和4年度第44回エネルギー管理士試験結果
受験者数7,766名 合格者数2,636名 合格率33.9%
・令和3年度第43回エネルギー管理士試験結果
受験者数7,684名 合格者数2,454名 合格率31.9%
※第43回エネルギー管理研修修了者試験結果
合格率61.2% (受験者数920名 修了者数563名)
・令和2年度第42回エネルギー管理士試験結果
受験者数7,707名 合格者数2,828名 合格率36.7%
※第42回エネルギー管理研修修了者試験結果
合格率65.2% (受験者数868名 修了者数566名)
・令和元年度第41回エネルギー管理士試験結果
受験者数9,830名 合格者数3,207名 合格率32.6%
※第41回エネルギー管理研修修了者試験結果
合格率54.8% (受験者数1,067名 修了者数585名)
・平成30年度第40回エネルギー管理士試験結果
・旧資格者
申込者数56名 受験者数50名 合格者数27名 合格率54.0%
・新規受験者(課目免除受験者を含む)
申込者数11,906名 受験者数9,912名 合格者数2,770名
合格率27.9%
※第40回エネルギー管理研修修了者試験結果
合格率63.7% (受験者数1,152名 修了者数734名)
・平成29年度第39回エネルギー管理士試験結果
・旧資格者
申込者数82名 受験者数65名 合格者数48名 合格率73.8%
・新規受験者(課目免除受験者を含む)
申込者数12,740名 受験者数10,558名 合格者数3,002名
合格率28.4%
・平成28年度第38回エネルギー管理士試験結果
・旧資格者
申込者数79名 受験者数71名 合格者数51名 合格率71.8%
・新規受験者(課目免除受験者を含む)
申込者数12,658名 受験者数10,468名 合格者数2,108名 合格率20.1%
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試験の内容・勉強法 | エネルギー管理士の資格は取得方法が2通りあり、取得手順等は上記の「資格の概要」欄に記載している通りですが、どちらの方が難易度が低く、合格しやすいかという観点からみると、
●合格率の推移(国家試験は電気・熱合算の値)
・国家試験
2019年 32.6%
2020年 36.7%
2021年 31.9%
平均 33.7%
・認定研修
2019年 54.8%
2020年 65.2%
2021年 61.2%
平均 60.4%
(1)「国家試験」の受験による取得方法では、電気・熱合算で平均33.7%
(2)「認定研修の受講」による取得方法では、 修了試験の合格率は平均60.4%です。
これを見ると、国家試験の合格率は30~35%と低く、試験の難易度は高めです。一方、研修試験の合格率は60%前後とかなり高くなっています。
資格取得方法の(1)と(2)を比較すれば、誰でもが「エネルギー管理研修」を受講し修了試験を受ける取得方法に関心を持ちますが、実際に管理研修を受講してみると、この講義は試験範囲を全て説明するだけの講習であるようです。試験のツボを教えたり、理解できない人が手を上げて質問したり、よく分からない人に分からせようという内容ではないことを知っておいた方が良いでしょう。講義を受ければ何とかなる、という期待は捨てた方が無難です。また、管理研修の修了試験は、本試験よりは少しやさしい程度ですが、確実に合格するためには、過去問がかなり出来るレベルまで勉強しておく必要があります。また修了試験の計算問題では、途中の計算過程の記入も求められる問題が半数ほどあるので、勉強するときに解答の書き方を練習しておくことが大切です。
2018年度から「熱」か「電気」かを選択科目で選べるようになりましたが、科目的には「熱」の勉強をした方が有利です。省エネルギーセンターの公式テキストは試験内容より、かなり細かいことまで書いてあり、教材の内容も難しいようです。受験対策には使えそうもないので、他の教材(特に過去問集)をさがした方がいいと思います。試験は問題数が多いだけでなく、朝9時に始まって夕方5時までの試験への集中は非常にハードになります。
この試験は公害防止管理者(水質一種、大気一種)、電験主任者、ボイラー技師、冷凍機械などと出題範囲が重複するため、これらの資格保有者がこの資格を取得する場合には受験勉強は比較的楽になるはずです。
エネルギー管理士試験の受験対策は過去問題が最重要です。かなり似通った問題が出題されるケースが非常に多いので、過去問だけでも解いておけばかなり合格に近づくと思います。それと穴埋め系の問題はかなり細かいところまで出るので、時間をかけて覚えておいて損はないでしょう。
過去の問題集を購入して、出題傾向を調べながらどんどん練習していくのが一番ベストな勉強方法なので、過去問を持ってない人は、素直に省エネルギーセンターの過去問集を買った方がいいと思います。
・エネルギー管理士試験「熱分野」模範解答集
・エネルギー管理士試験「電気分野」模範解答集
資格取得後は、省エネルギー関連のプロとして活躍することも可能ですが、転職武器としては過度に期待しない方が無難に思います。仕事の求人面では、公害防止管理者の「水質一種」「大気一種」などの方がはるかに良い条件の求人が出ているようです。 |
受験費用 | ●試験:17,000円(非課税)
●研修:70,000円(教材込み) 課目免除対象者50,000円(教材込み)(非課税)
※熱管理士・電気管理士の免状を取得している人のうち、専門区分課目II~IVの免除を受けて課目Iを受験する人は10,000円(非課税) |
試験方式 | 試験方式:筆記試験(マークシート方式)
●出題数と試験時間
【必須基礎区分及び熱分野専門区分】
<課目Ⅰ>エネルギー総合管理及び法規(80分)
① エネルギー使用の合理化等に関する法律及び命令(1題)
② エネルギー総合管理
・エネルギー情勢・政策、エネルギー概論(1題)
・エネルギー管理技術の基礎(1題)
・専門区分(熱分野・電気分野のいずれかを選択)
<課目Ⅱ> 熱と流体の流れの基礎(110分)
熱力学の基礎(2題)、流体工学の基礎(1題)、伝熱工学の基礎(1題)
<課目Ⅲ>燃料と燃焼(80分)
燃料及び燃焼管理(2題)、燃焼計算(1題)
<課目Ⅳ>熱利用設備及びその管理(110分)
計測及び制御(2題)
・ボイラ、蒸気輸送・貯蔵装置、蒸気原動機、内燃機関・ガス(2問)
・熱利用設備(熱交換器・熱回収装置/冷凍・空気調和設備/工業炉、熱設備材料、蒸留/蒸発・濃縮装置、乾燥装置、乾留・ガス化装置の中から2問を選択)
【必須基礎区分及び電気分野専門区分】
<課目Ⅰ>エネルギー総合管理及び法規(80分)
① エネルギー使用の合理化等に関する法律及び命令(1題)
② エネルギー総合管理
・エネルギー情勢・政策、エネルギー概論(1題)
・エネルギー管理技術の基礎(1題)
<課目Ⅱ>電気の基礎
電気及び電子理論、自動制御及び情報処理、電気計測
<課目Ⅲ>電気設備及び機器(110分)
①工場配電(2題)
②電気機器(2題)
<課目Ⅳ>電力応用(110分)
①電動力応用(2題)
②以下の4題から2題を選択する。(電気加熱、電気化学、照明、空気調和)
(注意)
試験課目の順番(課目Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ)と試験時限の順番(1、2、3、4時限)は異なっていますので注意が必要です。
●合格基準
満点中、各課目60%以上の得点で課目合格となります。全4科目合格でエネルギー管理士試験合格となります。ある課目だけが60%に達しており、その他が満たない場合、その課目のみ合格となり、課目免除の対象となります。
●課目免除・課目別合格制度
【課目免除】
・エネルギー管理士資格取得者は、技術士一次試験のときに共通科目が免除されます。
【課目別合格制度】
・エネルギー管理士は科目別合格制度になっています。
課目別の得点が合格基準の各課目60%に達した課目は「課目合格」となり、4課目合格すればエネルギー管理士試験合格(全課目合格)となります。また、課目合格の場合は、その試験が行われた年の初めから3年以内に受験する場合にはその課目の試験が免除になりますが、課目合格した年の初めから3年を過ぎると 、その課目の合格は無効となり、新たに受験することが必要になります。また、合格している課目の試験免除期間中(3年間)は、合格している課目について受験することができ ません。 |
試験科目 | 試験科目は必須基礎区分と専門区分に分かれています。専門区分は熱分野か電気分野かで試験内容が異なります。どちらを選択しても、合格すればエネルギー管理士の免状を取得できますので得意な方を選択しましょう。
◆【必須基礎区分】(熱分野・電気分野とも)
<課目Ⅰ>エネルギー総合管理及び法規
【選択課目】熱分野または電気分野のいづれかを選択
■熱分野 専門科目
<課目Ⅱ> 熱と流体の流れの基礎
<課目Ⅲ>燃料と燃焼
<課目Ⅳ>熱利用設備及びその管理
■電気分野 専門科目
<課目Ⅱ>電気の基礎
<課目Ⅲ>電気設備及び機器
<課目Ⅳ>電力応用
◇エネルギー管理士研修 (6日間の講義と1日の修了試験の連続した7日間行われます)
【必須基礎区分】(熱分野・電気分野とも)
・課目Ⅰ エネルギー総合管理及び法規
【専門区分】(熱分野・電気分野のどちらかを選択)
(熱分野区分)
課目Ⅱ 熱と流体の流れの基礎
課目Ⅲ 燃料と燃焼
課目Ⅳ 熱利用設備及びその管理
(電気分野区分)
課目Ⅱ 電気の基礎
課目Ⅲ 電気設備及び機器
課目Ⅳ 電気応用
●修了試験
・試験は筆記試験で記述式で行われます。(マークシートではありません)
・修了試験の課目:講義内容の課目と同じです。
課目Iのみ熱分野、電気分野共通で、課目II~IVは選択した分野によって異なります。
・合格基準:非公開
・課目免除:
修了試験で一部の課目を合格した場合
翌年に限り合格した課目の講義と修了試験が免除されます。 |