資格の概要 | 「理学療法士(Physical TherapistまたはPhysio Therapist)」は、医療資格(コ・メディカル)の一つで、 厚生労働大臣の免許を受けて、医師の指示の下にケガや病気などで身体に障害のある人や障害の発生が予測される人に対して、基本動作能力(座る、立つ、歩くなど)の回復や維持、および障害の悪化の予防を目的に、運動療法や物理療法(温熱、電気等の物理的手段を治療目的に利用するもの)などを用いて、自立した日常生活が送れるよう支援する医学的リハビリテーションの専門職です。
作業療法士が作業を主体にしてリハビリを行うのに対し、理学療法士はマッサージや温熱、電気刺激などの物理的治療を行います。
理学療法士として人の役に立つ仕事をするためには、まず国家資格を取得しなければなりません。理学療法士の場合は、「理学療法士及び作業療法士法」にもとづき、厚生労働大臣が免許を与えます。
理学療法士の国家試験を受験するためには、養成校で3年以上学び、必要な知識と技術を身につけることが必要です。養成校には4年制大学、短期大学(3年制)、専門学校(3年制、4年制)、特別支援学校(視覚障害者が対象)があります。資格取得後、より専門的な知識を身に付ける場合、研究職をめざす場合などは大学院もあります。(修士課程・博士課程)。すでに作業療法士の資格を持っている人は、養成校で2年以上学べば受験資格が得られます。
有資格者はわずか数年で激増し、平成24年時点で10万人を超えました。
養成校のカリキュラムには、大きく分けて、一般教養科目、専門基礎科目、専門科目、臨床実習の4種類があります。専門科目には実技やグループで課題に取り組む授業もあります。
※理学療法士養成校一覧(平成28年度) |
試験の合格率・難易度 | ●難易度
「C」 やや易
【資格の難易度レベル】
理学療法士の人数は増加傾向にあり、現在は12万人を超えています。2010年には約6万6000人だったので、この10年で倍以上の増加です。毎年1万人前後の理学療法士が誕生しています。
一方で、理学療法士の就業率は90%以上で、雇用状況は比較的安定していますが、このまま理学療法士の人数が増えれば競争率が上がることとなり希望する施設への就職は難しくなります。また、人数の増加に伴い、理学療法士の質の低下が問題となっています。 ただ、理学療法士試験は学校にて所定カリキュラムをしっかり習得している人であれば、難易度が高い試験ではないと言うことは分かります。専門学校や大学の養成教育でまじめに受験勉強をしておけば、まず新規卒業者は合格する試験であることには変わらないと思います。
それより、理学療法士は国家試験に合格するよりも、実習や専門学校や大学を卒業して受験資格を得ることの方がはるかに難しい資格です。 また、理学療法士になってからの方がさらに大変で、日々の努力が欠かせないということは言うまでもないことです。
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●合格率
第57回理学療法士国家試験結果
合格率 79.6% 受験者数 12,685人 合格者数 10,096人
一般問題を1問1点(158点満点)、実地問題を1問3点(114点満点)とし、
総得点164点以上/272点 実地問題40点以上/114点を満たした者が合格。
※参考データ
・第56回理学療法士国家試験結果
合格率 79.0% 受験者数 11,946人 合格者数 9,434人
・第55回理学療法士国家試験結果
合格率 86.4% 受験者数 12,283人 合格者数 10,608人
・第54回理学療法士国家試験結果
合格率 85.8% 受験者数 12,605人 合格者数 10,809人
・第53回理学療法士国家試験結果
合格率 81.4% 受験者数 12,148人 合格者数 9,885人
・第52回理学療法士国家試験結果
合格率 90.3% 受験者数 10,721人 合格者数 10,319人
・第50回理学療法士国家試験結果
合格率 82.7% 受験者数 12,035人 合格者数 9,952人 |
試験の内容・勉強法 | 日本の65歳以上の高齢者の総人口に占める割合が28%を超えて過去最高を更新しています。すなわち、医療や介護を必要とする人達が増え、今後も医療や介護の分野で理学療法士の必要性が高まることは間違いなさそうです。理学療法士の職域はますます広がり、将来的に見ても多くのチャンスがあるように思います。理学療法士としての就職の状況は現在のところはまだ求人数も多く売り手市場といえます。求人募集、就職・転職先は多く、将来性のある資格です。
高齢化社会が進む日本においては、リハビリテーション分野はますます拡大する医療分野であることは間違いなく、活躍できる場はさらに広がるでしょう。ただ、これ以上養成学校が増えて、理学療法士の数が多くなってくると、就職等が難しくなってきます。また、調整のため資格試験の難易度が上昇することも考えられます。
理学療法士としての活躍の場としては、介護保険サービス、通所リハビリテーション/訪問リハビリテーション/住宅改修・福祉用具のアドバイス、医療サービス 、病院/診療所、保健サービス 、機能訓練事業/介護予防、福祉サービス 、障害者福祉センター/障害児(者)通所・入園施設などがあります。
医師や看護婦など、医療チームの一員として協力し、仕事を分担することが必要になるため独立開業はできません。
理学療法士と関連した資格として比較されるのが「作業療法士」です。どちらもリハビリテーションに従事する職業ですが、似ているようで、異なる理学療法士と作業療法士の違いについて説明します。
【養成校で習得する内容】
どちらもリハビリテーションの専門職なので、医療の基礎科目では同じ内容を学びます。
主に1年~2年では「解剖学」「生理学」「運動学」など7科目が共通科目です。2年次以降は、理学療法士と作業療法士で学ぶ内容が違います。理学療法士は「物理療法」「運動療法」等で、作業療法士は「発達障害治療」「精神障害治療」等を学びます。どちらも各養成校で決められたカリキュラムを全て修得しなければなりません。また、決められた時間数(最低810時間)の臨床実習も行わなければなりません。
【試験に関する違い】
試験に関しては、全くと言っていいほど違いはありません。試験日程や試験地、受験料などはすべて同じです。受験資格では知識や技能を習得した養成施設の違い(理学療法施設か作業療法施施設か)だけで、試験科目でも理学療法か、作業療法かの違いだけで他はすべて同じ科目です。
【仕事に関する違い】
理学療法士は、立ち上がる、起き上がる、歩く、寝返る、などの体の基本動作のリハビリテーションで運動機能を回復させる専門家です。理学療法士の活躍できる職場は医療・福祉分野から健康推進、スポーツ医学、スポーツトレーナーなどの分野で、一般病院・総合病院、リハビリテーション病院、スポーツ関連施設などです。比較的体の中の大きな動きのリハビリテーションを行いますので、将来的にも必要とされる職業のひとつと言えます。それに対して、作業療法士は日常を健康に生きがいのある生活を送れるように、体の動作と社会適応のための能力回復の指導や援助をするプロフェショナルです。仕事では、食事をする、顔を洗う、字を書く等の生活する上で必要不可欠な動作に伴う、手の動作や指の細かい動作などのリハビリテーションを行う場合が多いです。活躍できる職場は、理学療法士とそれほど違いはありませんが、一般病院・総合病院、リハビリテーション病院、精神科病院、老人保健施設、障害者福祉施設、児童養護施設などになります。
【資格取得者の状況】
理学療法士と作業療法士の有資格者数は、
2020年3月末時点で「理学療法士」約183,000人 、「作業療法士」約94,300人です。
一方、毎年誕生する理学療法士は約10,000人、作業療法士は約5,000人ですが、超高齢社会を迎える日本においては、現状では、まだ理学療法士・作業療法士は足りていない状況が続いています。 |