資格の概要 | 「臨床工学技士」は、1987年5月に制定された「臨床工学技士法」に基づく医学と工学の両面を兼ね備えた国家資格です。 臨床工学技士は、厚生労働大臣の免許を受けて、医師の指示の下に生命維持管理装置(呼吸(肺)、循環(心臓)、代謝(腎臓)の機能の一部を代行する装置)の操作および、保守点検を行うことを業務としています。
医師以外の診療補助に従事する看護師や各種の医療技術者のことをコメディカルと呼びますが、臨床工学技士はコメディカル職種の一種であり、現在の医療に不可欠な医療機器のスペシャリストです。 近年の医療機器の目覚ましい進歩に伴い、医学的、工学的な知識を必要とする専門技術者として医療の重要な一翼を担っています。臨床工学技士が扱う代表的な機器に人工心肺装置や人工透析装置などがあり、腎不全の人工透析治療には多くの臨床工学技士が携わっています。
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この資格試験を受験するには、学校卒業後に”臨床工学技士として必要な知識及び技能を修得した者”、という受験資格が必要です。(臨床工学技士養成課程がある4年制の大学、3年制の短大または専門学校で所定の課程を修了することによって、受験資格を得ることができます)
※臨床検査技師、診療放射線技師、看護師の養成校を卒業している場合には、1年間専門科に通えば受験資格を得ることができます。従って、看護師と臨床工学技士の両方の資格を取得することも十分可能です。
受験に際しては、専門学校、短期大学、または大学で科目を修得し、「臨床工学技士国家試験受験資格取得見込証明書」を添えて申請し、「受験票」を得て受験します。
養成校で厚生労働大臣の指定する科目を修得し、専門的知識・技術を修了することで、臨床工学技士国家試験への受験資格を得、試験に合格することで資格が取得できます。
◆臨床工学技士資格関連情報
・平成29年度「臨床工学技士国家試験」 学校別受験状況 |
資格難易度 | ●難易度
「C」 やや易
【資格の難易度レベル】
医療系国家資格の「診療放射線技師」や、「臨床検査技師」、「臨床工学技士」が共通していることは、資格を取得するには大学で指定科目を履修するとか、指定の養成所で必要な期間、必要な知識や技術を学んだ人でなければ受験資格がない、ということです。そのため、これらの資格はどれも独学のみで取得を目指すことはできません。
臨床工学技士も同様に、学校の養成課程における授業をしっかりと理解しておけば、ほぼ資格取得は可能です。科目数は多いですが、合格率は8割前後と高く、大学で指定科目を履修するか、指定の養成所で必要な知識や技術を学んできた人には難易度はそれほど高くありません。ボーダーラインは正答率60%が目安と言われていますので、受験資格を取得した上で、きちっと受験対策をしておけば合格は十分可能です。
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●合格率
第33回(令和2年3月実施)臨床工学技士国家試験結果
合格率 82.1% 受験者数 2,642名 合格者数 2,168名
(合格基準)
配点を1問1点、合計180点満点とし、総得点108点以上を合格。
※参考データ
・第32回(平成31年3月実施)臨床工学技士国家試験結果
合格率 77.5% 受験者数 2,828名 合格者数 2,193名
・第31回(平成30年3月実施)臨床工学技士国家試験結果
合格率 73.7% 受験者数 2,737名 合格者数 2,017名
・第30回臨床工学技士国家試験結果
合格率 81.9% 受験者数 2,947名 合格者数 2,413名
・第29回臨床工学技士国家試験結果
合格率 72.5% 受験者数 2,739名 合格者数 1,987名 |
受験対策・資格の将来性 | 命に関わる業務だけに、臨床医学総論や医用電気電子工学、医用機械工学など養成学校で学ばなければならない分野は広い。ただ、養成学校時代にしっかり学習、対策すれば、決して難しいものではありません。試験内容は既出問題も結構多く、過去問中心の勉強をきちんとやれば難しくないレベルです。国家試験は、既出問題がよく出題されますので、過去5年分くらいにさかのぼって過去問を勉強することはかなり有効です。そして量も大切ですが「質」を重視した勉強が大事になります。学校で授業をしっかり受けた上で、過去問などに繰り返し当たっておくのが妥当な勉強法です。この試験、難しいのは国家試験よりも進級や卒業することです。学校を卒業できなければ国家試験の受験資格を取得できません。 学校でのテストの範囲が広いうえに、医学と(生体)工学(電気や機械)の両方を学ばねばなりません。学校への入学はそれほど難しくありませんが、入ってからが結構大変で難しいです。
また、臨床工学技士の学校は、ほとんどが専門学校です。専門学校の場合、3年過程の専門学校で、おおよそ年間にかかる費用は、400万円くらいです。国立や公立など安い学費のところはないので、4年過程になれば、さらに100万円くらいプラスされる感じで、授業料も高いという認識が必要です。
国家試験での出題状況は、医学に関しては、呼吸・循環・泌尿器・胸部外科が中心で、脳神経・消化器・内分泌・感染症なども出題されています。また、工学関係では、医用電気電子工学・医用機械工学では、交流を含む電気回路の基本、増幅器、センサの基本、機械要素、機械に関する基礎力学、流体に関する基礎力学、などが出題されています。
生体物性材料工学では、生体の電気的・力学的・機械的特性および人工透析・人工心肺・人工血管などに使用される特殊な材料について、生体機能代行装置学では、人工透析・人工心肺・人工呼吸器・高気圧酸素療法装置および関連機器など臨床工学技士としての業務の中心となる機器について出題されています。一方、医用治療機器学では、ペースメーカ、電気メス、大動脈バルーンポンピング装置、レーザ治療器、超音波メスなど、生体計測装置学では心電計、血圧計、パルスオキシメータ、筋電計、脳波形などについてが出題されます。
また、医用機器安全管理学では、医療機器の電気事故、医療ガスの事故を防ぐための法令、安全管理方法などが出題されています。 かなり専門的で、範囲も広いですが真面目に勉強していれば合格できる内容とレベルです。
代表的な就職先は病院、クリニック、医療機器メーカーなどですが、医療機器は時代とともに進化しているため、常に新たな先進機器についての勉強や情報収集が必要です。しかし一方で、医療機器の選定に関わることもあるなど、責任の重い仕事でもあり、病院経営の一端に携われるような将来性のある仕事でもあります。臨床工学技士の数はそれほど多くないため、就職先は比較的見つけやすい状況にあります。
このように医学的な知識を持ち、人工心肺や人工透析、人工呼吸器など最新医療機器の操作や保守管理などを担うのが臨床工学技士ですが、国家資格ながら歴史が浅く知名度が低いため、現状では国内の医療現場で数万人規模の人手不足が起きており、需要が年々高まっているのが実状です。特に、透析患者など生活習慣病による病気が増加している状況があり、人工透析装置を操作、管理できる臨床工学技士が多くの場所で求められています。
(参考)
※高度な技術を持つ臨床工学技士は、以下のような専門認定資格を受験して取得すればスペシャリストとして仕事をすることもできます。
・人工透析療法については透析技術認定士
・人工心肺運転については体外循環認定士
・人工呼吸器操作については呼吸療法士
・高気圧酸素治療装置については臨床高気圧治療技師
・医療機器の保守管理については臨床ME専門認定士
※国家試験合格後、免許申請を行います、この申請が受理されて、臨床工学技士名簿に登録されてはじめて臨床工学技士の資格保有者となれます。名簿に登録されずに臨床工学技士業務を行うと無免許で業務を行ったことになり法律違反となります。 |