資格の概要 | 「日本語能力試験(JLPT)」は、(財)日本国際教育支援協会と独立行政法人国際交流基金が主催する日本語を母語としない人を対象に日本語能力を認定する検定試験です。日本を含め世界各国で実施されており、日本語を母語としない人を対象とした日本語の試験では最も受験者が多い世界最大規模の試験です。この試験は1984年に始まり2010年に新しい形式に改定され、レベルや試験科目、試験時間、配点などが変わり、新試験としてスタートしました。レベルは5段階になり、最上級のN1から最下級のN5まであります。
試験の詳細 ⇒日本語能力試験ガイドブック(概要版)
【日本語能力試験の認定の目安】
・N1 幅広い場面で使われる日本語を理解できる
・N2 日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解できる
・N3 日常的な場面で使われる日本語をある程度理解できる
・N4 基本的な日本語を理解できる
・N5 基本的な日本語をある程度理解できる
この試験の特徴としては、
①日本語の文字や語彙、文法などをどの程度知っているかと言うことだけでなく、コミュニケーション上の課題をどの程度遂行できるかを測る試験である。
②試験では、5段階のレベルから自分に合ったレベルを選ぶことができる。
③この試験の得点は、尺度得点方式が採用されているため、日本語能力が正確に、公正に得点に表われます。
④試験の得点や合否判定だけでは、日本語を使って何ができるのかが分かりません、そのため参考情報として「日本語能力試験Can-do自己評価リスト」が提供されています。
※海外における日本語学習者は、1984年の約58万人から2006年に約298万人になり、2009年には約365万人に達しました。それに伴い日本語能力試験の受験者数ものびて、2009年には過去最高の77万人が受験しました。
※日本語能力試験には他に韓国のYBM Si-saが実施している「JPT日本語能力試験」がありますが、この試験とは異なります。
※「日本語教育能力検定」と名前がよく似た試験に「日本語能力試験」があります。主催者も共通しているのですが、試験の内容や目的は異なります。
・「日本語教育能力検定試験」は、外国人に日本語を教える日本語教員となるために学習している人、日本語教員として教育に携わる者等を対象として、その知識及び能力が日本語教育の専門家として必要とされる水準に達しているかどうかを検定する試験で、昭和62年度から始まった試験で毎年1回実施されています。試験内容は筆記試験Ⅰ、筆記試験Ⅱ、聴解試験により行われています。それに対して、
・「日本語能力試験」は日本語を母語としない人を対象にした試験で、日本語能力を測定し認定することを目的に、国内においては財団法人日本国際教育協会により昭和58年度から、国外においては国際交流基金により昭和59年度から毎年1回実施されている試験です。試験は1級から4級まであり、内容は3つの類別(文字・語彙、聴解、読解・文法)に分かれています。 |
試験の合格率・難易度 | ●難易度
N1 「A」 難関
N2・N3 「B」 普通
【資格の難易度レベル】
各種のデータを総合的に評価すれば、「N1」認定も、しっかりとまじめに集中して勉強すれば、難易度S「超難関」とまではいかないと思われます。レベル的には古典や漢文の入らない公立高校入試の国語の水準といったところです。
試験対策は、過去問と漢字文化圏以外の外国人の最大のネックとなる「漢字」です。常用漢字で約20000字の読み書きを習得しなければなりません。日本の小学校で学習する漢字が約1000字なので、おおよその難易度は計れると思います。
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●認定率
2021年7月日本語検定(第1回試験)試験結果(国内・国外合計の結果)
国内 (N1~N5合計) 受験者数193,626名 認定者数75,152名 認定率38.8%
海外 (N1~N5合計) 受験者数142,289名 認定者数76,257名 認定率53.6%
※参考データ
・2020年12月日本語検定(第2回試験)試験結果(国内・国外合計の結果)
国内 (N1~N5合計) 受験者数188,500名 認定者数90,340名 認定率47.9%
海外 (N1~N5合計) 受験者数181,528名 認定者数99,730名 認定率54.9%
・2019年12月日本語検定(第2回試験)試験結果(国内・国外合計の結果)
国内 (N1~N5合計) 受験者数236,154名 認定者数67,174名 認定率28.4%
海外 (N1~N5合計) 受験者数381,933名 認定者数142,783名 認定率37.4%
・2018年12月日本語検定(第2回試験)試験結果(国内・国外合計の結果)
(N1~N5合計) 受験者数538,995名 認定者数189,355名 認定率35.1%
2018年7月日本語検定(第1回試験)試験結果(国内・国外合計の結果)
(N1~N5合計) 受験者数470,079名 認定者数176,682名 認定率37.6%
・2017年7月日本語検定(第1回)試験結果(国内・国外合計の結果)
受験者数404,106名
・2016年7月日本語検定(第1回)試験結果(国内・国外合計の結果)
受験者数341,079名
N1 (認定者数) 29,736名 (認定率)33.9%
N2 46,361 44.1
N3 30,978 40.7
N4 16,232 37.7
N5 14,953 51.4
合計 138,260名 40.5% |
試験の内容・勉強法 | 「N1」の合格基準とレベルは、総合的には「幅広い場面で使われる日本語を理解することができる」レベルです。
[読む]に関してのレベルでは、
・幅広い話題について書かれた新聞の論説・評論など、論理的にやや複雑な文章や抽象度の高い文章などを読んで、文章の構成や内容を理解することができる。
・さまざまな話題の内容に深みのある読み物を読んで、話の流れや詳細な表現意図を理解することができる。
[聞く]に関してのレベルでは、
・幅広い場面において自然なスピードの、まとまりのある会話やニュース、講義を聞いて、話の流れや内容、登場人物の関係や内容の論理構成などを詳細に理解したり、要旨を把握したりすることができる。
いづれも、高いレベルが要求されます。実際、日本語を母語としない人の場合、日本の国立大学への派遣留学には日本語能力試験N1を要求されることが多く、このことは、日本人がアメリカ留学の際にTOEFLの高得点を要求されるのと同じことになります。
日本語能力試験(JLPT)の海外の受験者は、日本への留学を希望している留学生や海外で日本語を勉強している外国人の人たちですが、現在は日本国内での受験者数よりも、海外での受験者数が多い状況になっています。ただ、認定率では国内での受験者の方が認定の割合が高めで、受験者は女性(30~40代)が多いようです。
日本語能力試験「N1」の認定は、医師等の日本の国家試験を受験するための条件や、準看護師試験を受験する条件のひとつにもなっています。またそれ以外にも、学校の卒業資格認定での優遇などもあるため最上位の「N1」認定のメリットは非常に大きいと言えます。N1の受験者数は約22万人になります。
試験に関しては、日本語を学習している外国人留学生を対象に旺文社が実施したアンケートで、
「日本語能力試験に合格するためには、漢字・単語学習はどの程度重要だと思いますか」という質問に対し、合計77%の学生が、「最も重要」「かなり重要」と回答しています。
また、漢字文化圏と漢字文化圏外の学生の日本語能力試験受験学習を比較した別のデータがあります。
●学習時間数の比較データ「1992~2010年」
(漢字文化圏の学生) (漢字文化圏外の学生)
N1 1800~2300時間 3100~4500時間
N2 1100~1500時間 1400~2000時間
N3 - -
N4 375~475時間 500~750時間
N5 200~300時間 250~400時間
※この期間での全国内生徒の「N1」取得学習時間数は、平均2017時間でした(その中の約93%の生徒が漢字文化圏の学生)。 |