資格の概要 | 管理栄養士は栄養士の上位資格で、厚生労働大臣の免許である名称独占資格です。栄養士に比べてその知識は専門的で幅広く、業務内容自体も栄養士より高度な ものになります。特に病院で傷病者の食環境の管理に当たるのはこの管理栄養士の仕事であり、保険診療報酬の対象にもなります。
栄養士の資格は、栄養士養成施設を卒業すれば誰でもが取得できますが、管理栄養士は国家試験に合格をして、厚生労働省の管理栄養士名簿に登録されなくてはなりません。管理栄養士は厚生労働大臣から、栄養士は都道府県から免許を交付されます。管理栄養士の資格取得者は2018年時点で累計で約23.4万人。それに対して栄養士は約106万人。大半は女性で栄養士不足の時代も昔はありましたが、現在ではその需要はほぼ満たされています。
管理栄養士になる一番の近道は、管理栄養士養成施設を卒業して国家試験を受ける方法です。管理栄養士養成施設には以下の2種類があり、卒業すれば管理栄養士国家試験受験資格を得ることができます。➡ 栄養士・管理栄養士養成施設
①4年制大学の管理栄養士課程
②4年制専門学校の管理栄養士課程
※①、②の課程を経ない人は、まず栄養士の資格を取得し、管理栄養士国家試験の受験資格を得なければなりません。栄養士の資格を取得するには栄養士養成施設で2年以上、栄養士として必要な知識及び技能を修得しなければなりません。
栄養士養成施設の場合は卒業後の実務経験が必要になりますが、管理栄養士養成施設の場合は4年制のため、卒業時に栄養士と管理栄養士の資格取得を目指すことができるというわけです。
但し、以下の人は管理栄養士の資格を自動的に取得できます。
医師、歯科医師、薬剤師、獣医師等栄養士管理、栄養士調理師、船舶料理士、ふぐ調理師製菓衛生師、食鳥処理衛生管理者、食品衛生管理者、食品衛生指導員、食品衛生監視員。
◆ 「栄養士」と「管理栄養士」の違い
どちらも栄養指導を行う専門的な仕事ですが、違いの一つは指導を行う相手の違いがあります。
栄養士は主に健康な方に栄養指導や給食の管理を行います。それに対して管理栄養士は、健康な方以外のも、病気を患っている方への栄養指導や給食の管理などを行います。そして、老人ホームなど、給食数を一定以上提供する施設や特別な栄養管理が必要な施設には、必ず管理栄養士を配置しなければならないことを法で定めています。
また、栄養士より専門的な知識を用いる栄養指導や食事の管理指導などを行うため、より責任ある立場を任されます。免許に関しては、管理栄養士の免許は栄養士の免許を有する者が、管理栄養士国家試験を受け、これに合格した者に対して厚生労働大臣が与えます。これに対して、栄養士の免許は、栄養士の養成施設において二年以上栄養士として必要な知識及び技能を修得した者に対して、都道府県知事が与えます。
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資格難易度 | ●難易度
「A」 難関
【資格の難易度レベル】
管理栄養士国家試験は既卒か、新卒かで合格率が大きく違い、既卒での合格率が非常に低いのが特徴です。新卒の場合は90%前後ですが栄養士養成校や管理栄養士養成校の既卒者の場合は20%前後になります。この理由は、管理栄養士養成校の学生の場合などは、学校での学習環境が継続しているような中で受験に臨めますが、既卒者の場合は毎日の仕事をこなしながら、必要な情報や教材を探して勉強し、試験に臨むことになりますので、既卒者にはどうしても難易度が高くなるわけです。従って、年に1度しか試験がなく、さらに実務経験を積まなければならない働く栄養士にとっては大変ハードルの高い試験になります。仕事が終わってから、1日2時間の勉強で約3~6カ月は必要になります。
資格の取得方法については、4年制の管理栄養士の養成施設では管理栄養士の国家試験合格に向けたカリキュラムが組まれていますので、4年制の養成施設に進学される方は、そのコースでしっかりと勉強することが一番です。一方、2~4年制の栄養士の養成施設を卒業した場合には、働きながらの受験になりますので、どうしても新しい制度や法改正、調査結果に関する情報などへの対応が難しいため、模擬試験や受験直前講座などを活用しておく必要があります。そして大事なことは、できるだけ毎日、少しでも問題集などに取り組むことで、勉強に切れ目をつけないようにして試験になれることです。
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●合格率
令和3年(第35回)管理栄養士国家試験結果
合格率 64.2% (受験者16,019名 合格者10,292名)
※参考データ
・令和2年(第34回)管理栄養士国家試験結果
合格率 61.9% (受験者15,943名 合格者9,874名)
・平成30年(第32回)管理栄養士国家試験結果
合格率 60.8% (受験者17,222名 合格者10,472名)
・平成29年(第31回)試験結果
合格率 54.6% (受験者19,472名 合格者10,622名)
【試験結果内訳】学校区分別合格者状況
・管理栄養士養成課程(新卒)
受験者数9,425名 合格者数8,704名 合格率92.4%
・管理栄養士養成課程(既卒)
受験者数1,918名 合格者数353名 合格率18.4%
・栄養士養成課程(既卒)
受験者数8,129名 合格者数1,565名 合格率19.3% |
受験対策・資格の将来性 | 管理栄養士国家試験の主要な試験科目の対策については、おおよそ以下を参考にしてください。
・基礎栄養学:出題数は14問。試験対策では摂取した栄養成分が体内で栄養素に変換され、臓器間で栄養素の変換が行われる過程や、ビタミンや無機質を過剰摂取することの危険性など。
・応用栄養学:発育、妊娠、授乳期の生理的特徴や、成長、加齢に伴う生理的変化などに関することなど。
・栄養教育論:出題は15問。栄養教育のためのカリキュラムの立案、実施、モニタリング、評価、フィードバッグについての出題です。また行動科学とカウンセリングについても問われます。
・臨床栄養学:出題数が多い科目で、200問中、30問出題されます。傷病者の心身や医療従事者としての心構えの他、医療制度を理解すること。
・公衆栄養学:公衆栄養マネジメントの概念や理論的枠組みの組み立て、コミュニケーション理論を理解すること。
・給食経営管理論:出題は20題。この科目は大きく「栄養・食事管理」と「経営管理」に分けられますが、「経営管理」に重点がおかれているため、特に経営管理者としての組織の管理、運営などについて勉強しておくこと。
「栄養・食事管理」では給食施設利用者の身体や栄養状況、給食管理方法の他、栄養指導を行うための知識と技能が求められます。
・応用力試験:患者の年齢や性別、疾患、検査値を具体的に設定し、栄養管理、栄養指導について問うような、管理栄養士として実際現場において必要とされる観察力、判断力、予測力を確認するための状況設定問題が出題されます。第20回試験ではこの種の問題が、5事例10問が出題されました。今後はさらに多教科にわたる応用力試験の出題が予想されます。応用力試験対策では、各科目の知識を丸暗記するだけでは対応できませんので、どのような状況でその知識が必要となるのか、どのように活用するのかを理解しておくことが大切です。
管理栄養士の国家試験は試験科目が9科目および応用力試験の計10科目で問題数は200問。試験を突破するためには、膨大な試験範囲を効率よく学習を進めることが求められます。
難易度が高く、暗記だけでは合格できない試験なので、過去問やトピックス、応用問題などを何度も繰り返し、得た知識を応用して柔軟に対応できるようにしておくことが大事です。主に、栄養学の基本的知識と考え方が最も重要で、主に応用力を試す試験と言えます。従って、過去問を解きながら、その解答の意図を理解していくことが大切になります。
試験の中で出題数の多い科目は「人体の構造と機能および疾病の成り立ち」、「臨床栄養学」です。出題数は科目毎に差があるので、出題数の多い科目を得点源にすることが有効な対策になります。食に関わる時事問題や、管理栄養士に関わる法律対策も重要です。「国民衛生の動向」「国民健康・栄養調査」、「日本人の食事摂取量基準」などの統計データや国の施策なども理解しておく必要があります
栄養士の資格には栄養士と、管理栄養士の2資格があります。この2つには資格を取得する方法や、難易度、知識、仕事内容などに大きな差があります。栄養士よりもワンランク上で、栄養士への指導も行うこともできる資格が管理栄養士です。管理栄養士としての就職先は、栄養士と同じで病院・学校・福祉施設などのほか、食品メーカーへなど。ただ現状では高齢化が進み、老人ホーム数が増加していることもあり、病院・学校・高齢者介護施設や、福祉施設、給食会社などが多くなっています。また仕事は傷病者の療養のための必要な栄養の指導や、スポーツマンに必要な栄養の指導、学校の給食やレストランで出す食事の栄養指導などもあり、あらゆるところで活躍できます。
特に今後は、生活習慣病の増大や高齢化社会の到来により、健康を改善・維持するためのバランスがとれた食生活を指導し、栄養や食べ物の管理と健康の専門家として、管理栄養士の需要は増えるでしょう。健康志向の近年では人気の資格になっています。 |