資格の概要 | 「助産師」は、妊娠時の健康指導や出産時の介助、産後間もない母子の健康指導などを行う、母子保健に関する専門家です。自営の助産所が少なくなり、病院等の医療機関や保険所、母子健康センターなどに所属して仕事をする場合が多く、妊産婦の大事な相談役としての責任は重いですが、仕事に対する充実感は大きいことが特徴です。
助産師になるためには、厚生労働省が管轄する助産師国家資格を取る必要があります。助産師国家資格は、看護師や保健師と異なり女性しか取ることができない貴重な資格の一つですが、この国家試験を受験するには受験資格を取らねばならず、またその受験資格を手に入れるためには、たくさんのステップを踏まなければなりません。
受験資格を手に入れるためのステップは、大きく分けると下記の2通りになります。
(1) →看護師国家試験 →正看護師の資格取得 →助産師養成所入学 →助産師国家試験 →助産師
この方法では、まず最初は看護師の国家試験に合格しなければなりません。そして正看護師の資格を取得し、それから初めて助産師養成所に入ることができるようになります。
もう一つは、看護系の大学や大学院を卒業して、助産師を目指す方法があります。大学の助産課程を修了し、助産師国家試験と看護師国家試験を二つとも受験する方法です。(正看護師の資格を持っている人は、大学に入りなおす場合、看護師の国家試験を受験する必要はありません)
この場合のステップは下記のようになります。
(2) →大学/大学院 →助産師国家試験と看護師国家試験のダブル受験 →助産師
この方法の場合は、もちろんステップの数は減りますが、ダブル受験が難関です。このステップの場合の方が難易度は高くなります。
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※この資格は、保健師助産師看護師法3条に規定され、「助産師とは厚生労働大臣の免許を受けて、助産又は妊婦、じよく婦若しくは新生児の保健指導を行うことを業とする女子」と明記されています。平成18年に保健師助産師看護師法に追加され、助産師・看護師・准看護師にも名称独占規定が設けられました。
※助産師国家試験に合格していても、看護師国家資格に不合格だった場合、助産師の免許を受け取ることはできません。
◆助産師になるための学校には、専門学校、大学の助産師コース、大学院の3つの選択肢があります。
・【専門学校】
大半が1年制の専門学校ですが、2年制のコースを設定している学校もあるようです。看護専門学校または看護大学を卒業し、看護師免許を所持している人のみが入学できます。
・【大学の助産師コース】
看護大学に入学し、看護の勉強をしながら4年次に助産師の勉強もします。4年間の大学生活の中で看護師、助産師、(または保健師)の資格を取得するコースです。このコースは、2月に看護師、助産師、(保健師)の3つの国家試験が1週間ほどの間に集中するため、受験勉強が大変になります。
・【大学院】
1年で助産師の資格をとるのはカリキュラム上、大変厳しく、学生は連続して長時間の勉強や実習をしなければなりません。それを避けるために、最近、助産師コースを大学院化する傾向がでてきました。このコースのデメリットとしては、学士を持っていないと入学資格がないため看護専門学校卒の人は入学できないことや、時間と学費がかかる点などがあげられます。 |
試験の合格率・難易度 | ●難易度
「C」 やや易
【資格の難易度レベル】
資格の概要欄に記載しているように、助産師になるためには、養成所に通う方法と大学に入りなおす方法がありますが、どちらも入学するときの倍率が毎年10倍近くになり、大変な難関です。
また、養成所コースも助産課程のある看護系大学コースも、どちらも学校の数が非常に少ないという共通点があります。全国に助産師の養成所は40校ほどで、また助産課程のある国立の看護系大学は30校ほどしかありません。また定員が数名から20名程度と少ない上に、偏差値も高く、難関の入試試験が非常にハードルを高くしています。さらに就労の場に関しても、近年は産婦人科そのものが減少している傾向があります。
「助産師」になるには、どちらのコースを選択してもステップが多い上に学校の入学でも競争が激しく、厳しい状況は変わりません。しかし、助産師国家試験の受験資格を取ってしまえば、最終の助産師国家試験の合格率は高く、毎年90%以上です。従って、助産師を目指す人は、ここにたどり着くまでの長い期間が苦労の連続になるわけです。助産師を志す方にはそれを覚悟でき、それを上回るような強い気持ちが必要になります。
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●合格率
第103回助産師国家試験結果
(全体)出願者数2,130名
受験者数2,105名 合格者数2,093名 合格率99.4%
(うち新卒者)出願者数2,122名
受験者数2,098名 合格者数2,088名 合格率99.5%
※合格基準
一般問題を1問1点(75点満点)、状況設定問題を1問2点(70点満点)とし総得点87点以上/145点を満たす者。
※参考データ
・第102回助産師国家試験結果
(全体)出願者数2,126名
受験者数2,105名 合格者数2,096名 合格率99.6%
(うち新卒者)出願者数2,098名
受験者数2,079名 合格者数2,076名 合格率99.9%
・第101回助産師国家試験結果
(全体)出願者数2,243名
受験者数2,230名 合格者数2,201名 合格率98.7%
(うち新卒者)出願者数2,099名
受験者数2,087名 合格者数2,074名 合格率99.4%
・第100回助産師国家試験結果
(全体)出願者数2,064名
受験者数2,053名 合格者数1,909名 合格率93.0%
(うち新卒者)出願者数2,055名
受験者数2,044名 合格者数1,904名 合格率93.2% |
試験の内容・勉強法 | 助産師国家試験は、基本的には落とすための試験ではないと考えられます。1年かけて助産師の勉強をまじめにやっていれば合格できる難易度です。従って、受験対策は、大学、専門学校、養成所などで十分に取り組むことができます。
試験の出題内容に関しては、内容的には学校で学ぶ内容+実習で学んだことが出題されます。毎年、状況設定問題に配点の重点がおかれる傾向があります。試験問題の文章読解能力が低いと問題の要旨を間違えることがありますので文章を読んで状況を想定、想像する能力や感性が必要になります。しかし、まじめに授業を受けて知識を習得し、実技を身につけられていれば、まず合格できるレベルの試験です。それより、助産師を目指す人にとって難しいのは、競争率の高い助産師養成校に入ることです。
就業に関しては、助産師としての需要は多く、売り手市場といえます。 結婚などでの離職した後の復職も容易で、女性が長く続けられる職業の一つです。
就職先は大学病院や総合病院の産婦人科が一般的です。診療所や助産院などは人数が少ないため、採用は経験者が優先されます。助産師の平均年収は、現在約500~550万円です。
日本では助産行為を行うことができるのは、医師と助産師だけです。また助産師は女性の助産のためだけでなく、家族及び地域社会の中で健康カウンセリングと教育に重要な役割を担っています。その活動には産前教育と親になるための準備が含まれ、さらに婦人科の一部の領域、家族計画及び育児にまで及びます。さらに助産師は医療法で開業権が認められていますので、助産院を開業し、分娩介助することも可能になっています。スローライフやロハスなどによって自然分娩志向が強まり、助産師への期待は大きくなっています。
◆助産師になるために学校で勉強する内容について
助産師を目指す人が、学校で学習する「必要な知識と技術」には厚生労働省の指導要項に準じた助産師養成カリキュラムが設けられています。
・基礎助産学
助産学概論:助産師の歴史や社会的役割を学ぶ
人間の性と生殖:女性の体と妊娠の仕組み、婦人科疾患について学ぶ
生殖の生理と病態:妊娠・分娩・産褥について学ぶ
母子の心理・社会学:母親の心理や現代社会における母子のあり方を学ぶ
その他:生命倫理、母子の健康など
・助産診断・技術学
実際に助産師として仕事をする上で必要な技術を習得します。
・地域母子保健
地域における母子保健活動や、地域保健行政のあり方、活動について学びます
・助産管理
助産師として仕事をする上で必要な法律や、よりよい業務を行なうための産院や産科のあり方を学び
・学内実習
助産師に必要な知識と技術を学校で学んだら、指導者のもとで実際に行なう「実習」があります。 |