資格試験の概要 | 平成30年1月4日より改正通訳案内士法が施行され、通訳案内士は「全国通訳案内士」となるほか、通訳案内士の業務独占規制が廃止され、資格を有さない人であっても有償で通訳案内業務を行えるようになるなど、通訳案内士制度が大きく変わりました。
◆「全国通訳案内士」とは、通訳案内士法において「報酬を得て、通訳案内(外国人に付き添い、外国語を用いて、旅行に関する案内をすることをいう。)を業とする。」とされています。全国通訳案内士は国家試験に合格した方であって、高度な外国語能力や日本全国の歴史・地理・文化等の観光に関する質の高い知識を有する者であり、「全国通訳案内士」として都道府県の登録を受けた方々になります。
「全国通訳案内士」になるには、通訳案内士法第6条に定められた全国通訳案内士試験に合格し、居住する都道府県知事に登録をしなければなりません。全国通訳案内士として登録を受けた方は、「全国通訳案内士登録証」が交付されます。
・2022年4月1日現在の全国通訳案内士登録者数は26,723人です。
・全国通訳案内士試験の外国語の種類は、英語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、中国語、イタリア語、ポルトガル語、ロシア語、韓国語及びタイ語となっています。
(参考)
「地域通訳案内士」とは、特定の地域内において、「報酬を得て、通訳案内(外国人に付き添い、外国語を用いて、旅行に関する案内をすることをいう。)を業とする。」とされています。
地域通訳案内士は、特定の地域において、その固有の歴史・地理・文化等の現地情報に精通した者であり、各自治体が行う研修受講を通じて「地域通訳案内士」として登録を受けた方々になります。
・「地域通訳案内士」になるには、既に地域通訳案内士制度を導入している地域においては、募集時期、方法等が各地域によって異なりますので、各自治体にお尋ねください。
また、地域通訳案内士制度を導入していない地域にあっては、各自治体が「地域通訳案内士育成等計画」を定め、観光庁長官の同意が必要になります。その計画に記載された研修を受講することにより、地域通訳案内士として登録を受けることが可能になります。また、地域通訳案内士として登録を受けた方は「地域通訳案内士登録証」が交付されます。
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合格率・資格難易度 | ●難易度
「A」 難関
【資格の難易度レベル】
全国通訳案内士は、語学系では最難関の国家資格です。試験でネックとなるのが筆記試験、中でも日本語で答える日本の地理、歴史、そして産業・経済・政治・文化に関する一般常識はかなりの難関で少なくても大学受験レベルの知識が必要です。ここで受験者の約8割が脱落し、口述試験に進めないのが実状です。語学系で難易度レベルが同程度とされるのが、翻訳関係の資格の「TQE(翻訳実務検定)」や「JTF〈ほんやく検定〉」の 1級です。どちらも難関資格「A」です。語学検定で難関資格といえば、トップは「中国語検定1級」でしょう。スペイン語やドイツ語、ロシア語など主な語学検定の1級試験はどれも難関資格「A」にランクされます。
全国通訳案内士試験に関しては、近年は1次試験の合格率が下がり、難易度が上がり気味で「10%の壁」、と言われていた合格率が8.5%まで下がりました。法改正があった2018年以降10%未満となっています。今後もこのトレンドは変わらない様子です。
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・合格率
令和3年度全国通訳案内士試験結果
1次受験者数3,834名 合格者数 合計718名 合格率19.3%(免除者除く)
2次受験者数782名 最終合格者数347名 最終合格率9.1%
※参考データ
・令和2年度全国通訳案内士試験結果
1次受験者数5,078名 合格者数 合計877名 合格率18.0%(免除者除く)
2次受験者数1,004名 最終合格者数489名 最終合格率9.6%
・令和元年度全国通訳案内士試験結果
1次受験者数7,244名 合格者数 合計1,119名(免除者除く)
2次受験者数1,287名 最終合格者数618名 最終合格率8.5%
・平成30年度全国通訳案内士試験結果
筆記試験合格者数 合計1,752名(免除者除く)
最終合格率9.8% 受験者数7,651名 最終合格者数753名
・平成29年度全国通訳案内士試験結果
筆記試験合格者数 合計2,185名(免除者除く)
最終合格率15.6% 受験者数10,564名 最終合格者数1,649名 |
受験対策・学習法ほか | 全国通訳案内士試験は第1次試験と第2次試験で構成されています。最終合格率は平成30年以降、一度も10%を越えたことがありません。1次試験では外国語、日本地理、日本歴史、産業・経済などの一般常識、通訳案内の実務、の合計5つすべての試験に合格しなければなりません。
この試験の最大の難関はこの第1次試験の「外国語」の筆記試験です。語学力だけでなく、日本的な事象のことや時事的な知識なども問われる試験になっています。ここを突破するには、まず大前提として必要なことは「英文読解力」を身につけることです。そのためには、日ごろからできるだけ多くの外国語の記事を読んでおくことが大切です。
次に試験対策ですが、この試験において絶対に必要なことは「過去問」を解くということです。過去問題を解きながら傾向をつかみ、過去問題でわからない単語はすべてピックアップし、それを確実に覚えるようにしていくことです。
次に日本語による筆記試験で「日本地理、日本歴史、産業・経済・政治及び文化に関する一般常識」については、日本地理では地名、産業、風俗、習慣、行事などを中心に、また日本歴史では主に文化史と外交史を、一般常識の問題では、毎日の新聞やテレビのニュースなどで注目を浴びている情報を、観光の観点で把握し勉強しておくことが必要です。また、通訳案内の実務については、改正通訳案内士法や旅程管理、危機管理等について勉強しておく必要があります。
全国通訳案内士は語学関連では唯一の国家資格です。通訳案内士は国際親善の”橋渡し役”を担う大切でやりがいのある仕事ですが、合格率も低くて資格取得が非常に難しい試験です。長年日本で生活する人でも、簡単に答えられないような設問が外国人観光客のガイドに必要なのか、とも言われるほどで、通訳案内士の試験が難し過ぎる点はここにあります。ただ、そのために逆に有資格者は高い信頼と評価を得られ、キャリアを積むことで活躍の場を広げることが可能です。
通訳技能検定2級の能力があれば、プロの通訳士として十分通用するといわれ、通訳技能検定1級はプロとして最高級の通訳士のレベルです。近年は特に、中国語や韓国語のガイド需要が増えてきており、通訳の需要は国際交流が盛んになればなるほど高まるため、これからも有望な資格です。
全国通訳案内士に必要とされる英語レベルは他とは少し違います。全国通訳案内士になるための試験では、実用英検(実用英語技能検定)の1級やTOEICスコア840点以上、などの有資格者は1次試験の該当科目が免除されます。そういうことから、全国通訳案内士には目安としてこのレベルの英語力が必要だと考えられます。同様に、歴史能力検定の日本史1級取得者も該当科目の免除が受けられます。試験の合格基準は、外国語の筆記試験は各語学ごとに70点が合格基準点。日本地理、日本歴史、一般常識は各科目60点が合格基準点になっています。
資格取得方法に関しては、通訳としてのテクニックを身につけることはなかなか独学では難しいため、民間のスクールや受験対策講座を活用していく方がより望ましいと思います。
通訳案内士という職業は、難度の高い国家資格を取得しても、実際にこの仕事をしている人は2割~3割程度に過ぎません。日本への外国人観光客は多いにもかかわらず、せっかく資格を取得しても登録者数に仕事が追いついていかない現状があります。それは、この職業が一般にまだ世間でその地位を確立できていないところがあるためです。従って、今の時点では仕事が少なく、本職として一本でやっていくのは多少厳しい面があります。自分の足で積極的に行動し、仕事を得る努力が求められます。 |
試験方式 | ●筆記試験
(午前)
◇外国語筆記試験
・多岐選択式(マークシート方式)
・試験時間90分/出題数4題
・合否判定 原則として100点満点中70点が合格基準
(午後)
◇日本地理筆記試験
・多岐選択式(マークシート方式)
・試験時間30分/出題数30問
・合否判定 原則として100点満点中70点が合格基準
◇日本歴史筆記試験
・多岐選択式(マークシート方式)
・試験時間30分/出題数30問
・合否判定 原則として100点満点中70点が合格基準
◇一般常識筆記試験
・多岐選択式(マークシート方式)
・試験時間20分/出題数20問
・合否判定 原則として50点満点中30点が合格基準
◇通訳案内の実務筆記試験
・多岐選択式(マークシート方式)
・試験時間20分/出題数20問
・合否判定 原則として50点満点中30点が合格基準
●口述試験(1次合格者)
・試験時間 10分程度
・通訳案内の現場で必要とされるコミュニケーションを図るための実践的な能力を判定する。
・合否判定
評価基準を設定し合格基準点(原則7割)に達しているか否かを判定する。
【免除制度】
(例)
①実用英語技能検定1級合格者は英語が免除されます。
②TOEIC(下記3項目のいずれかに該当する者)は英語が免除されます。
・Listening & Reading Test:900点以上
・Speaking Test:160点以上
・Writing Test:170点以上
③実用フランス語技能検定試験1級合格者は仏語が免除されます。
その他、多くの免除規定がありますので、詳細は「全国通訳案内士試験ガイドライン」の(5)試験免除の項を参照ください。 |